管理人は超つらいよ
マンション管理最前線 部屋番号7807
「修繕積立金」と「管理費」の違い そして、「修繕積立金」の金額は最初から必要な額にすべき |
はるぶーさんのブログに新作が上がっています。
積立金のフラット化−1 <お便り返し>
まずは、これを読んで下さい。もしくは、私のこのページを読んでからはるぶーさんを読んでも良いです。まあ、連動企画みたいなもんですから。
はるぶーさんのブログを拝見すると、最近のマンションの修繕積立金は、年数を経るごとに、徐々に値上げをしていく計画になっている「漸増式」「段階的値上げ方式」といわれるものが多いということがわかります。
さて、マンション生活で毎月払わないといけないお金には、「管理費」と「修繕積立金」という大きな二つのものがあります。
「管理費」・・・マンションの管理をほぼすべて管理会社に任せている場合、管理費として支払ったお金の大部分は、管理会社に支払う「管理委託費」に充当されます。ただし、よく誤解されますが「管理費=管理委託費」ではありません。「共用電灯とかエレベーターの電気代」も管理費から支払われますし、「蛍光灯が切れたので新しい蛍光灯に取り替えた」という「管球費」も管理費からです。管理事務室の電話料金が管理費から支払われることもありますし、CATVの料金が支払われたり、また、これは本当は望ましくないのですが、地元町内会に支払う、「町内会会費」とか「歳末助け合いの募金」が管理費から支払われることもあります。
とにかく、「管理費」が100%管理会社に支払われるわけではないので、よく、アホなマンション管理士が、「管理会社を変えて、管理費を安くしましょう」とか言ってますが、あれは、「管理委託費」のことであり、「管理費と管理委託費を混同して同一視している」時点で、「だめだ、このマンション管理士は。バカだ」と、我々専門家は思います。
そんなわけで、ひらたく言うと、管理費とは「毎月必要になる生活費」と言い換えることができます。一般家庭の銀行口座で考えると、「普通預金」みたいなもんです。
いっぽう、
「修繕積立金」・・・これは、マンションの建物や設備の大掛かりな工事の際のために使う「貯金」です。マンションというのは、新築当初は、すべてが新品ですから、建物や設備にあまりお金がかかりません。1年に一回行なわれる「受水槽の清掃」などは、「維持管理」という分類になるので、そういう費用は「管理費」から支払われます。しかし、「15年たったので、給水ポンプが壊れたので新品交換しないといけない」「30年たったので、貯水タンクが寿命で壊れそう。新しく作り直さないと」といったものは、修繕積立金から支出します。
「ポンプが突然壊れた、修理費に30万円という高額な費用がかかる」と言った場合は、分類は微妙になり、「これは日常の維持管理の範囲と言えるから管理費会計の中の”小修繕費”から支出する」と判断するマンションもあれば、「部品交換も必要だし、30万円という金額は大きいから、修繕積立金から支出するべき」と考えるマンションもあり、これは、そのマンションの管理規約により、変わります。ただ、管理規約には判断のしにくいあいまいな表現のものもあり、分別が難しいこともありますから、そのマンションの管理組合の判断に任せていいでしょう。
ただ、修繕積立金の主目的は、「10~13年周期で行なわれる大規模修繕工事のため」と言えます。この「大規模修繕工事」というのは、めちゃくちゃおおざっぱに言うと、「60平米のマンション一室あたり、約100万円はかかる、大きな工事」です。なので、その他の工事も含めて、「13年間で150万円はためないといけないもの」といえます。
銀行口座でたとえると、「積立式定期預金」と言うことができます。普通口座みたいに、容易に引き出すことはできません。目的の金額になるまでは、ずっと積み立てていかないといけません。はるぶーさんは、「これは、学資積立預金だ」と言っています。そのとおりです。「13年で150万円」というと、「1年で12万円」「1ケ月=1万円」ということです。なお、これは「必要最小限レベルの工事をする」場合の話であり、当然、もっと金額が高いほうが、建物の保全のためにはよいことです。
以上のような性質を持つ、この二つなんですが、通常、この話をするときには、
「管理費」とひとまとめにして呼んで、修繕積立金を無視したり、
「管理費等」として、修繕積立金を「その他扱い」したり、
「管理費と修繕積立金」として、修繕積立金の存在をちゃんと理解してくれているものの、「2番目扱い」したり、
といった言い方があります。
でも、私の考えは違います。
「修繕積立金と管理費」 もしくは 「修繕積立金等」と呼称すべきだと思っています。
なぜかというと、「ちゃんとしたマンションでは、管理費よりも、修繕積立金のほうが高額」だからです。
なので、「マンション管理士」など「自称専門家」の人たちが、「管理費等」と言ったら、「ああ、こいつは素人だな」と思いますし、「修繕積立金と管理費」と言ったら、「あ、この人はちゃんとわかってる人だな。優秀な人だぞ」と認めます。
マンション内の掲示板を見ると、時々、「年度末です。管理費を滞納している人は早く完済してください」なんていう掲示が出ていたりしますが、うちのマンションの場合、そういう掲示は私が書いていますが、「修繕積立金&管理費を滞納しないで下さい」と書いています。(うちの場合、金額の比率は、「管理費1:修繕積立金2」となっていますから)
さて、なぜ、「管理費」とか「管理費等」という呼称が一般的なのかというと、それは、過去の慣習にもとづきます。
例えば、30年前に、三井不動産(ここは、積立金の初期設定の金額が非常に低いことで有名だった)の「販売価格5000万円」の新築マンションを買おうとした場合、60平米の部屋を買うとして、その「管理費」は「10000円」くらいで、いっぽう「修繕積立金」は「2000円」くらいでした。比率が低かったのです。
なんで、こんな金額の差になるかというと、
「管理費の中身のほとんどは、管理会社に支払われる管理委託費である。分譲会社の直系子会社である管理会社としては、がっぽり儲けたいから、管理委託費は高額な料金をいただきたい。だから、低い金額では困る」
このため、管理費はそこそこ高額になります。さらに、駐車場の料金(これはかなりでかい)も、全部、管理費会計にぶちこんで、管理委託費を膨らますマンションもあります。悪質な分譲会社ですね。
いっぽう、
「修繕積立金は、10年〜13年周期の大規模修繕工事の時に必要になるもので、新築後数年は手をつける必要はないもの。修繕積立金の金額が高額になると、購入者が毎月支払う「ローン返済」と合わせた、実際の支出が高くなってしまい、その物件が売りにくくなってしまう。だから、修繕積立金は極力下げたい」という分譲会社の思惑が働きます。
モデルルームとかに入って、営業マンに「実際の毎月のお支払い金額シュミレーションしてみましょうか?」と言われて計算して出てくる金額は、「ローン返済」「駐車場料金」「管理費」「修繕積立金」の合計ですから、ここで修繕積立金が、「2000円なのか? 10000円なのか?」という差は、毎月の支払額に「8000円」の差をもたらすことになり、購入者の資金計画が大きく変わってきます。分譲会社としては、宣伝チラシにも「毎月の返済例」なんてのを大きな文字で記載しますし、「本当に適正な修繕積立金の金額」を購入時に設定してしまうと、「これじゃあ、この部屋は買えません」とお客さんが逃げていってしまうので、それを避けたいのです。つまりは、お客さんを騙して高額な物件を売りつけている「詐欺」?ということです。
分譲会社としては「売れればいい」「修繕積立金なんか、分譲会社にとっては小島よしお(=関係ねえ)だ」ということです。ほんと、不動産会社って、ひどいですよね。
さて、三井さんの設定する「毎月2000円」では、お金が不足するのは明らかです。だって、本来必要な金額の「5分の1」ですから。そうなると、10〜13年後の行なわれるはずの大規模修繕工事ができなくなってしまいます。できなくなると、「建物はボロボロ」になるわけで、それでは住民は困ります。また、大規模修繕工事という、非常に高額な工事を扱うことで儲けを得たい管理会社も困ります。なので、部屋を売った後で、「実は、月2000円じゃ足らないんですよ。値上げしないとだめなんです」と言い出します。もう、完全に確信犯詐欺であり、刑法犯だと私は思うんですが、不動産会社は逮捕されませんね。
てなわけで、昔は、建設後2〜3年経過すると、管理会社のほうから管理組合に対して「修繕積立金を値上げしないとまずいです」と言い出します。これを聞いて、ダチョウクラブさんなみに「聞いてないよ〜」って、皆さん嘆くのですが、買っちゃったもんですからあとの祭りです。管理組合として、「修繕積立金の値上げ」を実行しないといけません。でも、「お金に関すること」「一気に5倍6倍に値上げする」というのは、なかなかみなさんの賛同を得ることは難しく、「全戸アンケートを実施しないといけない」「詳細な説明をしないといけない」「説明会を開催しないといけない」「反対派に嫌がらせされる」「自分の奥さんからも、”なんで、あなた、こんな詐欺みたいな物件を買ったのよ!”となじられる」「理事会の開催回数も増える」「住民から恨まれる」などなど・・・・ 管理組合役員にとっては、さんざんな「大変な労苦」が待ち構えています。
この「労働量」を「時給2000円」で計算すると、「値上げするために要した労働量の費用は、200万円くらいになるんじゃないの?」ってことで、「最初から適正な金額にして分譲すれば、こんな無駄な苦労はしないで済んだのに・・・・」と、全国で何万人の管理組合役員が思ったことでしょう。これもそれも、みんな、「詐欺師不動産会社」のせいです。
それでも、なんとかかんとか、一気に、必要な適正金額に値上げ、いや、”適正化”できたのであればいいですが、「一気に5倍なんて無謀だ。今回はとりあえず、2倍にしよう」 数年後 「また2倍にしよう」 また数年後 「またまた2倍にしよう」なんてことをやっていたら、組合役員の苦労は、福島に積み置きされている、放射能汚染土のフレコンパックみたいになります。
もちろん、役員の苦労だけでなく、大幅に値上げすることにとって、居住者の経済計画も狂うわけで、「修繕積立金の値上げのせいで、息子が大学に行けなくなり、高卒で就職した」なんてことも起きるでしょう。詐欺師分譲会社のせいで、多くの人が、不幸になるのです。
このような批判が大きくなってきたので、最近のマンション販売では、初期設定の金額も以前よりも高くし、しかし、それでも全然足らないため、「適正額に近づくように、徐々に値上げしていきますよ」という「段階的値上げ方式」を表明するようになっているようです。
さて、上記、私が算出した「60平米で毎月1万円の修繕積立金」というのは、1平米あたりに換算すると、「167円」となります。これはあくまでも「最低レベル」であり、今、一般的に推奨されている「適正金額」は、「200円」と言われています。
そして、世帯数50以下の小規模マンション(小さなところはスケールメリットがなく、工事費用は割高になる)ではもっと高額になりますし、タワーマンションとか高級マンションのような、立派な共用設備があったり、駐車場が全部立体機械式だったり、エレベーターの数が多かったりすると、スケールメリットがあったとしても、やはり、高額になります。そのため、はるぶーさんのマンションでは、「1平米あたり月118円から248円への”適正化”を達成した」となっています。248円ですと、100平米の部屋で「24800円」ですから、住民の皆さんを説得しての「適正化」の作業は大変だったと思います。お疲れ様です。ただし、この金額であれば、このマンションは、潤沢な資金があり、未来永劫安泰でしょう。そういう「安心」を得た意義は大きいです。 8888888
本当は、分譲会社が最初から適正金額で売らないといけないんですけどね。そして、購入者も、自分の身の丈にあった物件を買わないといけないのです。
さて、このように、「初期設定の金額が低い」というのは、「私は、新築のマンションを買って、5年とか10年たったら、また、新築マンションを買い換える」って人にとっては好都合です。よく、「新車を買って車検が来たら買い換える」って人がいますが、それに似ています。
修繕積立金が適正化される前なら金額は少ないですし、大規模修繕を迎える前に買い換えると、大規模修繕工事中の「窓をあけられない」「洗濯物を干せない」といった不便を強いられることもありません。買い換える余裕のある人にとっては、いい方法かもしれません。
そして、そういう「計画」を持っている住民にとっては、「大規模修繕工事のことなんか、私には関係ない。その頃には私はここにいないのだから」という考え方になります。そういう人に、「大規模修繕工事ができなくなりますから、値上げします。賛成してください!」と頼んでも絶対に反対されてしまいます。筋道立てて正論で説明しても「そんなの関係ないわよ、とにかく反対!」と言われてしまいます。管理組合さん、大変です。
そうなってくると、「金額の問題じゃない、精神的にへとへとになる」なんていう理事長さんもいるわけで、そんなんで、健康を害したり、家庭内がぎくしゃくしたり、お隣近所との関係が悪くなったりしたら、ほんと無駄な苦労になります。
そういうことをさせないためにも、分譲会社は自分の売るものに永遠に責任を持つつもりで、修繕積立金の初期設定を適切なものにしてもらいたいと思います。
実際、値上げしないでずっとほったらかしにしてきたマンションでは、「修繕積立基金があったので、第一回の大規模修繕はなんとか乗り越えられたが、それで一文無しになってしまい、ポンプが壊れても交換できないまま、残りの1台だけでやっている (ポンプは普通2台あって、1台が故障しても大丈夫なようになっている) 「植栽の管理なんかするお金はないよ。だから、ぐちゃぐちゃ」「2回目の大規模修繕工事の際は、1部屋あたり、50万円の臨時支出をお願いしたが、払えない部屋が2割あった」なんてことが実際に起きています。払えない人に払わすのはほんと大変ですよ。2回目の大規模修繕工事となると、年数的に25年くらいたってますから、「年金生活だから、ない袖は振れんよ」という高齢者住民も多くなっているはずです。
こうやって、財政破綻すると、3回目の修繕はできず、スラム化 廃墟化への道をまっしぐらです。現実にリゾートマンションなんかではそういう物件が多数発生しています。
東京が廃墟だらけの街になるかもしれませんよ。
さて、ここまで全部読んでいただいた読者は理解されたと思いますが、マンションの「お金」を論じる際に、「管理費等」でひとくくりにしてはいけないってことです。
@「管理費」
A管理費の中に含まれる「管理委託費」
B「修繕積立金」
この3種類を明確に区別しないといけません。
うちのマンションは、「管理費だのなんたらで、全部で、毎月5万円払っているからね、永遠に大丈夫だよ」と、誇らしげに言う人がいたとしても、その内訳が、
「管理費45000円 (うち、「管理委託費は4万円」) 修繕積立金 5000円」
だったとしたら、そのマンションは早晩、スラム化します。管理会社にぼったくられているだけです。
一方、「うちは、なんやかんやで全部で3万円払ってるけど・・・・ どうなんだろ?」という人の場合。
「管理費 25000円 (うち 管理委託費20000円) 修繕積立金 5000円」
だとしたら、「だめだめ やばいよやばいよ! リアルにやばいよ!」って出川君が叫びそうですが、
「管理費 10000円 (うち 管理委託費8000円) 修繕積立金 20000円」
だとしたら、荻原 博子さんが「いいんじゃないですか?」って言うと思います。
同じ「3万円」でも、問題となるのは、その内訳なんです。
これって、「給料と貯金」と考えれば簡単なことでして、
「給料は20万円 生活費で19万円使い、残り1万円だけ貯金」という人と、
「給料は20万円 生活費は10万円 残りの10万円を貯金」という人を比べた場合、
同じ給料をもらっていても、貯蓄額は雲泥の差になります。
このように内訳が大事なのに、「管理費なんたら」とか言っちゃだめなんです。
それから、管理会社変更をして、管理委託費を減少させることに成功した管理組合が、管理費の金額を変えずに、その削減分を、修繕積立金の貯蓄のほうにまわして、「住民としては、毎月払っている金額は、外見上では変わらない」という結果になることがあります。この時に、「なんで支払うお金が減らないんだ!」って怒る人がいますが、その分が貯蓄に回って、管理組合の財産が増えていく、というふうに考えて理解しないといけません。
そういう時の役員さんは、「苦労をして管理委託費を下げさせたのに、誰も評価してくれない」と嘆くかもしれませんが、その労苦は必ずいつか報われますから、へそを曲げないで下さい。
★その他に、管理組合財政で重要となるのは、「駐車場料金」です。特に「機械式」の場合、日頃の点検&維持管理費用もかかりますし、機械の交換更新費用のことも考えないといけず、一般的に、「駐車場料金のうち、7000円程度は、修繕積立金会計に回しておかないといけない」と言われています。
ですから、分譲業者が「駐車場料金 たったの500円!」とか宣伝してマンションを売ってたりしてますが、500円では駐車場の機械を維持することは不可能な、めちゃくちゃな料金設定なのです。そして、ぼったくりの管理会社は、駐車場料金も全部「管理委託費」に回してしまうところがありますが、これはもはや泥棒です。料金のうち、7000円分は、積立金会計に回さないとだめなんですから。
というわけで、当HPを読んでいる皆さんは、くれぐれも、悪質な分譲会社 悪質な管理会社 悪質なマンション管理士には騙されないよう、お気をつけくださいませ。