管理人は超〜つらいよ
マンション管理最前線



マンション管理人とは? 何者なんでしょうか?
2006/12 改訂しました


 平たく言うと、管理人室にいるおじさん・おばさん(おじいさんのほうが正しいかな)のことです。

マンションフロント」という言葉があって、誤解される人もいますが、この場合の「フロント」とは、マンション管理会社の営業社員で、そのマンションの担当者のことをいいます。
 普通は、フロント1名で10〜20棟程度のマンションを担当します。このフロントの中には「管理業務主任者」という資格を持った人が必ずいます。(20棟は多すぎる。こんな会社は、ブラックです)
 ただし、一部の高級マンションやリゾートマンションでは、ホテル並の豪華なフロント施設を作り、「フロントマン」という名前の管理人を配置している場合もあるため、ややこしいです。「掃除や設備管理、雑用をやる人を管理人。きれいな服を着て、ホテルマンみたいに受付にたっている人をフロントマン」と2種類の人員を配置する例もあります。「管理人」というと、どうも低く思われるため、「ライフマネージャー」とか、かっこいい横文字にしている会社もあります。


<どういう立場なの?>

 普通、マンションの管理というのは管理会社に委託します。管理人は、その管理会社に雇われた従業員です。立場上は会社員になります。といっても、正社員はほとんどいません。契約社員、嘱託やパートという位置づけです。その管理会社に出社することはほとんどなく、担当するマンションへ出勤(直行直帰)するだけですから、会社本体のことはあまりよく知りません。
 大きな管理会社では直系の人材派遣会社を傘下に持っていることもあり、この場合、管理人はこの派遣会社から派遣されてきます。その場合、教育研修も派遣会社内でやったりしているので、親会社のフロントマンとは「同じ会社の人間ではない」ことから、意思の疎通がうまくいかないことも多いです。(マンション住民としては「同じ会社の人間」と思われてますが)
 1年ごとに契約する場合や定年制度がある場合があります。高齢者の受け皿である管理人職は定年は高く、63とか65才です。マンション住民から、「もっと居続けて欲しい」と要望があった場合は、特別に「2年延長可」といった制度を設けている会社もあります。実際、70歳までやっていた人もいます。

 マンションの中には、珍しいケースといえますが、管理会社にまかせず、完全自主管理のところもあります。世帯数30程度以下の小規模マンションでは、管理会社にまかせると1世帯あたりのコストが大きくなるため、自主管理にしてコストを下げることがあります。そういうところは、管理人が欲しい場合、管理組合が管理人を直接雇います。ただし、社会保険関係などがややこしくなるため、請負契約のような形にしています。この場合、管理人サイドからいうと、身分が非常に不安定になるため、定年後年金生活をしているような高齢者でないと勤まりません。自治体が斡旋する「シルバーさん」を雇っているところもあります。


<どんな仕事なの?>

1.清掃 
 
実際の日常では、これがメイン業務になると思います。業界大手D管理では、「おまえらは管理人じゃない。掃除人だ! しっかり一日中掃除していればいいんだ」と明言しています。

 どこの自治体でも、週に4〜6回、ゴミ収集の日があります。そのゴミ集積場の清掃が大変です。「ゴミの出し方のマナーを守らない人が大勢いる」「カラスや猫やホームレスに荒らされる」「外部から不法投棄ゴミを持ち込まれる」など、集積場は予想以上に汚れるのです。ゴミの分別は家庭内で行なわれるべきもので、委託業務外なんですが、結局は管理人が「分別・整理」をやらざるを得ないです。

 その他、共用部分の清掃も行います。月に一度程度「定期清掃」と称して、2〜3人の作業員が専門の機械・道具などを使って、おおがかりに共用部分を清掃する(=業界的には”特別清掃”と言われる)ことになっているマンションもありますが、そういうマンションでも、「ゴミがあれば拾う」「汚れが目立てば掃除する」などの簡易な毎日の清掃は必要です。ある程度大規模なマンション(世帯数100以上)になると、専門の清掃員を配置する場合が多くなります。規模・予算に応じて「月〜金の午前中だけ」とか「1日8時間だけど、月水金のみ」(普通は、生ゴミの回収曜日に合わせる)とか、時間を限定したパートさんを雇います。そういう清掃員がいる場合は、管理人は清掃をする量が減るため、かなり楽です。150とか200を超えるとフルタイムの清掃員が必要です。


2.受付業務

 
要するに、管理人室のデスクに座って、窓口に来る人や電話の応対をすることです。けっこう暇そうに見えますが、マンションによっては忙しいです。オートロックのマンションだと、中に入ってくる外部の人は少ないですが、オートロックでないマンションの場合、「ビラまき」「押し売り・勧誘」などが、しょっちゅう入ってきます。また、頼りにされる管理人さんは、住民の皆さんから、なにかにつけて用事を頼まれたり、相談を受けたりします。真面目で熱心な管理人さんだと、その分、業務が増えて大変です。その他にも、管理人が留守宅への荷物を一時預かりするマンションもあります。(新しいマンションは宅配ロッカーがあります)
  


3.点検・警備

 管理人は最低でも1日2回、マンション内のすべての場所を巡回します。階数のある大きなマンションだと、けっこうな歩数になります。マンションというのは、貯水タンクや電気室、ふだん使われない非常口など、住民の方が日常目にしない施設がたくさんあります。そういうところも見回ります。
 最近は犯罪も増えていますから、不審者には気をつけます。「なるべく多く見回ってくれ」と頼まれるようになり、受付業務との兼ね合いも考えながら、巡回回数を増やす努力をしています。
 (機械関係の専門的な点検は、定期的に専門家が来て行います。ですから、管理人は機械に関してど素人でもできます。ただし、専門家が点検している時でも、「ちゃんと作業してるかな」と横から監視します)

※正式な「警備員」ではありません。警備員は法的な規制があって、ちゃんとした教育講習を受けていないとできない職種です。「管理人が警備員を兼務している」と誤解している住民もいますが、あくまでも別物です。


4.報告・連絡

 普通は日報を作成して、記録を残します。住民の方は、なにかあるとすぐに管理人に言ってきますので、けっこう書くことは多いです。 特記事項は、すぐに管理会社のフロントマンおよび理事長さんへ報告します。犯罪が多く発生するマンションでは、警察との間の連絡が多くなります。


5.管理業務補助

 これは、管理会社や、そのマンションごとに千差万別です。「管理費を延滞している人に督促をする」「簡単な経理業務」など、本来は管理会社の事務スタッフがやるべき仕事をあてがわれたり、「水道やガスメーターの検針」「郵便物の配達」など、「なんで管理人がやるの???」というおかしな仕事をやらされたり、「銀行へ行って、新たに入居する人の管理費引落登録をする」、「理事会に出席する」「総会の時に会場の準備をする。飲み物を買出しに行く」など、いろいろあります。忙しいマンションにあたった管理人は、悲惨です。
 

6.その他

 これは、管理会社の姿勢および管理人さんの個人的性格によって、大きく変わります。
 「管理人=便利屋」と思っている住民の方がけっこういます。「リビングの蛍光灯の取り替え方がわからないから手伝って」「トイレが詰まった」「(勤務先から電話で)雨が降ってきたので、干してある布団を取り込んで」などなど。本来は契約事項に入っていないことでも、頼まれることが多いです。特に、高齢女性の一人暮らしの住民の場合、「頼れるのは管理人さんしかいないのよ」と、なにかにつけて用事を頼まれたりします。断るのが苦手な性格の管理人だと、どんどん仕事が増えます。

 

<どういう勤務体系なの?>

1.住み込み

 以前はかなりあったのですが、最近は減っています。といっても、新聞の求人広告を見ると、まだまだ「夫婦住み込み管理人募集」の広告を見かけます。「2名で25万円」なんていう激安な給料が掲載されていて、びっくりします。住み込みの場合、「住居費と光熱費は無料」のことが多いため、実際の所得はそれほどひどくはないとはいえ、どう考えても最低賃金を切っています。「勤務時間は○時から○時」と決まってはいますが、実際には勤務時間外にも仕事をさせられることが多いそうです。(やめる人が多いから、求人も多いのでしょう)


2.通い常駐勤務

 毎日通勤します。一般的なサラリーマンと同じ勤務体系です。ただし、マンション管理の業界は、世間一般からすると最下層の職種のため、週休二日制を導入しているところは非常に少ないです。(会社のフロントマンは週休二日になっても、管理人はそのままです)
 法律で週40時間が規定され、全国的に週休2日・週40時間勤務が広まっても、暫定除外されていた職種のため、週40時間になったのはつい最近のことです。以前は、月曜〜土曜・朝8時〜夕方5時という長時間労働が当たり前でした。やっと週40時間になったといっても、1日あたりの勤務時間を減らして、土曜日も出勤させているところが多いです。時短促進法という法律もあり、国は「週休2日制」を唱えていますが、土日休める管理人はほとんどいないのが実情です。良くても、隔週土曜休みです。「水曜日だけ半日勤務」「火曜と木曜は午後3時まで」など、よく意味のわからないおかしな勤務のところもあります。「法に従って週40時間勤務しなければならない、しかし、休日は増やしたくない」という管理会社の思惑のため、常識では考えられない、変な勤務になっているのです。
 「毎週45時間の勤務体系だが、残業手当を払っているから、いいのです」などと、真顔で言う、労働基準法すら知らない、救いようもないひどい管理会社もいまだに存在します。管理組合側が「土曜日を休みにしていいから、週40時間にしてよ。残業というのは、例外でしょ。お宅みたいに、うちとの契約書の中で週45時間労働にしてるのはおかしいよ。違法行為の片棒は担ぎたくないからさ」と改善を求めても、「いや、このままでいいです」と断るのですから、最悪です。

 祝日が休みでないところもあります。祝日でもゴミ収集日にあたる場合は出勤させられるのです。常識では考えられませんが、労基法上、「祝日=休日」とはなっていないため、違法ではありません。
 
 ただし、残業はほとんどありません。

 
3.巡回勤務

 不況のため、このタイプが増加しています。
 世帯数が50以下の小規模なマンションでは、管理人を常駐させることはコスト的に高くつきます。そのため、「月水金のみの隔日勤務」などという体制でコストを削減します。普通は、ゴミ収集日にあわせます。
 その他、「週1日だけ」「週2日だけ」「月水金の午前中だけ」など、管理組合の懐事情に合わせて、様々な勤務があります。アルバイトの管理人さんの場合、時々働いて小銭を稼ぐには好都合な勤務ですが、フルタイム社員の場合は、「月・水はAマンション、火・木はBマンション、金午前はCマンション、金午後はDマンション、土午前はEマンション」なんていう複雑怪奇な勤務になる人もいます。(時々現場を間違えるそうです。冗談抜きで)



<どんな人がなるの?>

 管理人になるのに、特に必要な資格・研修はありません。極端な話、誰にでもなれます。(注:誰にでもなれるが、誰でも「きちんと仕事をこなせる」わけではない) 体力もさほど必要としません。ただし、少ない休みで毎日勤務しますから健康でないとだめです。ですから、いろいろな人がいます。ただし、資格要件がない代わり、給料は激安(月給15万円が相場)です。そのために、生活に余裕がある人しかできません。「奥さんが専業主婦で、子供が二人いて学校に通っているような人」には、とても生活できるような金額ではありません。具体的には、「年金生活者」「奥さんが十分稼いでいる夫」「お金持ちの道楽」「リストラされて緊急避難的に就職した人」「子供が大きくなって手がかからなくなった奥さん」などです。というわけで若い人は皆無です。
 賃貸マンションのオーナーが、自ら自分のマンションの管理人をやっていたりもします。このように生活レベルは幅広いです。
 肉体労働専門の体力勝負ではないため、女性の管理人さんも増えています。
 

<孤独な仕事>

 管理人は、孤独に耐えられない人にはできない仕事です。同僚に会うことはほとんどなく、たまに会話をするのはマンション住人だけです。それも、たいていは苦情の受付ですから楽しい話ではありません。当然飲み会などもなく、退職するときもただ去っていくだけです。明石家さんまなら狂い死にするでしょう。逆に、孤独が好きな人にはいい職場です。



<「管理」という用語を誤解しないで>

 「管理人」というと、「何でもやって、全部責任を負う」みたいに誤解している人が大勢います。「管理人なんだから、○○さんに注意してよ」とおっしゃる方もいます。しかし、管理人には、何の権限もありません。しいて言えば「管理人室を管理している」くらいなもので、他の場所は「管理している」とはとても言えません。見回りしているだけです。管理人が何でもできると思って、用件を押し付けられるのは迷惑です。そんな報酬はもらっていません。
管理人は、管理会社や管理組合を代表しているわけではなく、ただの”用務員”です。管理の主体はあくまでも管理組合です。「小使いさん」だと思ってください。
 「違反駐車している奴に注意しろ」と言われて、実際に注意してたとしても、言うことを聞いて駐車をやめる人なんて一人もいません。住民は管理人のことをバカにしています。「俺たちが払った管理費で食ってるんだろう。住民に文句なんか言うな!」と反撃されるのがオチです。何の能力もないのです。


2006/12 改訂  一覧表にまとめてわかりやすくしてみました。
管理人の身分・立場  
マンションの所有形態 管理委託形態 管理員の雇用 備考
分譲マンション

マンションの所有者は各部屋の区分所有者になります。その区分所有者が「管理組合」を組織し(区分所有法という法律で強制的に作らされます)、その管理組合が、管理の主体となります。
管理会社に管理を全面委託 管理会社が管理員を直接雇用して派遣
(正社員 契約社員 嘱託 パート アルバイト など、身分はいろいろ)
実際はこの形態が大部分を占める
管理会社の職員のため、管理会社に不都合なことはできず、会社の命令に従うしかない。組合側に不利益なことを、しなくてはいけないこともある。
管理会社が人材派遣会社などに依頼して管理人を派遣してもらう 大手管理会社は、人材派遣用の子会社を持っている場合がある
管理会社に一部委託するが、管理人は直接雇用 管理組合が管理員を直接雇用
管理会社に雇用されているわけではないため、管理会社の言うがままになる必要はない。
管理組合が人材派遣会社などに依頼して管理人を派遣してもらう
(地元自治体のシルバー人材センターなどを利用することもある)
完全自主管理 管理組合が管理員を直接雇用 居住者の中に人材を求めることもある

病欠や有給休暇取得の際の代務員が手配できない。
社会保険や労災保険などをいい加減にしているケース多し。
管理組合が人材派遣会社などに依頼して管理人を派遣してもらう
(地元自治体のシルバー人材センターなどを利用することもある)
賃貸マンション

所有者はマンション全体のオーナーであり、1社(1名)のみ。
居住者はオーナーとの間に賃貸借契約を結んで居住する。オーナー自らが住む場合もある。
管理会社に管理を委託 管理会社が管理員を直接雇用して派遣
(正社員 契約社員 嘱託 パート アルバイト など、身分はいろいろ)
管理会社が人材派遣会社などに依頼して管理人を派遣してもらう
管理会社に一部委託するが、管理人は直接雇用 オーナーが管理員を直接雇用
オーナー自らが管理員になる 管理人が「一番えらい人」になる。思うがままにできる。
自主管理 オーナー自らが管理員になる
オーナーが人材派遣会社などに依頼して管理人を派遣してもらう
地元自治体のシルバー人材センターなどを利用することもある
その他

社宅・独身寮の管理人というものも存在する。 食事の準備を担当させられるケースもある。
 

勤務時間による形態
住み込み マンション内に住み込む
勤務時間・曜日が決まっているが、オフの時間に働かさせることもシバシバある。
単独の住み込みと家族(夫婦)住み込みの2種類ある。夫婦住み込みで25万円前後の給料が多い。

住居費・光熱費は無料の場合が多い。
通勤管理
(毎日)
一般的には 月曜〜土曜のフルタイム勤務・週40時間労働。(ちょっと前まで、週44とか48時間とか、違法に労働させていた管理会社がたくさんあった) 日曜祝日休み 夏季休暇2〜3日 年末年始休暇 12・31〜1・3

フルタイム勤務で月給は15万程度
巡回型通勤管理
(曜日・時間限定)


小規模なマンションに多い形態。 「月水金の週3日」とか「月木の週2日」とか曜日が限定される。ゴミの収集日にあわせることが多い。その1日についても、丸1日勤務の場合もあれば、午前だけ勤務という時間限定のものもある。「月〜金の午前中だけ」という時間帯限定勤務もある。


ひとつのマンションしか担当しないようなケースでは、パートかアルバイトで、時給800〜900円程度

(「あまり働きたくない」という年金受給者にとっては好都合な形態。ただし、「月水金はAマンションで火木土はBマンション」というように、一人で複数のマンションを巡回して、トータルでフルタイム働くケースもある。最近増えている)

※代務専門要員 常駐の管理員が休みを取った場合に、その代わりに勤務をする専門の要員。いろいろなマンションに行くため、場所場所により、仕事の仕方が異なり、大変。「どんなマンションでもちゃんと仕事をこなさなくてはいけないから、器用で特別優秀な人間が必要」と考える管理会社もあれば、「一時しのぎの留守番だから、誰でもいい」と、質の低い人間を配置する管理会社もあり、考え方の差が出る。


管理員の執務内容による区分
なんでも全部 (これが、もっとも一般的)

清掃・受付・事務・点検・苦情処理・逃げたペットを追いかける・・・・・なんでもかんでも
清掃ばっかり
管理員という名目だが、実際には清掃ばかりやらされている。管理事務室にいて執務することはほとんどない。
清掃なし
大きなマンションでは、管理員と清掃員を分けることがあり、専門の清掃員を雇用しているマンションでは、管理員は清掃をしなくて済む。
ずっと管理事務室にいて座っていることが多い。もっと大きなマンションになると、専門の警備員も配置される場合があり、「受付」係専門みたいな管理人もいる。
いるだけ (警備員みたいなもの)
清掃もせず、事務作業もせず、ただ、管理員室に人がいる。
「無人だと心配だから、とにかく、どんな人でもいいから、人を置いておいて欲しい」という要望にこたえるケース。最低賃金で老人を雇う。