管理人はつらいよ
マンション管理最前線
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掲示板ではペット問題が話題になっているので、それもからめて。
このマンションでペット問題がひどくなってしまった原因のひとつは、「もともと規約で”ペット不可”だったのに、一部の違法飼主の要求を飲んで”条件付で飼育を認める”としてしまった」ことです。特に、この時に「今飼っている一代限り可」にせずに、「ペット飼育者の会に参加すればOK」としてしまったことが、最悪でした。
「可」にした時の飼育者数は7名程度。200分の7なら、ごく少数といえます。影響もさほどないと考えたのでしょう。また、まだ日本に狂乱ペットブームが来る前の時代でした。
しかし、こういった大事な問題を議論する場合は、情報が大事です。「経験に基づいた情報」「将来を予測する情報」、両者が必要です。この時に、管理会社が適切なアドバイスをしておくべきでした。
・「”ペット可”マンションは仲介不動産業者にしてみれば”売りやすい物件”である。そのため、売る際に”ペットOK”という宣伝文句を大きく出す。そして、ペットを飼いたい入居者が入ってくる。今後新入居してくる人のほとんどは、ペットを連れてくるようになる」
・「同様に、賃貸入居者もペット飼育者が増える」
・「少子高齢化が進み、ペットを飼いたがる人、ペットに精神安定を求める人が増える。外国産の室内犬が続々輸入され、狭い部屋でもペットを飼いたがる人が増える」
・「最初は”規則はきちんと守ります。他人に迷惑をかけません”と宣言しても、すぐにそんなことは反故にされ、迷惑だらけになる。飼育を認めてもらうためにはどんなウソでもつく。しかし、いったん認められれば、あとはお構いなし」
・「あとから入居する人は、厳しい条件があることなど関係なく、ただ”申請すればOK”と安易に考えて入居し飼育を始める」
といった情報を組合さんに与えておけば、今のようなひどい状態にならずに済んだことでしょう。
「たいした人数ではない」「”絶対に規則を守る””定例会は毎月必ず開催する””規則違反飼主はきちんと処罰する”など、真面目に訴えて約束したから大丈夫だろう」と、当時の理事会は思ったのでしょう。そして、ろくろくアンケートもとらず、他のマンションの事例も研究せずに総会議案にのせてしまいました。総会では、「”議長一任”の委任状がほとんどで出席者はポツポツしかいない」状況ですから、ろくな議論も経ずに議決されてしまいました。(”議決権行使書”という制度は、ここでは無い)
こうやって考えると、「情報がいかに大事か」わかります。今は、インターネットのおかげで、様々な情報が理事長さんのPC1台で収集できますが、当時はそんなアイテムはなかったですから、管理会社の情報がすべてだったと思います。管理会社の優劣がそこに現れてしまったのではないでしょうか?
私は、”良い管理会社”の定義として、「経験に基づいた多くの情報を保有している」and「その情報を、きちんと整理してまとめている。そして、誰でもが簡単に引き出すことが出来る共有システムを作っている」「自社物件のみならず、他社物件の情報、一般的な情報も積極的に収集するシステムを構築している」ことを挙げます。
しかし、こういう仕組みを持っている管理会社、実はなかなかないのです。「大手は、多数の物件を抱えているから、経験に基づく情報は豊富だろう」と普通の人は思うでしょう。管理会社変更の際にも、こういう理由から大手を選択するマンションが多いのではないでしょうか?
ところが、「大手だから」ということはないのです。むしろ「大手だから」、逆に、その人気、見せ掛けの信頼に胡坐をかいて、こういった情報収集を怠っているものなんです。
例えば、「カラスや野良猫によってゴミ置き場が荒らされて困る。なんとかしたい。よそのマンションはどんな対策をとっているか教えて欲しい」と、大手管理会社のフロントマンに頼んだとします。そこで彼が持ってくる情報は、今まで自分が実際に取り扱ったマンションのものだけです。または、何年か前に会社で作ったシンプルな「管理組合マニュアル」です。これだけでは、情報量が少ないです。大手管理会社はよく、「当社は何千棟、何万世帯の管理をさせていただいています」と、数を前面に出して宣伝していますが、実はこれはただの会社規模の大きさを誇示する自慢であって、「たくさんの情報を持っています。経験豊富です」というわけでないのです。大手でも、概してフロントマンは自分の経験の範囲内での情報しか持っていないものなのです。けっこう閉鎖的な環境なのです。普通、フロントマンは一人で担当マンションを管理します。チームで動くことはありません。結局、自分の範囲内、自分の殻にはまった仕事しかしていないのです。
このサイトのように、過去の様々な経験を蓄積して、誰でもが見て参考にしてもらえうようなシステムは、意外とないのです。当サイトは個人運営ですから、情報の絶対量も少なく、情報の整理の仕方は稚拙ですが、大手の管理会社なら、やる気になったらすごいものが作れるはずです。「マンション管理百科事典」のようなものが本当は作れるのです。こうすれば、初心者フロントマンでも、過去の貴重な情報を共有することができ、ベテランフロントマンなみに、説明ができます。管理組合向けに会員制のサイトを作って、「当社の管理物件にお住まいの皆様は、自由にアクセスすることができます」とすれば、かなり大きなアドバンテージになるでしょう。
しかし、こういったシステムを作っている大手管理会社は現実にはほとんどありません。このため、「管理の質は、担当のフロントマンによって大きく変わる」という、前近代的なままの不安定なものになっているのです。こうなると、「大手」というメリットはまったくありません。大手のど素人フロントより、零細管理会社のベテランフロントマンのほうが、幅広い情報を持っています。
マンションではいろいろな工事や点検作業もあります。こういったことも、「どういう業者が、どの程度の規模の工事で、いくらの費用見積もりを出した」などと、こと細かにデータ残しておけば、相見積もりもすぐできるし、安い業者を探すこともできます。仕事の評価の記録も残しておけば、優秀な業者がどこかもわかるし、そういったことが瞬時に、手間もかけずに、電話もせずに、判明します。大手というのは、こういった「経験という貴重な財産」を活用して、大きな武器とする経営をすべきではないでしょうか? 宝の持ち腐れでは意味がありません。
逆に言うと、「大手はだらしがないので、小さくてもやる気のあるところ、システム化の進んでいるところのほうが、良い管理をする」ともいえます。リプレイスの際は、会社の規模、知名度で選んでも意味がありません。
せっかく、ITのハードが飛躍的に進歩しても、それを使いこなす”頭脳・工夫”がなければ意味がありません。過去の経験があっても、それをデータベース化しておかないと、いちいち同じ調査を繰り返したりします。データベースは構築は大変ですが、その後の業務量を飛躍的に減量させる高能率的なシステムです。だいたい、どこのマンションでも似たような問題が発生するのですから、マンション管理業界こそ、データベースの利用価値が高いです。
こういった面で、「後進的」「意外と封建的」「昔ながらのあこぎな騙し商売」の業界であるマンション管理業界は、仕事の仕組みを猛省すべきではないでしょうか?
ただし、「立派なデータベースを作ったから、ベテラン社員は不要。給料の安い社員に切り替えよう」というのは、困るなあ。マンション管理には「人対人の問題」「豊富な経験に支えられたベテランならではの信頼感が顔や態度に表れる」など、”年の功”がものをいうケースもあるので、全部若手で済むということはないです。
(今回はえらそうなことを述べてしまいました。すいません)