管理人はつらいよ　　　
マンション管理最前線

　マンションというのは社会の縮図ですからいろいろな人間がいます。

　この仕事していて、「嫌だなあ」「ヤメテヨ」と思うのは、居住者が、私や理事長を飛び越えて、管理会社へ直接苦情をいうこと。会社の人間は現場の事情をほとんど知りませんから、まともに受け取ってしまうため、事が大きくなりやすく、こちらも非常に困ります。

　昨日、会社に匿名電話がありました。「私ね。○○マンションの住民だけど。お宅で派遣している管理人。なんなのよあいつ、生意気よ。あたしたちはあんたらから見たらお客でしょ。それなのに、客に向かって”○○するな”とか”○○しろ”とかえらそうに命令ばかりして。態度悪いわよ・・・・・」という内容だったそうです。

　匿名とはいえ、この人、ここのところ頻繁に苦情を言う人なので、会社のほうでも事情がわかっていて、「また、いつもの人から電話あったよ・・・・・・」と、会社から私に文句が来ます。言葉遣いも悪いので、「真剣に取り合う気はないけど、文句言われる隙を作らないようにしてよ。」と怒られます。「気をつけます」と謝りますが、こういう住民に関しては気をつけてもしょうがないんです。どうしようもない不良住民なんですから。
　以前、「○○さん、廊下に自転車置けませんよ。共用部分に私物は置けないんです。それに、エレベーターに自転車載せると他の人が迷惑します・・・・」と直接口頭で注意したことがあるんですが、この１件以来、会社に苦情をグタグタと言うようになったのです。いつも匿名ですが、一度、会話を録音したものを聞かせてもらい、「あ〜、あの奥さんだ」とわかりました。「自分が規則を破っている。管理人に反論しても規則を根拠に言い負かされる」と思っているのか、「とにかく、文句を言いたい」という、うさばらしなのか、私を辞めさせたいのか、何かにつけてすぐに会社に電話をかけるのです。会社側も対応に苦慮しています。

　今回の「生意気」の原因は、ゴミ出しマナーに関する掲示物です。新方式になって１年以上が経過したのですが、最初の頃の、「ルールが変わるんだって。ちゃんとしなきゃ」という気持ちがみんな薄らいできて、ルーズになってきました。ここのところ、管理人と清掃員の仕事の大半は、「マナー違反ゴミの袋をあけて、再度分別しなおす、整理作業」にとられています。正直いって、通常の清掃作業に支障が出ています。以前は、「今日は時間が余ったから、いつもできないあそこを拭こう」といった、若干の余裕があったのですが、今は、最低限の清掃でもなかなか時間内に終わりません。「こりゃ、たまらん」ということで副理事長と相談しました。「住民側も、”違反しても、適当にやっても、どうせ、管理人がやり直してくれるから平気”と思って、甘えてしまっているようだ。このままではどんどんひどくなるだけ。きちんと注意すべきだよ。掲示物とかバンバン貼って、注意を促してよ」という結論になり、ここのところ、ゴミに関する掲示物が所狭しと、貼られるようになった次第です。
　”注意”ですから、当然、「〜して下さい」「〜しないで下さい」といった、マナー違反者にとっては目障りな文句ばかりです。読む側も気分はよくないでしょう。きちんとやっている人（約５％）にとっても、「あたしはちゃんとやってるわよ」と嫌な気持ちになるでしょう。でも、市民として全員が守らなければならないこと（つまり義務。義務を果たせない人はそこに住む資格なし）です。それが、このマンションでは、「管理人が１９０世帯分のお尻を拭いている」のです。私たちは、日本でもっともよく働く”ウォシュレット”かもしれません。

　苦情をいってきたこの奥さんも、マナーが悪いです。この人、うちのマンションの回収が終わった後に斜め向かいのマンションのゴミ置き場に捨てることもしていて、そこの管理人さんからも、「あの女は何なんだ。他人の土地に勝手に入ってきてゴミを捨てていく。不法侵入＆不法投棄だ」と怒られています。（そういう苦情も私に来るんだよね）

　それにしても、自分に後ろめたいところがあるから、過剰反応するんでしょうけど、ゴミ出しのルールを書いただけで「生意気な管理人」って言われてもね。やってられないなあ。こういう人に「常識」とか「マナー」について教えても、絶対に理解できないし。

　マンション住民の耳に念仏

2005/3