管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線 管理棟篇

書評 「マンション管理人の仕事とルールがよくわかる本」はひどかった。 三村正夫さん著





 お正月休みに本を読もうと、アマゾンの書評の評価が高かった、この本を購入しました。

「マンション管理人の仕事とルールがよくわかる本」  三村正夫著

 
私の感想を一言で言うと。  「1680円返せ!」

 はっきり言わせていただくと、この本は「20点」(100点満点)程度の価値しかありません。とにかく、タイトルが悪い。

 もし、この本のタイトルが、「管理組合が”直”で管理人を雇う時に読む本」という題だったら、75点を差し上げますが、とにかく、このタイトルでは高評価できません。
 基本となる視点が、「管理人」を向いていません。「理事長」を向いているのです。「理事長のために書かれた本」というのが真実で、管理人は実は脇役です。っていうか、中身を熟読すると、「この人、管理人の実務を知らないだろ」とつっこむ点がいっぱいあります。それで、このタイトルはだめだなあ。
 要するに、組合の理事長になった人のために、理事長の観点で「管理人とはどういうものなのか?」というのを、薄っぺらな知識で説明したものです。(説明じゃないなあ。ただの羅列だ)


「著者はどんな人?」

 社会保険労務士が本業だそうです。今回、この本を買った理由が、「管理人という劣悪な労働環境にある職業を、社会保険労務士の観点で書いてくれたらしい」という点です。でも、この人は、その後、「マンション管理士」「管理業務主任者」「宅建」「行政書士」・・・・などのたくさんの資格を持っている人であることがわかりました。だったら、買わなかったのになあ。こういう、難関資格をたくさん持っている人というのは、おうおうにして、「頭でっかち」「法律の知識だけはあるが、実務のことは何も知らない」ってことがあるからです。

 また、「マンション管理員養成講座」をやっているそうです。管理人でもないくせに、そういう講座をやる人っていうのは、たいてい、ろくなもんじゃないです。養成講座っていうのは、相手が全員素人ですから、自分が「実務経験」がなくても、なんとかなってしまい、えらそうな法律知識をひけらかせば、生徒からは「すごい!」ともてはやされます。そういう奴はだめなんです。
 また、北陸マンション管理士会をたちあげて理事長をやっているそうです。これも最悪。こういう人は「マンション管理士」の地位を「実力以上に」上げようとしていますから、ろくなもんじゃないんです。

 ただ、本書は、著者の本業である「社会保険労務士」の観点から書かれているところが、他の同類の本と大きく違う点で、私もここに注目して、この本を買いました。「労務管理」の視点で分析してくれたことはちょっと評価したいと思います。


さて、では、本の中身をひとつずつ紐解いていこうと思います。


<第一章 管理人さんの仕事とは何か>

最初にお断りしておきますが、この著者は、「管理員」ではなく、「管理人さん」と呼称しています。「さん」づけしてくることは非常にありがたく感謝します。また、マンション住民が一番呼称している「管理人さん」という名称を使うということは、メインのターゲット読者である「理事長」にとっても、わかりやすくていいことだと思います。

さて、第一章は、この本のタイトルからしたら、「メインとなる章」であるはずですが、実際は、わずか、11ページしかありません。私は、この時点で、「この本はあかんわ」と感じました。
そして、たったの11ページしかないのに、前半は、「区分所有法」とか「借地借家法」などに関する説明だけです。管理人はほったらかしです。その後、ようやく、管理人業務の説明になるんですが、これがまた、毎度おなじみの「管理委託契約書」の中からのコピーだけ。写してくるだけなら、小保方さんでもできるんですけど・・・

「そんな、どこででも手に入るような説明なんか書かずに。実務を説明しろよ!」とツッコミを入れたら、「
詳細な業務内容については、実際にマンション管理人をする際に細かく指導されると思うので、本書では割愛します」って書いてありました。おいおいおいおい、そういうのを説明するのが。この本のあるべき姿じゃないのかよ????

また、この著者は、管理人という仕事を、基本的には、「定年後の仕事」と考えています。それはたしかに正しいのですが、今は、「会社が倒産したので、若い人が管理人をする」というケースもあります。私もそうです。でも、そういうのは無視されています。

ですから、基本思想として、「老後の再就職先で、年金ももらっているから、給料は安くてもいい」という、「管理会社サイドの考え方」であり、給料の安い「激貧待遇」をむしろ「良し」と考えて、この本を書いています。

わずかに、「人生経験を生かして、マンションの区分所有者のさまざまな相談に乗ることもある」「住民同士のトラブルを持ち込まれることもある」「管理人とはいえ、実際は便利屋である」・・・・といった、実務の説明はありますが、これがほんとうに、ごくわずか。これで、本の体裁をとって、読者から金をもらおうなんて、詐欺です。

この手の「マンション管理員養成講座の講師をしています」と言う人は、本人は自慢しているんでしょうが、はっきりいって「養成なんか誰にでもできるよ」って、私は言いたいです。それよりも、「ベテランの管理人のさらなる向上のための研修の講師をできるか?」って聞きたいです。そのレベルになってはじめて、えらそうにしてください。この手の人たちの自慢って、自動車の運転が本当はたいしてうまくないのに、自動車教習所の教官になって、ど素人の生徒相手に、自分の運転テクニックを自慢しているような、「低レベル」な話です。

「マンション管理人に向いているのは、宅建・マンション管理士・管理業務主任者などの資格を持っている人」という記述も、この種の本の定型句ですが、実際は、専門知識を持っている人材は、管理会社に嫌がられます。管理会社が欲しいのは、「何も文句を言わずに、黙って、掃除だけやっている管理人」「自分で考えて行動せずに、単なる、連絡係の役目をする管理人」です。資格はむしろじゃまなんです。

とにかく、この章の11ページのうち、「管理人の業務」に関して述べているのは、実質、1ページ程度分しかありませんでした。ひでえなあ。

なお、この章の最後には、
「管理人のレベルが上がると、管理人の賃金等の改善にもつながってくるのは明らかです」って書いてあるんですが。この人、まじでこんなこと言ってるんでしょうか? 給料が上がるわけないでしょ??


<第二章 マンション管理人さんの仕事のポイントは>

この章の趣旨は、「管理人は定年後の高齢者がやる仕事」という点で、そういう視点でのみ、書かれています。この視点は8割がた正しく、そういう人をターゲットにして、「年金との兼ね合いをどうするのか?」という点を社会保険労務士の専門知識で書いてくれるのはいいことなんですが、私は。その思想こそが、管理人の激貧待遇の根源だと思っており、賛同できません。

「今後は、住民も高齢化してくる。その場合、75歳くらいの高齢管理人のほうが、うまくいく」ってことも書いてありますけど、「そういうもんじゃないだろ」って思います。「だったら、老人ホームの職員も、全員65歳以上にしろよ」って言いたいです。

「体力的にも楽」っていうのも強調してますが、「重い古紙を運ぶのは腰に悪い」し、「自転車を動かすのはけっこう重労働」だし、まあ、ヨイトマケなんかと比べれば、体力的に楽かもしれないけど、「75歳の老人にでもできる楽な仕事」っていうのは、おかしいです。
また、この仕事で一番重要な「精神的なストレスがものすごい」という点を完全にスルーしているのも許せません。ノイローゼになって辞める人だってたくさんいるのに。

それから、この著者は。「”高齢者”イコール”人生経験が豊富”」「だから、高齢者は良い」っていことを頻繁に書いていますが、はたして、それは正しいでしょうか? それまでの仕事の内容によっては、「全然成長していない」「世の中を何も知らない」っていう人もたくさんいますし、「年長者」ということで、「自分よりも年下の人をばかにする」傾向もあります。どうも、この人の「高齢者バンザイ」の思想にはついていけないです。

また、実務的な例として「上下階の騒音問題」のことを書いていますが、これが私にはひっかかるのです。
「騒音問題の相談を受けた場合、そのまま事務的に理事長に伝えると、場合によっては、上下間でトラブルになってしまうかもしれない。人生経験豊富な管理人であれば、角が立たないように、解決できる」
なんてことが書いてあるんです。
オイオイオ〜イ! 理事長やフロントに伝えずに、こういう、「住民の個人間のトラブル」を管理人が一人で解決しようとするのは、この業界ではご法度です。こういう場合は「連絡係」に徹しないといけないのです。
こういう、ええかっこしいのことを書くのも、この著者が実務を知らない証拠です。

さて、この章の後半は、管理人業務の詳細が出てきます。どうも、第一章と第二章の区分がよくわかりません。この本、構成が下手だと思います。

その「管理人の具体的な業務」の説明で、
「ワックスがけなどの特別清掃を管理人がやる」とか「エレベーターの点検も管理人がやる」とか「消防設備の点検も管理人がやる」・・・・なんてことが書いてありますけど。これ、完全にウソです。こういうのは、管理人はやりません。専門業者がやるものです。いい加減なウソを書かないで欲しいです。

この人、本当に、マンション管理人のこと、わかってるんでしょうか?


<第三章 マンションのルールブックは管理規約>

 これもなあ、ありきたりすぎて、つまらないなあ。こういう「法律知識」的なことを書けば、容易にページ数を稼げて、書籍の形態を作れるけど、安易すぎると思います。

「一般的に、マンションでは、ペットを飼育することは禁止です」
という記述がありますが、これ、どうでしょうか? 今の新築マンションは、「売りやすくするために」、ほとんどで、「ペット飼育可能」になっています。私は職業柄、新築マンションのチラシをよく見てますが、そうなってます。禁止は珍しいです。事実に即して書いて欲しいです。

結論として、「
着任したら、必ず規約を読みなさい」って書いてますが、そんなの常識でしょう。っていうか、本当は、「着任する前に読むこと」って書くべきです。予習無しに、いきなり、現場に行ってはいけません。自動車学校も、学科教習ゼロでいきなり、路上に出て運転させないでしょう?

「勤務の中で、規約が実態に合わないことがわかったら、管理人が、理事長なりフロントに対して、規約改定の提案をすれば、絶大な信頼感が得られること間違いない」

この人、これ、本気で言ってるのでしょうか? 規約を変えるってことは大変な労力です。4分の3の賛成が必要という「特別決議」になりますし。新人の管理人がそんなこと言い出したら、「おまえ、何様だよ」って怒られるのが関の山です。こういうのは、3〜4年勤務して、すでに「絶大な信頼感を得ている」管理人が言うことです。大学出たばかりの新入社員が、「うちの会社の定款はおかしいので、改定しましょう」って言ったらどうなるか? それと同じです。

また、この章の中には、小見出しで
「ほとんど規約を読まない住民への接し方」という項目があるのですが、この項目の中に、そのことが書いてないんです。こうなると、出版社側の問題です。何も校正してないんでしょう。

その後、「
住民に規約を教えましょう」とか「管理人が区分所有者の意識を変えていけば、環境もよくなる」、なんてことを書いてますが、「管理人が思い上がってんじゃねえよ」って突っ込まれること確実です。
どうも、こういう「講師」をやっている人というのは、「教えることが当たり前」という感覚なのか、こんな「実務じゃありえない」ことを平気で書くから困ります。
また、細かな話で恐縮ですが、「住民」と「区分所有者」とは厳密には異なります。でも、大事なことなので、ちゃんと使い分けて欲しいと思います。分譲マンションであっても、数年経過すれば、「賃貸にする」部屋が出てきて、「区分所有者ではない住民」が徐々に増えていくものです。こういう「占有者」に関することもちゃんと考えないといけません。

なお、この章の最後には、「今まで、図とか表が全然無くて、わかりにくいなあ」と思っていたところで、「
マズローの欲求5段階説」というものが出てきます。こういうのをえらそうに書くというのが、「知識だけの頭でっかちな人間」の特徴です。「これがなんの意味があるんだよ!」って言いたいです。


<第四章 区分所有法・適正化法を理解しよう>

「なんだ、結局、また法律論か?」っていうのが正直な感想です。法律の説明って、なんかえらそうでかっこいいし、ページ数を稼げるから、こういう本ではみんな安直に使うけど、「別の本で読めばいい話でしょ?」「管理人の本なんだから、管理人の実務を教えてよ」って言いたいです。
この章だけで、50ページ近く浪費してます。一番大事な第一章は11ページしかないのに・・・・・
大滝秀治さんが、天国から大声で
「つまらん!」って怒ってると思います。


<第五章 マンション管理人さんの位置関係>

タイトルはなかなかいいんですが、中身はほんのちょっとです。
この章あたりから、「理事長」が何度も出てきます。
理事長はマンション管理人の仕事ぶりをチェックする仕事である」と書いてあります。
これには異論はないんですが、実際は、理事長って、「昼間は仕事をしていて管理人と接触する機会が少ない」場合が多いんです。私も過去に。「理事長と一度も会話することなく1年が終わった」(手紙のやりとりはしてます)というケースを経験しています。
この著者は、どうも、うわっつらのことしかわかってないようで、「マンション=理事長」とばかり考えているようです。まあ、マンション管理士をしていると、そう思ってしまうのかもしれないですが、実際はそうじゃないですよ。
理事長以外の「昼間暇にしている奥さん連中」のほうが、よほど、管理人を監視しています。実際、目にする時間が多いんですから当たり前です。そして、管理会社は、こういう「おばさん連中」の「評価」とか「告げ口」に、けっこう影響を受けます。
理事長は立場がありますから、あまり変なことはいいませんが、こういう、暇なおばちゃん連中は匿名で管理会社に電話をかけて、文字にできないようなひどいことを言ったりします。ウソも多いです。
管理会社や理事長がしっかりしていて、「匿名は困ります。実名で言って下さい」とか「電話ではなく書面で提出してください」とか「意見がある場合は理事会に出席して述べてください」と毅然とした態度で対応できればいいのですが、匿名の電話を真に受けて、管理人を評価する管理会社も少なくないのです。

どうも、この著者は、「現実」を知らないことが多すぎますね。

「マンション管理人は些細なことでも、理事長に連絡する」
これはいいことだと思います。報告というのはとても大事なことですから。でも、私だったら、「口頭だと証拠が残らなくて、あとで、言った、言わない、で揉めることもあるから、大事な案件は、必ず書面で報告する」といったことを付け加えますね。

最後のほうには、
「管理人は、独断専行はせずに、まず、理事長や管理会社に相談することが大切」と書いてあります。これは賛成です。でも、これに続いて「それでもわからないときは、マンション管理士に相談する」と書いてあります。
「アホか?」 なんで、管理人が自ら、マンション管理士に相談するの? そんな権限もお金も何もないですよ。著者本人が、北陸マンション管理士会の理事長だから、「マンション管理士の仕事を増やしたい」ということで、こういう文を書いているんでしょうが、マンション管理人がマンション管理士に相談するなんて事はありえません。この著者、結局のところ、視点が「理事長」なので、管理人と理事長と近藤正臣してるんだと思います。
 

<第六章 管理組合が管理人さんを雇う場合の労務管理>

私が推測するに、本業が「社労士」である著者の、「本職」が、この章だと思います。つまり、この本の中心は、この章以降です。
しかし。「管理組合が直接、管理人を雇用する」という事例は、「ない」とは言いませんが、ごくごく少数派です。

この少数派の「直接雇用」の管理組合さんにとっては、この章の説明は非常に役に立つものです。ですから、最初に書いたように、この本のタイトルが「管理組合が直接、管理人を雇う時に読む本」といったもので、読者対象を「理事長、またはそれに準ずる人」とするのであれば、この本は名著といってもいいでしょう。でも、実際のタイトルからは、想像がつきません。おそらく、出版社サイドのほうで、「そんなふうに対象を絞ってしまうと売れない。だから、こういう、視点をぼやかしたタイトルにしよう」という考えがあったんだと思います。でも、結局、それは、「詐欺」と同じです。
(「ヒューゴの不思議な発明」という映画は、映画としては非常によくできた名作で、アカデミー賞も受賞しましたが、「ヒューゴは発明なんてしてないじゃん!」という批判がすごく、「タイトルがうそだ!」と酷評されました。それと同じです)


<第七章 就業規則・賃金制度>

さて、本当の本題に入ってきました。著書は、ここに相当の自信を持って自画自賛しています。まあ、有益な説明であることは間違いないですが、8割がたは、普通の管理会社の管理人の就業規則をぱくってるだけです。著者が言うほどのすごいものではありません。

この就業規則の中で気になる点がいくつかありました。

「昼休みは午後12時から午後1時までとする」
一般的には、誤用がまかりとおっていて、昼の12時を「午後12時」と書く場合も多いですが、正式な時制としては、「午後12時は夜中の12時」です。社労士がこんな間違いを犯してはいけません。13時間の昼休みになってしまいます。っていうか、昼じゃないな。
「正午」とするか「午前12時」と書くべきです。

また、この著者は、「
制服を着て実際に業務を開始する時刻が就業開始時刻であり、出社時刻とは違う」と書いていますが、これはひどいです。管理人の実態をわかっていません。管理人は、会社の命令で指定の制服を着て勤務します。この場合、「会社側に強制された服に着替える時間は、就業時間とする」という裁判の判例に反しています。「出社して着替えを始めた時刻が、労働時間のカウント開始」です。社労士が、こういうことをしてはいけません。普段から経営者側にすりよった「違法」なことをしている「御用社労士」なのかもしれません。

それから、「
1日8時間労働」としながら、「休日は週に1回」と規定しています。これもひどい。週に6日間働いたら、週48時間になり、労基法違反です。こんな計算、小学3年生でもできます。この著者、今からでも公文式に行って勉強してください。
実際問題、管理人はいまだに「週休1日制」のところが少なからずある、河島英伍もびっくりする時代遅れの劣悪な業界です。このため、「平日の1日=7時間労働。土曜日は5時間」とかにして、週40時間にしています。わかってないなあ、この著者。

「がんばったら昇給するという文言を入れることで、管理人のモチベーションが上がるでしょう」って、そんな簡単に言わないで下さい。理想ではありますが、実際には、そんな管理人いません。せいぜい、「大規模修繕工事があって、すごく仕事量が増えたから、商品券2万円を報奨金として渡した」というのが関の山です。

この著者、ほんと、実情をわかっていません。

また、著者は、あくまでも「雇用する側が有利になるような就業規則」を書いています。「有給休暇は法律で決まっているが、従業員側が要求しない限り、与えなくてもいい制度である」とか 「解雇させるのはこうすればいい」とか「慶弔休暇は無給でいい」とか雇用者側に都合のいい話ばかり書いています。管理人サイドに立った思想がありません。


<第八章 日常のマンション管理人さんの労務管理のポイント>

大事なことなんですが、わずか3ページしかありません。それに、全部、「理事長だけの視点」に関することばかり。それ以外の役員は蚊帳の外だし、本書の主役である、管理人サイドのことは何もわかんないんだろうなあ、この著者。

「マンション管理員検定試験に挑戦しようかなあ、と考える、マンション管理に明るい管理人」
という文。これもどうかなあ? この検定試験に関連する研修制度に、全国のマンション管理士会が関わっているために、管理員検定試験をヨイショしているようです。でも、実際の現場では、「あんな詐欺みたいな試験を受けようなんて考えている奴は実務を知らないアホだ」というのが常識です。本当に、「マンション管理に明るい」人は受験しません。

「(管理人に)定期総会に出席してもらう」
これもいいことで、実際に行なわれていることですが、たいていは、「会議場のセッティングをする」「椅子を並べる」「受付係をする」といった「雑務要員」として駆り出されており、総会の中で、管理人が意見を述べたりすることはありません。住民と会話することも無いです。


<第九章 マンション管理人の退職金・賞与はどうする?>

わざわざ、章を分けるほどの内容じゃないです。この著者が、「組合が直接雇用すること」に固執していることがよくわかります。実際には稀な例なのに。


<第十章 マンション管理規約を読もう>

実際の標準管理規約の文と合わせて、40ページを割いています。でも、そのほとんどは、国交省のHPで手に入るものであり、この著者の「著作」ではありません。

「管理規約は時々見直す」
あの、そんなの管理人業務には関係ないです。この本は、管理人に関する本なのに、どんどん脱線していきます。なんかなあ、結局、この本は、「管理人の本」ではなく、「理事長の仕事」というタイトルでもいいんじゃないでしょうか?


 こんな感じで、「そんなの知ってること」「これも知ってる」「よその本に出ている」「国交省のHPを見ればわかる」・・・・という駄文でした。ですから、190ページを、20分程度で全部読んでしまいました。要するに、中身が、それっぽっちしかないってこと。
これを出版しようという、図太い神経が私には理解できません。

金返せ!

著者に直接文句を言おうと思って、メアドを探したけど、それは出てません。メアドを出せないってことは、自分の本に自信がないってことです。
あああ。こういうマンション管理士ばかりが跋扈している、マンション管理業界って、なんなんだろう? 情けない。

本業が社労士であれば、もうちょっと具体的な、実際に勤務する場合に起きてくる問題とか、詳しく書いてもいいんじゃないかな? たとえば、「管理人は基本的には1人勤務である。もし、親戚に不幸があったり、自分が急病になった際に、突然休むことができるのだろうか?」という問題も、実務上では重要です。大手の中には、そういう時用の「交代要員」を用意しているところもありますが、小さなところでは、「交代はいないんだから、休むな」ってところもあります。実際、病気になっても休めずに、病院にいくことができなくて、病状が悪化し、管理人を辞職したあとに、すぐに死亡した人を知っています。
また、「労災」も重要です。管理人って、意外と労災が多いんです。「ゴミの整理の際に、刃物が裸で捨てられていたためケガをした」「脚立から落ちた」「重いものを持ってギックリ腰になった」・・・、けっこうあるんです。そういう際に、ちゃんと労災申請できるのか? というもの大事な関心事です。社労士だったら、「管理人サイドの気持ちになった立場」で、そういうことに解説も書いていいんじゃないのかな?



2013/1