管理人はつらいよ
マンション管理最前線
ガス抜き 必要です |
私が所属する管理会社は零細企業です。零細なので、研修とか教育とか福利厚生とか、何にもありません。
近隣には大手管理会社が管理するマンションがいくつかあり、そこの管理人さんと話をすると、「やはり、なんやかんやいっても、大手は違うなあ」と実感します。
大手、T社では3ケ月に1回程度研修会がありますし、毎月1回「管理人集会」があるそうです。研修といっても、内容はお粗末で、例えば、昨年頭にゴミ収集方法が変更になった際の事前勉強会では、「こういうふうに変わるから、住民はこういうふうに間違えるだろう。だから、管理人はこういうふうに対応しなさい」ではなく、市のパンフレットを配布して、その内容を棒読みしただけだったそうです。大手なればこそ、「豊富な経験を元に、当社では、独自に対応し、新制度への移行をスムーズに進捗させる」といったオリジナルな対応策がありそうですが、実はそんなものは全然ないそうです。「では、各自がんばって下さい」だけなんだそうです。
結局、会社側が管理人の実情をまったく把握してないから教えようがないのでしょう。普通の会社だと、「若いうちは現場で、年を取ると管理職として後輩の指導にあたる」といった仕組みになっていますが、管理人は年寄りがやるものなので、「現場のあと、本社に戻る」、といったことはないのです。貴重な経験は蓄積されることなく、蒸発してしまうのです。もったいない。
ただ、「内容はお粗末でも、管理人が何人も集まるということは大事だ」と、その管理人さんはいいます。「毎月1回の管理人集会で、いろいろな人と話すことができるので、日頃の孤独感から開放されて、悩みを話し合うこともできる。情報を共有することができる。慰めあうことができる」とのことです。ちょうど、私がこのサイトを作って、愚痴をこぼすように、大手の管理人さんは集会で愚痴をこぼしあうのでしょう。
管理人は孤独な仕事です。日頃、仲間と話すことはほとんどないです。悩み事があっても、本社では何もしてくれず、自分でなんとかしなくてはなりません。組合さんも何もしてくれません。よく、「うちの管理人は自分の独断で何でもやってしまうから困る」と苦情をいう組合理事長さんがいますが、「独断でやらざるを得ない制度」になっているからではないでしょうか? 年寄りだから他人の意見を聞かないという、年齢的な性質もありますが。
よく、窓際族が、「孤独感にさいなまれて頭がおかしくなりそう」と泣き言を言うことがありますが、管理人は全員孤独です。ずっと窓際族です。ですから、精神的ストレスがひどいです。「他人との軋轢がないのは楽だろう」という、良い面もありますが、私だって、新聞の折込チラシで「忘年会プラン 3000円」といった居酒屋なんかのものを見つけると、「忘年会か。もう何年もやってないなあ」と嘆息をつきます。
ですから、たとえ、内容はなんにもなくても、複数の管理人が集まって話を交わす機会を設けるだけでも、意義があるのです。ガス抜きしないと爆発します。大手管理会社は、委託契約の際に、「月に1回は管理人は、集会参加のため、午後の勤務を休みます」といった約束を了解してもらっていますので、ちゃんと参加できるようになっています。うちの会社でも、年1回秋に社員旅行があるのですが、「社員旅行参加者募集といったって、休みがもらえないのにいけるわけないじゃないか?」と憤慨してます。しょせん、土日休める事務職だけのためのもので、現場の職員は関係ないんでしょう。いまだにこの業界は土曜日ちゃんと休める現場は少ないです。(週休2日にしてほしいなあ)
大手さんは、年に1回、「管理員(清掃員含む)慰労会」といった宴会も開かれるそうです。もちろん参加費はタダ。
同じ管理人でも、勤務環境はずいぶんちがうもんですねえ。はあ〜。やんなっちゃった。(copyright by Shinji Maki)