管理人は超つらいよ
マンション管理最前線
大企業と零細企業 どっちの管理会社がいいんでしょうか? |
今日は2006年1月7日(土曜日)。世間では正月休みも終わりのはずです。
けれども、元旦からずっと違法駐車を続けている、悪人がいます。4日から毎日、警告書を貼っていますが効果はなし。今日は土曜日でマンション内にいる住民も多く、何人もの方から「管理人さん、あの車なんとかしろよ。ひどいよ。もう1週間置きっぱなしだよ。コインパーキングなら何万円もとられるよ」「ちゃんと取り締まってよ」と苦情を受けています。
実は、この車の所有者が誰であるかわかっているのですが、「極悪人」であることがわかっているために、直接注意をしたくないんです。絶対に自分の非は認めず、「だったら、廊下に植木鉢置いている奴はなんなんだよ。まずそっちを注意しろ!」といった、論旨のすり替えをする人なんです。話がこじれて、キレて、結局、会社に匿名の苦情電話がいくんです。だから、注意したくないんですが、さすがに1週間連続となると、他の住民の手前、そうもいきません。意を決してその部屋を訪ねて、口頭で注意しました。しかし、案の定、大声で逆襲が始まりました。「やっぱりなあ。だから、やりたくないんだよ。」と後悔しました。「そうはいっても、駐車禁止場所であることは大きく書かれているし、管理規約にはっきり書かれていることです。みんなが迷惑してます。すぐに移動してください。お願いします。」と、丁寧にお願いします。
すると。
「うるせい! おまえんとこみたいな小さな管理会社がえらそうなこと言うんじゃネエ。管理会社なんか他にもいくらでもあるんだ。大きな会社のほうがいいに決まってるじゃネエか。俺が変えてやる!」と啖呵を切ってきました。ふざけた奴です。
私もさすがに頭にきました。(こらえ性のない不良管理人なもんですから)
「************ ********* !! ***********!!!」
ちょっとここには書けない言葉で反論しました。適当にご想像下さい。
「零細企業のものよりも、大企業のほうがいい」とは、どんな分野でもよくいわれることですが、はたして、管理会社の場合でもそうでしょうか?
当マンションの周辺にあるマンションは、「D京」「T急」「H工」「Nハウス」・・・、皆大きな管理会社ばかりです。そういったところの管理人さんとつきあいがあるので、事情が、ある程度わかります。いいこともあれば、悪い(というか管理組合からすると不便・不都合)こともあります。「大企業はつぶれにくい」(つぶれそうになると国が援助する)、「電算化された事務などはスケールメリットがあり、低コスト」というのは確かに事実ですが、その他に関しては誤解や過信があると思われ、必ずしも、大企業がいいとは限りません。
□「フロントが優秀??」・・・・大企業のほうが少しは待遇がいいので、優秀な人が入ってくるかもしれませんが。どっちにしろ、マンション管理業界は「吹き溜まり」なので、たいした人間はいません。また、分譲会社とか建設会社の子会社である管理会社の場合(管理会社というのは、そのグループの中で最下位に位置づけられていることが多い)、「支店長は親会社でリストラされて飛ばされてきた無能な人間」だったりすることもあり、そんな奴がヘッドとして存在する支店は、どうしようもないです。
□「たくさんのマンションを扱っているから、経験・知識が豊富??」・・・普通はみんなそう思います。IT時代ですから、社としてデータベースを持って、「机の端末を叩けば、過去のいろいろな事例が表示され、適切な対処方法が示される」なんてふうなシステムになっていると思うでしょうが、ところがどっこい。これが全然構築されていません。結局、そのフロントマンの自分の知識しか生かせないのです。もったいない。
□「管理人の質が高い??」・・・・T急さんは、「うちは一部上場企業だから」と自負があり、採用もハードルが高く(給料も少しいいです)、変な管理人はいませんが、その他は、みんな「誰でもいいよ」みたいな感じで採用しています。「研修すれば何とかなるだろう」と思っている節がありますが、それは甘いです。
□「研修内容が立派??」・・・研修回数や項目は立派ですが、中身はハテサテ? 表面的なことしか教えないし、実態に役立つことを教えません。というか、教えられない人間が講師なんです。管理人自身も、「研修というのは、たいして役に立たないが、他の管理人といろいろ話し合えることは有益だ」といっており、研修そのものよりも、孤独な管理人が、他の現場の情報を知り得る場、寂しさや日頃のうっぷんを晴らす場としての価値のほうが大きいようです。こういう交流の場は小さな会社では無いですから、大きいほうが有利です。
なお、研修に参加させる時は管理人業務が休みになる会社が多く、「研修ばかりやって休むな。それよりも仕事しろ」と住民に文句を言われる会社もあります。
□「仕事がしっかりしている??」・・・・”きっちりと仕事をする”という面はたしかにあります。社として、仕事をマニュアル化しているため、きっちりなんです。しかし、”きっちり=いいこと”とは限りません。「住民の専有部分内のことには一切タッチしません」「契約の範囲は敷地内です。マンション前の道路の清掃は契約に含まれていません」「それは管理会社の仕事ではありません」・・・・と、大きな会社は、はっきり線引きをします。これはある意味、研修の成果です。働く側としてはいいことですが、住民側からすれば「融通が利かない」ということになります。仕事の質としては、大企業でもポカは多いですし、大も小もそんなに変わらない気がします。これは、チェックシステムがきちんとしていないことも一因です。フロントが何か間違い・勘違いをしても、上司のチェックなしにそのまま管理組合に提出されて恥をかくこともあります。「大企業だから、ダブルチェック・トリプルチェックが行なわれているだろう?」なんていう期待は甘いです。
□バックアップ体制がしっかりしている・・・大企業の場合、「急病や有給休暇取得のための代務員リザーブシステム」があります。小規模会社では、ないところが多いです。ただ、このシステムも余裕はないため、「急に管理人がやめた。代わりに入れる代務員は3日が限界だ。急いで採用しなくては、それまではフロントや経理の事務員が現場に行って穴埋めしろ」なんてことが大企業でもあります。しかし、大きな会社ほど、管理人の実態を知らないので、現場に来ても何もできません。
□横領とか持ち逃げなどはないだろう・・・これは大でも小でもあります。というか、大のほうが多いです。住民側が安心しているため、発覚しにくい面もあります。もともと組合がしっかりしていればこういうことは起きません。でも、大企業だと、不正が起きても会社が補填するでしょう。このへんは安心かも。
また、従来から言われる大企業の良くない点もあります。
□「管理委託費が高い」・・・大企業を維持していくにはお金がかかります。安くはできません。特にマンション管理は、人間対人間のような部分が多く、人の手による仕事がかなりあります。機械による合理化は無理です。 大企業の中でも、特にT急さんは委託費が高いです。(仕事の質は比較的良いのですが、いかんせん、委託費が高く、お金持ちの組合でないと契約できません)
また、D社は委託費は高いのに、仕事はたいしたことない、とさんざんな会社です。
□営業努力の無い分、仕事もおざなり・・・・分譲会社の子会社で、マンション建設と同時に自動的に管理物件が転がり込んでくる管理会社があります。国交省や防衛庁など、天下りだらけの関連企業も、費用だけ高くて、質はさっぱり、というように、マンション管理でも、自動的受注の現場は、一生懸命仕事しません。小さな会社は「いつ、うちとの契約が切られて、他社に持って行かれるかわからない」という切実な事情があり、けっこう必死に働くものです。なにしろ、マンションと管理会社との契約は1年契約ですから、「来年は別の会社に頼むから。じゃ、さいなら」ということが実際にどこでも起きています。大きな管理会社から小さな管理会社に変更することは、住民に不安感が高く、なかなか簡単には行きませんが、逆は簡単です。
□大きなところはフロント一人当たりの担当マンション数が多い・・・・今のジャスコの戦略みたいに、マンション管理会社でも「ひたすら拡大路線」というところがあります。拡大しても、儲けるためにフロントの数を増やさない会社があります。そのため、一人当たりの担当数が増え、それに伴い、質が落ちます。フロントが疲弊します。無理矢理な拡大はよくないです。
□大規模修繕工事で儲けようとする・・・・高い工事費払ったけど、質が悪い。という工事がけっこうあります。ピンハネ額が大きいですからそうなります。
その他、「管理人派遣業務だけを分社(子会社)化しているために生まれる弊害」というのも、大企業の欠点といえます。
例えば、分譲大手のA社は、A管理という子会社にマンション管理をやらせていますが、管理人派遣だけは、A管理の下部に位置する子会社のAライフというところにやらせています。マンション住民からみると、「管理人さんはA管理の従業員でしょ」と思っていますが、実はそうではなくAライフの従業員なんです。このため、管理人からすると、直接の上司(指揮命令系統上)はAライフの人間ということになります。しかし、実際の現場では、A管理のフロントマンと接触することが多く、そのフロントマンから指示を受けます。しかし、フロントマンと直接接触して、Aライフの担当社員に話を通さないと、Aライフから「なんで俺に話を通さないんだ」と怒られたりします。単純な業務でも、両方の了解を得なくてはなりません。特に、A管理のフロントマンとAライフの担当社員の考え方が大きく異なる場合(管理会社というのはどこもいい加減で、会社としてのきちんとしたマニュアルなどなく、その”人間”の個々の性格によって大きく管理体制が変わってしまうものです)、両者の意見が食い違うこともあり、管理人サイドからすると、「A管理からはこう指示されたのに、Aライフからは別の指示をされた。どっちに従えばいいだろう???」ということもあります。このように、非常に面倒でややこしく、フットワークが悪くなります。
分社化することにより、Aライフはマンション管理業ではなく、「人材派遣業」となるため、マンション管理適性化法の対象外となり、いろいろと都合のよい面(法律に定められた身分証明書を発行しなくてもいい、など)もあるでしょうが、上記のような弊害も大きいのです。
マンション管理に関するサイトをいろいろのぞくと、「結局は、担当するフロントマンがいい人か悪い人か、一種の賭けのようなものだ」という記述が多いです。大企業だからいい、とは言えないのです。小さな会社にも、優秀なフロントや管理人がいたりしますから。
それから、管理会社変更の際に、気をつけなければいけないのは、「管理会社変更の時に出てくる、それ専門の営業マンは、えり抜きのエリートである」ということです。「さすが、T社だ。この人は優秀な人だ。他のスタッフもみんなそうなんだろう」と思って、会社変更しても、実際に担当するフロントは、”右も左もわからないアッパラパー”だったりすることはよくあります。管理会社変更をするマンションは当然入札をして、一番委託費が安い会社が選ばれます。つまり、ギリギリの委託費を提示して勝ち取るのです。そんなマンションに給料の高い優秀な人材をあてることはできません。逆に、小さな会社で、ふだんのフロントマンが、会社変更の営業も兼ねている場合、「もし、当社にお任せいただける場合は、私がこのマンションを担当させて頂きます」と予告する場合もあります。これだと、実際のフロントマンの力量が事前に判明し、確実です。
まあ、いろいろ考えてお好きなほうにして下さい。
2006/1 2006/5加筆
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