管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

昼休み ゆっくり休みたい





 管理人も一労働者でして、勤務時間というものがきちんと決められています。これは管理委託契約書にも明記されています。そして、管理委託契約書など読まない人のために、”管理員執務時間”というプレートが管理事務室の窓の横に大きく掲げられています。ですから、どんな人でも、「今、昼の12時半か、管理人は休みだな」ということ容易に理解できることです。

 管理人は貧乏です。特に私は
貧乏です。貧乏ですと、昼食も外食よりは弁当になりがちです。ただ、私は無理してでも外で食べようとします。なぜなら、管理事務室内で食事をしていると、誰かしら、用件を言いつけにくるからです。無視すれば、カーテンで閉められた窓をバンバン叩き、「管理人さん、いるんでしょ。出てきてよ!」と叫びます。そういうのがイヤなので、極力外に出るようにしています。

 今日は、駅近くに回転すし屋が新装オープンするため、「先着100名様に湯呑み進呈」というキャンペーンがあります。「よ〜し、12時ちょうどにダッシュして行こう」と、朝から計画していました。しかし・・・・

 12時になり、窓のカーテンを閉めようとした瞬間、ある御婦人が、「管理人さん。ちょっと聞きたいんだけど・・・・」 うわ〜、捕まってしまいました。そして、こういうのに限ってたいした用事ではありません。「このカウンターに花飾っていい?」という要望です。「いいえ、不要です。お気持ちだけいただきます」と言って、お断りしました。そして、外に出たら、今度は、玄関ホールにいた不審な女性が、「すいません、佐々木さんってどこの部屋ですか?」「○○○号室ですよ。じゃ」 こうやって、玄関ホールから外に出ようとしたら、後方から、後ろ髪引くような声で、「管理人さ〜ん、ガスが出ないんだけど」。「今、昼休みなんですが、1時まで待っていただけませんか?」「ガスがないと昼ごはん作れないのよ。なんとか助けて」 こうやって、湯呑みは消えました。

 どうやら、とろ火で料理を続けていたため、ガス漏れと勘違いしたマイコンメーターが自動停止したようです。復旧の仕方は、メーターボックスの中に説明書がぶら下がっているので、それを読めば簡単なんですが、「あたし、メーターボックスってどこにあるか知らない」とおっしゃいます。こんな住民を相手にする私は不幸です。メーターボックスを開き、復旧処置をしてあげました。方法を教えてあげましたが、「なんか面倒ネエ、今度またあったらよろしくねえ」と言われました。「これは、管理人の仕事じゃありませんよ。御自分でやることです」「そんな固いこと言わないでさあ・・・・」 なんでもかんでも管理人です。

 もう、回転ずしはダメなのであきらめ、カップ麺に切り替えました。カップ麺にお湯を注いで3分たったころ、カーテンの閉まった窓を叩く人がいます。「すいません、フローリング工事に来たものなんですが、車どこに置けばいいでしょうか?」 おいおい、またかよ。ゆっくり休ませてよ。休憩時間なんだから。「え? カーリング? だったら、トリノでやってよ」と冗談いいつつも、通用せず、急いで駐車場所を案内しました。

 「さて、食べよう」と箸を持った時。また、コンコンと窓を叩く音。「あのさあ、管理人さん、うちのマンションって、地上デジタル放送の対応、どうなってるの?」「今じゃないとだめですか? 昼休みなんですが」「私も、今から電器屋に行くから、その前に聞いておきたいんだけど・・・・」 完全にラーメンは伸び切ってしまいました。

 昼休みも残り、15分です。急いで食べようと口にいれたら、また、コンコン! 「なんですか?」「あのさあ、管理人さん、このボトル、どこにPETのマークあるの?」「お尻ですよ」「じゃあ、このサラダ油のボトルはどうやって捨てるの?」「役所からのパンフレットに書いてありますよ。全戸に配布しましたよ」「え? そんなの知らな〜い。あたし、掲示板読まないし〜」(えばって言うことか?)「掲示板じゃなくて、全部のお宅にくわしいパンフレットを配布したんです。管理組合の役員さんじゃなくて私がやりましたから間違いないです」「あ、そう?」
 私の口からラーメンの麺がこぼれている状態なのに、用を言いつけてくるんですから、もはや常識は通用しません。その横からは、「あの〜、チラシ配布したいんですけど、いいですか?」「何のチラシ?」「マンションです」「あ、いいよ」 もういや! もういや!(BY 小松の親分)

 ついに、1時になってしまいました。しかし、まだ、食べ終わりません。しょうがないので、カーテンを閉めたまま、しばらく食べてました。そうすると、コンコン。「管理人さん。1時過ぎたよ。ここ開けてよ。車庫証明のことなんだけどさあ」・・・・・・

 母さん、僕の昼休みどこにいったんでしょうかねえ? (BY 西条八十)

 あきらめました。もういいです。残った麺(すでに伸びきってます)は捨てました。

 住み込み管理人も、「労働時間とオフの時間の線引きがいい加減で困る」と、よくおっしゃいますが、日勤管理人も同様です。


 ついでに付け加えると、私が外の食堂で食事をしている時でさえ、「あれ? 管理人さんじゃない。ちょうどいいわ。あのさ、この前理事会で問題になった件なんだけど・・・・・・」と話かけてくる人がいます。こういう神経、信じられません。勘弁して下さい。ですから、私は昼食に出かけるときは、サングラスかけて帽子かぶって変装してます。完全な不審者です。




2006/3



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