管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

新人設備点検員赴任   でも・・・・・


 
 

 
マンション内の設備点検をする専門のスタッフがいます。(設備点検員参照

 以前も書いたとおり、高齢者のアルバイトのため、いつも1〜2年で辞めてしまいます。このため、さまざまな弊害があります。今、来てくれる人も昨年秋に採用された新人です。

 会社側も「今までのやり方はまずい」と反省したのか、今回は「正社員」として若い人を採用しました。若いといっても、50過ぎですが。前の会社が倒産したそうです。とにかく、いつもの、「定年退職後の小遣い稼ぎ」の気楽なおじいさんたちとは違います。”現役バリバリ””やる気満々”といった元気のある人です。

 さて、この新人設備点検員を迎えるマンションの管理人としては、「今度はちゃんとした人が来てくれるんだ。よかったなあ」と思っていたのですが、実際はそうでもないです。

熱心すぎる・・・この人、うちの点検の日、私よりも早く来るんです。以前の人は、会社で準備をして、会社の駐車場から社用車に乗ってやってくるため、だいたい、9時半くらいに来ていたのですが、今の人は、8時半には来て、さっそく仕事を始めています。そして、私が出勤してくるのを待ち構えて、「管理人さん! 鍵貸して!」とせっつきます。私だって、始業時間の少し前に出社しますが、着替えたり、お茶飲んだり、始業時間の前にちょっと一息つく時間が欲しいのに、そんなことかまわず、「鍵を貸して」ですから、ちょっと困ります。そして、熱心に仕事をするので、以前の人より早く来ていても、点検作業が終わるのは以前の人よりも遅くなりました。

根性がある・・・・以前の人の場合、天候が悪い(雨・風)と、「今日は休みにするから」と来ませんでした。これは、理由がありますから私としても納得してます。しかし、今度の人は、どんな天候でも来るのです。同じ会社の人間なので、特に管理人が立ち会ったり監視する必要はないのですが、屋上の給水タンクの点検など、危険な場所については万一の事故なども考えて、立ち会ったほうが賢明なため、つきあいます。(会社から命令されているわけではない)  風雨の強い日の屋上は、タンクに登らない我々でも、かなりしんどいです。正直なところ、「今日はやめたほうがいいじゃないの?」と思ってます。

管球類の消費が増えた・・・管球類の交換は本来、設備点検員の仕事です。(しかし、1ケ月に1回しか来ない人に全部任せるわけにはいかないため、管理人も随時交換している) 「蛍光灯は早めに替えたほうがいい」という信念の人で、「チカチカする前の段階、両端が少し黒くなった時点」で替えます。前よりも交換頻度が増えています。私の仕事が楽になったのはいいことなんですが、決算書では当然「消耗品費」が増えますから、総会時がちょっとこわいです。

専門用語ばかりでチンプンカンプン・・・この新人さんは電気の専門家です。難しい資格ももっているそうです。それに前職も電気の専門職だったせいか、周囲の人間も専門家同士だったのでしょう。口から出る言葉がほとんど専門用語ばかりなのです。「管理人さん、西棟の■□×の△▼が○●になってるよ」とか、私に言ってくるのですが、全然理解できません。「もっと、素人にもわかる言葉で説明してくれませんか?」とお願いするんですが、「■□×は■□×だから、ほかにいいようがないよ」とか言って、結局よく理解できません。点検の報告書も専門用語ばかりです。報告書は理事長に見てもらうのですが、理事長もまったく理解していないと思います。でも、たまに、間違えることがあって、「あれは、そうじゃなくて、●●じゃないですか?」と私が突っ込むと、「う〜ん、そういう言い方もあるね。でも、俺たちの世界ではそうはいわないんだ・・・・」とごまかします。かなり、専門家としてのプライドが高い人です。

昔の不正に気がついてしまう・・・・彼が来てから、毎回のように、「管理人さん、あそこの配線おかしいよ」「あんな工事じゃだめだよ。最悪、発火するかも・・・」「非常時のバッテリーがだめになってるよ」「結線の表示が間違ってるよ。Aの端子は東棟の廊下灯じゃなくて、街路灯だよ」「ここの絶縁おかしいよ。先週、防犯カメラの事前調査に来た業者が何かいじったなあ」・・・・・といった不具合を次々と発見しています。シャーロックホームズ真っ青です。
なにしろ、私は電気の知識はゼロに近いど素人ですから、今まで、そんな不正があったことには全然気がつきませんでした。ただ、説明してもらうとたしかにおかしいようです。基本的に、不正を発見してくれることはいいことです。(放置したら火事になる危険なものもありました。詳細はいえませんが。) ただ、いろいろと問題があります。管理会社以外の別の会社がやった工事なら、管理会社の責任ではないと逃げられそうですが、「なんで今までの点検員は気がつかなかったの? ちゃんと点検してたの?」とつっこまれるでしょう。それに、「じゃあ、それって改修工事とかしなくてはならないの? 面倒だなあ」と役員さんから愚痴を言われます。また、不正工事が、わが管理会社がやったことだとそれは本当にまずいです。そういうのを、この点検員さんは、正直に「報告書」に書いてしまうため、「ちょっと、待って、これはまずいよ。この不良箇所って、うちで工事したやつだもん。これ、書き直してください。こんなの理事長に報告できないです」といういざこざが発生します。
 それにしてもまあ、「火事の可能性がある」といった悪質な不正には当社は関与してません(とはいえ、名前を出せば、「え? あんな一流企業がそんないい加減な工事やってるの?」という、有名電気会社がそんな工事をしてました。)でしたが、小さな手抜きとか間違いは、けっこうやっているようでした。直せるものは秘密裏に直していますが、ある程度お金のかかるものについては「予算措置しないとまずいなあ。どうしたらいいかなあ?」とフロントマンが頭を抱えています。現場の私からすると、「熱心で優秀な人なんだけど、いろいろ問題を起こしてくれるなあ」と、ちょっと困っています。でも、この機会に直せるものは全部直したほうがいいと思います。
 また、設備点検員というのは数年で変わりますから、あとから誰が来てもすぐにわかるように、配線図の表記とか、もっとわかりやすく改訂することが必要です。今、彼と私とで少しずつ改良してます。

 なんか、この問題に対処しているうちに、
「分譲会社直系の管理会社が、その分譲会社の不良工事とか発見しても、なかなか管理組合に正直に報告できないだろなあ」と実感してます。やはり、管理会社は分譲会社とか建設会社とかにしがらみのない会社のほうがいいと思いますヨ。

 

<余談>
 実は、防犯カメラ導入がいよいよ決まりそうなため、業者2社に見積もりを出させているところです。その候補業者2社が、たまたま、同じ一週間の間に連続で、「マンション内の配線を下見したいので、ちょっと見せてください」と、マンション内をじっくりと見ていきました。細かな配管もチェックしたようです。その下見のあとの管理会社の設備点検で絶縁不良がわかりました。配管を見た際にどうやら傷つけたようです。この不良箇所を探すだけで、設備点検員が丸一日かかりました。やっとこさ発見したのです。普通はいじらない箇所ですから、犯人はこの2社のうちのどちらかであることは確かです。しかし、どちらも「うちじゃない」とい言い張って、ミスを認めません。どっちがやったのか判断できる証拠ものもありません。はたして、どうしたらいいものか? 下見のときに傷つけるなんてねえ。本番のときはどうなるんだろ? 採用は2社ともやめて別の会社にしたほうがいいんじゃないでしょうか?


2007/2