管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

管理員の増減いろいろ



この冬は雪が多かったです。あとしまつが大変でした。

 マンションは確実に増えていますから、管理人の職も増えているような気がしますが、実際はどうでしょうか?

 一時期、「マンション管理会社変更コンサルタント」なる会社が活躍した時期がありました。現在は、少しおさまっているような気がします。こういった会社は、その報酬の算定方法に、「削減した管理委託費の1年分の金額を、コンサルタント料としていただきます」としているケースが多く、彼らは、「自分たちの儲けを増やすために」、必死になって、管理委託費を削減しようとします。これはこれでいいことなのかもしれませんが、「削減額=報酬」とすると、「金額を減らすこ」とが主になり、「管理状態をよくするにはどうしたらいいか」という一番大事な問題がおろそかになります。また、当然のことながら、会計規模の大きい、大規模マンションが標的にされ、小さなマンションは相手にされません。

 管理委託費というのは、もともとの管理会社が悪質で(かつ、住民が無関心で)、ボッタクリのような金額を奪い取っている場合があり、そういうところでは、適正な価格に戻すために、ガクンと管理委託費を下げさせるのはいいことです。また、「毎月、特別清掃をする必要はないでしょう。隔月でいいんじゃないですか?」とか、「エレベーター点検が、月に2回なんて多すぎですよ。減らしましょう。または、リモート点検(遠隔監視)でもいいんじゃないですか?」と、無駄を省くこともいいことです。
 しかし、一部のコンサル会社の中には、「禁じ手」に踏み込むケースもあります。管理委託費の中で大きな比重を占めるものは、「管理人人件費」です。これを減らそうとするコンサルタントがいるんです。また、コンサルタントではなく、管理会社自身が、「委託費が高すぎるよ。安くしてよ」と組合から要請されたときに、自分たちの儲けは減らしたくはないが、見かけ上の委託費を削減するために、管理人人件費に切り込む場合があります。また、それ以外にも、管理組合側が、「もうすぐ、大規模修繕工事だけど、お金が足らないよ。といって、修繕積立金の値上げにはみんな反対しているし、なんとか、管理委託費を下げてもらわないと。それには、管理人業務の削減だ」と、日ごろ管理人がどれだけがんばっているのか全然知らない組合役員は、安易に管理人業務を切り捨てようとします。

 具体的には、「毎日、管理人が来る必要はない。月水金だけでいい」「ゴミ収集のある午前中だけでいいんじゃないですか? 半額にできますよ」「このマンションは防犯カメラも宅配ロッカーも完備されているから、管理人は不要ですよ。週に2回、清掃員を派遣しますから、それで十分ですよ。管理人なんかどうせ何もしないで、いるだけですから。無駄なんです」・・・・・ 好き勝手なことを言って切り捨てます。

 新築のマンションでは、最近のマンション購入者は管理委託費について厳しい目を持っている人もたまにいるせいか、戸数が50以上ある分譲マンションなのに、管理人をおかないところがあります。今までのように、「マンションが建設されれば、当然のように管理人をおく」という時代ではなくなってしまったようです。

 このように、管理人業務の削減傾向は進んでおり、「月曜から土曜日まで、同じひとつのマンションで働く」という方式ではなく、「月木はAマンション 火金はBマンション 水土はCマンション」といった具合に、一人で3つのマンションを掛け持ちで巡回する、なんとも忙しい複雑な勤務をする管理人さんもいます。

 しかし。
 このような削減傾向に最近異変が起きています。

「犯罪が増えている。防犯カメラは万能ではない。やはり、人間がいることが必要だ」
「ゴミの分別が進み、ほぼ毎日、なんらかの種類のゴミ収集がある。週3日だけの勤務では対応できない」
「住民のゴミの出し方が悪く、ゴミ置き場がすぐに荒れる。やはり、管理人が必要だ」
「(特に高齢者の住民が)管理人がいないと不安がる」(話し相手が欲しいという面もあるかも?)
「なにか問題がおきて、管理会社に電話しても、すぐには来ないし、対応も遅い。また、現場を見ていないため、現状を理解しておらず、適切な対応ができない」
「近隣の住民から、”なぜ管理人がいないのか? 管理人がいないから、周辺に迷惑をかけているぞ”と苦情が来ている」・・・・・
 以上のような理由から、管理人業務が見直されて復活する動きが、わずかながらではありますが、起きているようです。

 実際に、「管理費を値上げして対応するから、今まで週2回の巡回勤務だったのを、月〜金の週5日勤務に増強して欲しい」といった要望が寄せられたマンションもあります。このマンションは、空き巣や車上狙い、バイク泥棒などの被害に悩んでおり、防犯面から、管理人常駐を望んだようです。それにしても、いまどき、「管理費の値上げを住民に納得させる」のは並大抵の努力ではできません。管理会社から提案したわけでもなく、組合さん自ら、そのような要望を出してくるなんて、すごいと思います。管理人の重要性を理解している稀有な組合さんだと思います。
 ただ、こういうところが、ひとつだけではありません。やはり、「無理な削減」の反動なのかもしれません。

 テレビで「ワンルームマンションの建設ラッシュに反対する、地域住民」の特集をやっていました。自治体によっては、建設抑制のための条例を制定するところもあります。この中で、東京都北区の条例が面白いと思いました。「30室以上のワンルームマンションには管理人を設置することを義務付ける」というものです。この理由は、「管理人に、地域とマンション住民との交流の橋渡しの役目を担って欲しい」というものだそうです。なるほど、たしかに、私も地元自治会とのパイプ役の仕事をたくさんやっています。役所との連絡役でもあります。(でも、本来、役所がやるべき仕事を管理人に無報酬でやらせるのは、虫がいいと思います。せめて、感謝状を贈るとか、なにかすべきでしょう。私なんか、役人にかわってすごい仕事をさせられていますが、今までに、ねぎらいの言葉のひとつもありません。自治体の予算減少のひずみの分を押し付けられています)

 とにかく、「管理人がいないとこんなに困るんだ」「バカとはさみと管理人は使いよう」ということが、だんだん理解されてきているのかもしれません。マンション管理会社としては、いい商機だと思いますよ。でも、優秀な管理人を育成する気なんか全然ないんですよね、この業界は・・・

 


2008/4