管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

感慨 当サイトの歴史


 メールのやりとりしかしたことはないのですが、高名な小説家「佐伯一麦」さんとつながりができ、このたび、佐伯さんの著作「ピロティ」という小説が発刊されました。 これは、マンション管理人を主人公にした画期的な小説です。この機会に、当サイトの歴史を振り返って見たくなりました。

 思い返してみると、このサイトを立ち上げたのが、2003年の頭でした。実はこの前に、「ホームページビルダー」というソフトを購入して、「これなら、自分でもできそう」と思い、自分の趣味(=映画)に関するサイトを作っていました。しかし、ド素人がいきなり初めて作ったサイトで、中身もオソマツ、誰も来てくれない、という有様で、はやばやと見切りをつけて閉鎖しました。

 「ホームページというのは、ただ、みんなが知っているようなことを、駄文を並べて作るだけでは誰も読んでくれない」とわかり、「自分しか知らないような特異な分野で作るべき」」と考え、「マンション管理人」に焦点をあてました。

 マンション管理人というのは、ご存知のとおり、高齢者向けの仕事であり、PCを扱える人も非常に少ないです。このため、2003年当時、ネット上でマンション管理人のナマの声を聞くことはほとんど無理でした。マンション管理に関する情報はありましたが、ほとんどは、マンション住民がつくったもので、管理人の悪口ばかりだったり、管理会社が作った嘘八百のきれい事の記事でした。わずかに、現役管理人さんが作ったサイトはあったのですが、いずれも完成度は低く、更新もほとんどない状態のもので、体系的に作られたものは皆無でした。(とはいえ、そういうサイトも参考にさせていただきました。ありがとうございました)

 本当のことを言うと、最初は「愚痴のはけ口」として始めたサイトだったため、体系的でもなく、見やすくもなく、そもそも、「いろんな人に見てもらいたい」とも思っておらず、ひとりよがりで作っておりました。特に宣伝もしなかったのですが、「最前線の管理人の実情がわかるサイト」ということで、閲覧者がすごく増えてしまい、いろいろなサイトでリンクも貼っていただきました。2008/6現在のアクセス数はトータルで約34万。上地君のギネス記録には遠く及びませんが、この分野ではけっこう多いほうではないでしょうか?

 最初は10階建てだったこのマンションも、今は、80階を超え、日本一の超高層マンションになってしまいました。ここまで来たのはすごいとも思いますが、「よくこんなに書くことがあったなあ。やっぱり、この仕事は大変だ」と感慨深いものがあります。
 幸い、他のサイトでありがちな「荒らし」というものもなく、なんとかおだやかに運営できています。現在、PCを扱う管理人もボチボチ増え、「ブログ」という形態の普及とともに、「生のマンション管理人の声」を聞ける機会が増えたことはとてもいいことです。管理人と一言に言っても、その人の性格もいろいろ、労働条件もいろいろ、環境もいろいろですから、なるべく多くの管理人の声を聞いたほうがいいと思います。

 けっこう順調に来た当サイトですが、サイトスペースを借りていたプロバイダーの倒産には困りました。もともと、このプロバイダーはいい加減で、しょっちゅうトラブルが起きて閲覧不能になることも多かったです。読者の皆さんには迷惑をおかけしました。倒産時、前払いした料金の返却もなく、事後の善後策も何もなしに勝手に閉鎖されてしまいました。当サイトはそれまでずっと、「マンション管理人」というワードで検索すると、googleでは常に一位に検索されていたのですが、引越しの際に、一位の座を明け渡すはめになりました。別に競争しているつもりはないんですが、正直悔しい思いをしました。ホームページの引越しというのはけっこう大変で、当サイトをリンクに加えていただいているサイトがたくさんあるのに、そこのリンク先のアドレス変更をお願いするのは、完璧には無理です。いまだに、昔のアドレスのままのところも多いです。おかげで、アクセス数もずいぶん減ってしまいました。最近はかなり復活したようです。あろがとうございます。


 さて、話を佐伯一麦さんに戻しますが、以前、文芸雑誌に載った短編小説で、当サイトの記事を参考にした旨のお断りをいただきました。佐伯さんは若いころ、東京で電気工事の仕事をしていたそうで、その際に、いろいろなマンションを仕事で訪れ、マンション管理人に興味を持ったそうです。「いつか、そんな管理人の姿を小説で書いてみたい」と思っていたそうで、それが、今回の「ピロティ」という作品にまとめられました。(アマゾンで買えますヨ
 この本の「あとがき」には、「マンション管理人は超ついらいよ の記述から多くの示唆を授かった」と書かれています。たしかに、この本を読むと、そういった部分が散見されます。私が長年書いてきた駄文の山ですが、こうやって、誰かの役に立てたというのはうれしいことです。

 マンションとは関係ありませんが、佐伯さんは仕事の関係で、アスベストを吸って病気にかかり、今でも苦しんでいるそうです。「石の肺」という本も書かれています。「役人どもの無策によって国民が苦しめられている」という認識では私と一緒です。私もこれからも、役人の腐敗を訴え続けていくつもりです。


 高齢者問題、教育問題、環境問題、貧困の問題・・・・さまざまな問題が、このマンションという現場で渦巻いています。まさに、マンションは現代の縮図といえます。80階を超え、かなり見にくくなってきた当サイトで、読者の皆さんにもご不便をおかけしております。しかし、「○○階の△△という記事は面白い」といった紹介の仕方をされる読者の方も多いため、現在のサイト構造は、あえて、そのままにしていくつもりです。適宜、「ジャンル別インデックス」をご利用の上、ご自分の興味のある記事を読んでいただければと思います。

 今後とも、どうかよろしくお願いします。今、物価が急上昇して、生活が苦しくなるばかりです。なんとか、全国の管理人さんの待遇が向上することを切に望みます。(深夜のバイトなんかせずに生きられればいいんですが・・・・)


2008/6