管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

清掃は科学である



バカにされるけど、バカじゃできない

2018/12


12月です。寒いです。落ち葉がすごいです。


この時期、どこのマンションの管理人も「落ち葉掃除」に苦労していると思います。
自分のマンションの中に落葉樹がなくても、公道の街路樹の落ち葉が風でマンション内に飛んできたりします。

さて、今朝の出勤時、駅から勤務先マンションまで歩いている時に、その途中にあるマンションの管理人さんが一生懸命落ち葉掃除をしていたのですが、使っている「ほうき」がよくなくて、まるで「ザルで水をすくっている」かのごとく、葉っぱがほうきから漏れていって、なかなかきれいになりません。

正直、「アホか? なんでそんな箒で落ち葉掃除をしてるねん?」と思いました。

この冬の新作ブログの

マンション管理員Meg★のブログ

の12/13の記事は、「いろいろな箒」の話でした。

「ほうき」と言っても、このように、用途によっていろいろな種類があるのです。これを上手に使い分けて効率的に掃除をしないといけません。つまり、掃除って「科学」なんです。

この時期は、テレビなんかでも、年末大掃除に関しての特集が多いですが、その中では、「カーペットに赤ワインを落としてしまった際に使う、特殊な業務用の薬品」とか、「頑固な油汚れがついた換気扇を掃除する特殊なヘラ」とか、いろいろな専門的道具や洗剤・薬品が紹介されます。
つまり、清掃対象物を科学的に分析し、それに最適な薬品やら道具を駆使して行なうのが、「プロの清掃」なんです。

さきほどの、今朝見かけた管理人さんですが、その清掃の様子を見た、そこの住民が「大変ですね。ご苦労さまです」とか、ねぎらいの言葉をかけておられましたが、これ、本当なら、「なんで、そんな道具で非効率的に掃除をしてるんですか? もっと適した箒を使って、さっさと掃除をして下さい」と言うべきなんです。

そこの管理会社って、誰でもが知っている大手有名管理会社ですが、「そんな管理会社でも、こんなアホな道具で落ち葉掃除をさせてるのか? この管理会社もだめだなあ」と思いました。

管理会社もプロなんだから、科学的に清掃を研究して、それこそ、メーカーに対して、「こういう清掃道具を開発してくれ」と発注するくらいのことをしないとプロとは言えません。そして、清掃対象に応じた最適の道具を用意して各マンションに配布し、清掃員にも科学的な研修を行なって技術を習得してもらわないといけません。特に今は、「ノロウィルス感染患者が吐いたゲロの始末」なんていう仕事もありますから、「医学的知識」も必要になってくる、「バカじゃできない難しい仕事」なんです。
世の中では、「清掃なんか誰でもできる、社会の最底辺の仕事」という偏見が強いですが、清掃は科学の塊です。アホじゃできません。「お茶ガラを使って畳の間をほうきで掃く」というのだって、先達たちの長い歴史によって研究された成果としての方法なんです。

管理会社もこのような体制を整え、かつ、現場でも、「あの種類の木の落ち葉はすぐに掃除しないと翌日には道路に張り付いてしまうから急ぐ必要がある」とか、逆に、「あの木の落ち葉は、1日乾燥させると、くるくる丸まってきて、箒で掃除しやすくなる。だから、すぐには掃除せず、一日放置するほうがいい」とか、そういう知識や経験を、会社側に伝えて、それを会社内でデータベースにして共有して、他の現場での清掃にも役立てるようなシステムが必要だと思います。

今、うちに来ている清掃員さんは、清掃専門の派遣会社からのスタッフで、ここの住民があまりにひどい人間ばかりのため、皆さん、「こんなマンション、嫌です!」と逃げてしまうため、入れ替わりが激しく、いろんな人が派遣されてきますが、ひとりひとりの経験値や技能レベルが全然違うのに驚いています。つまりは、会社内で「清掃技能&知識」の共有化や研修がまったく行われていないということなんでしょう。
このように、現状では、大部分の会社で、そういう知識や経験は、その清掃員個人の中だけのものであり、なかなか共有されていません。これは非常にもったいない話です。



よく、この写真のような高いオフィスビルの窓ガラスの清掃をロープとゴンドラを使ってやっているのを見かけますが、危険な場所で短時間で作業を終えるために、すごくテキパキとした、科学に裏付けされた、無駄のない清掃をしています。これも、経験と科学によって生み出された「最も効率的な方法」なんだと思います。