管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

意外と面倒 車庫証明発行業務



 
  駐車場のあるマンションの場合、「車庫証明を発行する」(正確には、「車庫証明」を発行するための証拠資料となる、「このマンションの駐車場の置いていますよ」という証明書の発行)という仕事があると思います。

 皆さんのマンションでは、どうしてますか? 「理事長が全部処理する」「役員の中の事務担当みたいな人が処理する」「管理会社(=フロント)が処理する。理事長は印鑑だけ」「管理員が処理する。理事長は印鑑だけ」・・・・ いろいろあると思いますが、どれでしょうか?

 当マンションでは、管理人がやってます。事務的なことなんで、マニュアルに沿ってやれば簡単だろうと思われるかもしれませんが、これがなかなか。いつもなんかトラブルんです。うまくいきません。


<マニュアルがない>・・・前任者から大体のことは聞いてはいたんですが、きちんとしたマニュアルはありません。それに、以前は管理組合のゴム印だけでOKで、それがあれば、管理人一人で全部できたのですが、今は「車庫飛ばし犯罪」などの影響で、警察側がうるさくなって、「理事長印が必要」ということになり、管理人一人だけではできなくなりました。

<車の変更じゃないの?>・・・車庫証明が必要になるということは普通、車を買い換えることです。車を買い換えるということは、駐車場利用契約の記載事項を改変するということで、使用細則に従って、「車種変更届」を出さなければなりません。それなのに、住民は届は出さず、ただ、「車庫証明出してよ」と来ます。「証明出す前に、変更の連絡してよ」と思います。以前は、この変更届の書式がなく、その結果、組合に過去に提出されている車種と変わっていることがよくありました。それでは、こちらも駐車場の管理ができません。私のほうで「変更届」の書式を新たに作成しました。でも、「買い換える新しい車の方を書いて下さいね」と言ったのに、今ある方を書く人がいます。「日本人相手に日本語通じないのかい?」と、ヒロシなみに落ちこみます。

<書類って誰が書くの?>・・・書類を持ってくる住民によって違うのです。車の名義人の住所氏名、駐車場の番号など、自分に関する項目をすべて書き込んでから、「組合の証明をお願いします」と書類を持ってくる人もいれば、白紙の証明書を持ってきて、「理事長印ちょうだい」という人もいます。前者の場合、住民個人よりも、車のディーラーさんが持ってきます。(多少常識があります)
 ただ、書類を受理する警察署から言わせると、「書類の中の記入事項はすべて、車庫所有者(=つまり管理組合)が書け」ということになっているそうです。組合が理事長個人をさすのか、代理の管理会社をさすのか、あいまいです。一度、白紙の証明書を理事長に渡して、「書いて下さい」とお願いしたら、「そんなの書けないよ」と断られました。「じゃ、とりあえず、先に署名捺印してください」とお願いしたら、「白紙に印を押すなんて事できないよ。俺責任持てないもん」とこれも断られました。至極当然だと思います。
 そんなわけで、「代理である管理会社として、必要事項を記入した上で、最後に理事長に署名捺印してもらう」ということにしました。でも、そうしたら、「使用者名のところに世帯主の氏名を書いたら、”車の名義は息子なんだ。息子の名前じゃないとまずい”とやり直しになった」とか、「組合員名簿の漢字のとおりに書いたら、”通称は渡辺なんだけど、正式な漢字は渡邉なんだ。字が違うんだ。これじゃだめだ”とダメだし食らった」とか、「”いや、実は車の名義は会社なんだ。個人所有じゃないんだ”とまたまたNG食らった」など、一筋縄でいきません。
 このため、「住民の個人に関することは自分で書いてもらう」ということに方針転換しました。書類を持ってきた住民に、詳しく、「ここには、このマンションの住所と駐車場番号を書いて下さい」「ここには、車の名義人の氏名を書いて下さい。世帯主ではありません」「ここには、駐車場利用契約書に書かれている、契約期間を書いて下さい」・・・と懇切丁寧に説明して書いてもらいます。でも、この人たち、部屋に帰ると私の説明なんか忘れるんでしょうね。その後書いてきた書類には、駐車場番号でなくて部屋番号が書かれていたり、「契約書って何?」と今頃聞いてきたりします。また、車は息子のものなのに、管理人室に来たのが母親だったりして、当人ではない時など、「私じゃ、全然わかんないのよ」(親がわからないことは管理人もわかりませんよ)とさじを投げられることもあります。住所の番地が間違っていることさえあります。

<契約書どうしたの?>・・・駐車場利用契約書を警察に提出する必要はないんですが、「契約期間」というのを記入しなければなりません。この契約期間は一人一人違うため、契約書を見ないと転記できません。そんなわけで、「契約書ありますか?」と尋ねるんですが、「契約書? 何それ?」と聞く人がいるのです。あきれます。確かに当マンションは古いマンションのため、竣工当時から駐車場を利用している人だと、「どこにいったかわからないよ」という人がたくさんいますが、「契約書って書いたっけ?」なんていう人の相手は疲れます。(車庫証明はディーラーが代理で警察に提出しますので、ディーラーが中間に入るのに、なんでディーラーの係員は契約書のこととか説明しないんでしょうか? いい加減です) 住民の中には、「そんなの、管理人さんが適当に書いてよ」という人がいます。「そんなこといわれても、私は単に管理会社の人間ですし、警察に提出する書類の記載内容を偽装したとなると犯罪ですから、そんな責任は取れません。適当でいいなら、ご自分で適当に書いて下さい」「いや、俺が書くのはまずいよ。管理人さん書いてよ」といった、わけのわからない問答が繰り返されることもあります。「自分が書いたとなると自分の責任になるから、管理人に責任を押し付けよう」という考えなんでしょう。
 とにかく、契約書が見つかることがほとんどないです。ほんと、いい加減な住民が多いです。そのため、組合で保管している契約書を引っ張り出してこなければなりません。(駐車場契約書は甲乙2部作成します) しかし、当組合、なぜか変なところにこだわる組合で、「契約書の類は大事な書類なので金庫にしまう」という習慣になっています。集会室の中にあるんですが、鍵は理事長しか持っていません。ですから、駐車場契約書の記載を見るには理事長に頼まなければなりません。面倒です。
 

<当日は無理ですよ>
・・上の記述を見ればわかるように、車庫証明の発行は簡単ではありません。順調に書類を記入したとしても、それを理事長に渡して見てもらい、署名捺印をしてもらうことを計算すると、最低でも翌日まではかかります。それなのに、「車庫証明欲しいんですけど。今、ディーラーの人が来てるんで、この場で作ってください」と言う人がいるんです。本当に。どういう神経してるんだか? (このディーラー社員も、専門家のくせに何もわかってないんだろうか?)
 理事長が旅行なんかに行っていたら、もっと日数がかかります。でも、事前に「車庫証明が必要になる予定なんだけど、作成するのに何日くらいかかるの?」と聞く人は皆無です。

<地図はいらないの?>・・・警察に提出する際、その車庫がどこにあるかという地図が必要なはずですが、「地図もください」と言う人は半数で、残り半数は必要ではないようです。当方では地図(駐車場の番号も書いてある詳しい見取り図)を用意してるんですが、不要なら用意しなくてもいいはずです。どっちなんでしょうか?

★有料の管理会社も・・・・・このように面倒な事務手続きが必要な処理のため、「証明書を発行する手数料」を徴収する管理会社もあるそうです。「1通=5000円」とかとるそうです。まあ、会社側の気持ちはわかるけど、有料はひどいじゃないかなあ? そういう、細かな事務手数料でもうけようとしてるのかな?  うちは当然無料です。

 



 簡単そうな書類1枚作るだけでも、こんなに苦労してるんです。

2005/1