管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

 オートロックの玄関 


   オートロック。今の新しいマンションでは常識になりました。「完璧なセキュリティー」の代名詞のような存在ですが、はたしてそうでしょうか? 私はの場合は、勤務先ではオートロックなし、住むのはオートロックあり、両方とも知っています。

 結論から言うと、「ないよりはあったほうがいい程度」です。オートロックでないと、完全に自由ですから、Pチラシ撒きのお兄さんも入ってくるし、泥棒の下調べも入ってきます。たしかに無用心です。でも、オートロックが完全にそれらを防げるとはいえません。

<新聞配達>・・・「新聞はやはり玄関先まで届けて欲しい」と決めたマンションでは、新聞配達員がマンション内に入ってきます。「秘密の暗証番号を教えて、勝手にドアを開かせる」「朝5時〜6時までロックを解除するようにタイマーをセットする」「合鍵を新聞屋に渡す」などの手段が行われています。あまりよいことではなく、これを悪用した事件も起きています。
<誰かについて入っていく>・・・もっとも簡単です。深夜早朝でもなければ、数分待てば誰かが中に入って行きます。それについていけばいいのです。大規模マンションほど人数が多く簡単です。ついていくのが怪しまれる場合は、誰かが出てくるときに入っていけば、そんなに怪しまれません。
<宅急便を装う>・・・通信販売利用も増えています。何部屋か当たれば、そのうちのひとつは「荷物が来た」と開けてくれるでしょう。
<掃除の時間を狙う>・・・管理人や清掃員が玄関ホールの清掃をする時に、ドアを開放することがあります。定期的に行われますから、下調べをしておけば簡単です。
<秘密の方法がある>・・・実は、ごくごく簡単な[「知識」や「道具」さえあれば容易にあけることができる方法があります。管理人であれば、だれでも知ってると思われます。こういう方法がないと、「オートロックが故障した際に開けられない」「救急隊員が中に入れない」という欠点があるため、それを補完するために、存在するのです。(悪用されると困るので、ここでは具体的には書きません)

 このように簡単に入ることができます。また、設計者がバカだと、正面玄関はオートロックでも、裏の非常階段のドアがいい加減で、傘のような長い棒状のものがあれば、簡単に開けることができるドアがかなりあります。また、住民がいい加減だと、非常階段口から出たときに、きちんとドアを閉めないことが多く、そこからも簡単に入れます。とにかく、「多少手間がかかるが入れる」程度のものなのです。完全ではありません。
その他、オートロックの欠点

<経費がかかる>・・・普通、年間十数万円の保守費用がかかります。
<ぶつかる>・・・オートロックでないマンションだと夏場などは開けっ放しですが、オートロックでは常時閉まっています。ぶつかる人(特に子供)がいます。ぶつかると壊れます。
<簡単に鍵を換えられない>・・・ピッキングなどの被害を食い止めるためには各部屋の玄関ドアの鍵の交換が一番です。しかし、オートロックのマンションだと、部屋のドアの鍵を換えても、オートロック用の鍵を持っていなければなりません。結局2本持っていなければならなくなるのです。面倒です。
<間違いコールがある>・・・子供とか、荷物をたくさん持った配達員とか、よく部屋番号を間違えて押します。そのために、相手は無駄に呼び出されます。郵便受けにきちんと名前を書いていない人が多いと、間違える率も高くなります。
<リフォーム業者が困ります>・・・部屋が売買に出されると、必ずリフォームが行われます。この時、リフォーム業者が出入りするわけですが、1社ということはありません。クロス業者、畳業者、建具屋、などなど様々な専門業者が出入りするのです。このため、オートロックでないマンションの場合は、メーターボックスの中とか、新聞受けの中とかに鍵を入れておきます。各業者は指定された場所から鍵を取り出して入室するのです。しかし、オートロックだと、まずマンション内に入れません。全部の業者それぞれに合鍵を渡すこともできません。そのため、管理人がいちいち玄関ホールのドアを開けるのです。住み込み管理人が泣いているのは、「土日祭日でもリフォーム業者のために仕事をしなければならない」ことです。


 便利と不便は背中あわせです。







2003/5/7