管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

輪番制 (理事会役員の選任方法)




 皆さんの管理組合では、役員をどのように決めていますか? 「101号室の次は102号室、その翌年は103号室・・・」、このように1年毎に順番に役員を担当していくやり方を”輪番制”といいます。(役員の任期は1年で、毎年全員が変わっていく方式になっている)

 自分から進んで役員を引き受ける人は、なかなかいません。そのため、強制的・自動的に役員役が回ってくるこの制度は、"平等”の観点から、多くのマンションで採用されています。分譲時の管理会社も、この方法を薦めてきます。

 しかし、輪番制を推薦する(半強制的に採用させる)管理会社ほど、手抜き会社といえるでしょう。それほど輪番制には欠点があります。

「1年ごとに役員が総入れ替えするため、事業の継続性が寸断される。長期に渡る事業が扱いにくい」
「理事の業務を覚えた頃に、その人たちがいなくなってしまい、前年度のことを知らない、素人だらけで一から出直すことになる」
「次年度に繰り越された案件は、また最初から話し合わなければならない」
「最初の理事会は、引継ぎ事項だけで、1回分を無駄にしてしまう」
「毎年、役職を決める作業が紛糾し、無駄な時間がかかる」

など、不具合が多いのです。

 当マンションでも基本的には、輪番制が取られています。ただし、ここ数年は、副理事長1名だけ、この人に関しては変わっていません。もと、中学の校長先生で現在はリタイヤされている女性が、ずっと務めていらっしゃいます。平日も在宅されている方で、熱心に管理組合の運営に努力され、毎年変わる理事長や役員さんを指導されています。かといって、独断的になることはなく、他住民からも信頼され、非常に良好な管理組合運営が実現できています。この点では、恵まれた環境といえるでしょう。それに、築20年以上の古いマンションですから、役員経験も2度3度と回ってきているため、皆さんも、「経験者」であり、ど素人ではありません。

 管理組合運営の観点からは、私は恵まれた職場にいると思います。

 しかし、このように「中心となって熱心に運営に努力する住民」がいるケースは非常に珍しいです。

 翻って、私が住むマンションのことを考えると。やはり、竣工当初に管理会社が勧めた輪番制をとっています。築11年のため、やっと一回りしたところですが、今までは、毎年総入れ替えで、何か問題があっても、いつも「○○の件は次年度へ繰越」となり、なかなか解決できません。役員としても「面倒なことはやりたくない、来年は自分は関係なくなるのだから、次年度役員に任せよう」と思い、管理会社も「難しい案件は、先送りにしてしまえ」と考えるです。繰越された案件は、新しい理事の中で、また最初から話し合うことになり、結局その年も解決できず、またまた翌年へ先送りになります。管理会社にとっての儲け話の場合(修理とか修繕とかの工事で、手数料が望めるもの)は、反対の理事がいた年は、保留にして、賛成の理事が多いときに、反対の意見があったことなどおくびにもださずに、採決してしまうこともあります。

 また、管理会社にとって一番怖い「管理委託先変更」という話は、簡単に1年では決定できません。かなりくわしい理事が数名いて、何年かかけてできることです。または、管理会社の過去の実態をよく理解している人がいることが大事です。管理会社にとっては、役員はド素人のほうが都合がいいのです。「何もわからないから、管理会社さんにみんなお任せします」と言わせたいのです。傀儡政権のようなものです。こういう場合、管理会社の視点では、輪番制は最高です。

 私の住むマンションでも、「ペット問題」とか「自転車置場が不足している」「防犯カメラつけよう」などが、提案されてから5年もたつのに、何も進展していません。一度詳しいアンケートを取ったときに、「決まるのかな?」と思ったら、「次年度に繰り越し」になり、翌年、また同じ内容のアンケートを繰り返したことがあり、あきれました。役員も無責任ですし、管理会社もいい加減です。管理会社への委託費もかなり高く、見直す必要があるはずですが、そういうことは素人ばかりの理事会では、話し合われません。話が出ても次年度に消滅します。

 輪番制は、「役員を確保できる」「平等」という大きな長所があるものの、欠点のほうが大きい欠陥制度です。現在、国も「役員の任期は2年。毎年、半数だけ替わる」という制度(参議院のようなもの)を勧めています。総合的に見て、これが一番良い制度だと思われます。(加えて、「2年の間、1年は理事長、2年目は自治会担当理事というように役職を変える」「独善的でない人が2年以上役員を務めてくれる」のが、さらに良いかたちです)

 ですから、輪番制を勧める管理会社というのは、やめたほうが懸命です。本当に管理組合さんのことを考えて、良い管理をしようとするなら、勧めないはずです。自分たちが儲けることしか考えない会社が、輪番制を勧めるのです。



2003/5


※ 2005追記
 上記の副理事長は、病気のため長期入院生活になり、役職を辞退されました。この副理事長は管理人の苦労もわかってくれる人徳の高い人だっただけに、理事会の中にこの人がいないという損失は甚大です。組合運営もなかなかうまくいかなくなりました。やはり、組織は「人」です。