管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

ゴミ収集の立会い業務は、「住民保護」でもあるのです



 どこのマンションの「管理委託契約」にも、この項目はあると思います。

 管理人業務の中の
ゴミ収集の立会いという仕事です。

 これ、文字面だけ見てると、「ただ、見てればいいんじゃないの?」って思う人も多いかもしれません。でも。実は、けっこう大事な役割があります。それは、「住民の保護」という仕事。

 ゴミ収集は、以前は、「3人1組」でやっていたのですが、公共事業の見直しによるコスト削減で、今は、「二人一組」でやっています。このため、「安全確認」がどうしてもおろそかになり、「坂道の途中の収集場で、パーキングブレーキが不十分で、車が動き出してしまい、民家につっこんだ」とか、「ゴミ収集車の交通事故が増えた」とか、そういうのが実際に起きています。

 私が注意しているのは、ゴミ収集中に、パッカー車の機械が稼動している時間です。あの、グイ〜ンと「ゴミをかき込む」機械です。あれって、ものすごい力があり、金属製の物置だって、いとも簡単にへし曲げる力があります。人間なんかひとたまりもなく、事実、「係員が腕を挟まれ、腕を切断する大怪我をした」とか「巻き込まれて死亡事故」というのも起きています。

 また、「収集中にスプレー缶が爆発」なんてこともあるし、普通のビニール袋に入ったゴミであっても、かき込む際に、ゴミ袋が破れ、中身が周囲に吹っ飛ぶこともよく見かけます。この中身が「刃物」だったりしたら、大変です。
 ガラス瓶の回収のときなんか、あの機械に書き込まれる際に、ビンが割れることがしゅっちゅうあります。半径10メートルくらいまで、ガラスの破片が飛ぶこともあり、ほんとに危険です。
 ですから、私はゴミ収集に立ち会う際は、肌を露出せず、帽子をきちんとかぶり、かつ、花粉症用の、「保護メガネ」(100円ショップで自腹で購入)も装着します。目が一番怖いですからね。


 最も怖いのが、「ゴミ屋さん! 待って! このゴミも捨てさせてください!」と駆けつけてくる、朝寝坊の奥さんたち。この人たちが、機械が稼働中に、「これも捨てて」とか、収集車に近づくことがあります。この時の巻き込み事故が怖いんです。私も実際に経験したことがあるのですが、この「遅刻奥さん」が、振袖みたいに、袖の長い服を着て、駆けつけてきて、その際に、突風が吹いて、袖が浮き上がり、その袖の先端が、機械に巻き込まれそうになったことがありました。その時は、私が「緊急停止ボタン」(赤い大きなボタンがあります。管理人なら皆その存在を知ってるはず)を押して、事なきを得ましたが、その時作業員さんたちはゴミ置き場の奥のほうに入っていて、その奥さんがやってきたことにも気がつきませんでした。危機一髪でした。私がいなかったら、この奥さんは死んでいたかもしれません。(といっても、本人は、そんなに重大なことだという意識はないようで、お礼の言葉もなかったですが)

 それ以外にも、自転車に乗った住民が、収集車の横をすり抜けてきたり、学校から帰ってきた子供が「運動靴を入れる、巾着袋を手に持って、その長い紐でブラブラさせたり」、いろんな危険がありますから、気が抜けません。

 このように、3人体制が2人体制になって、安全確保が手薄になっており、そういう意味でも、管理人が立会いする時は、収集車に住民が近づかないように、「警備員」みたいな仕事をするのです。ぼんやりしているように見えても、実は重要な仕事なんです。

 普通の管理人さんは、この時に、「収集員と世間話」をしたりするケースも多いですが、私の場合は、つねに、収集車の周囲を見渡して、危険を察知するようにしています。このため、「無愛想な奴」と思われているかもしれません。


2013/10