管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

 マスターキーなんてないんです 


 
これに関しては、ここのような分譲マンションと賃貸マンション(会社の寮とかも含む)では、まったく違うと思います。

 よく、管理人室に来て、「すいません。お母さんがでかけちゃったみたいなので、家に入れません。管理人さん、鍵ないですか?」という子供がいます。大人でも、「ひったくりにあって、カバンごと盗まれちゃったのよ。家に入りたいから、管理人さんマスターキー貸して」という人がいます。

 しかしですね。分譲マンションには全居室を開けるマスターキーは、普通はありません。たとえオートロックのマンションでも同じだと思います。もし、そんなものを持っていたら、管理人が悪い奴なら何でもできます。管理人は警備員みたいに、身元をしっかり調べて採用するようなことはありません。定期的な法定警備講習もありません。怪しい奴がなる可能性もあります。そんな輩に、マスターキーを預けられますか? 最も大事な鍵を預けられたら、こっちも困ります。管理人室は清掃中や巡回中は誰でも忍び込むことができるし、管理人室の中にある鍵ケースには鍵がかかっていないし、やる気になったら何でもできます。さすがに、それも怖いので、私は最近、5分以上管理人室を留守にしそうな時は、ドアに鍵をかけます。(いたずら小僧も最近ちょくちょく入ってくる)
 といっても、管理人室の鍵は、管理人の他にも、理事長・防火管理者・警備会社・管理会社など複数が所有しており、管理人がしっかり鍵をかけていても安心できません。というわけで、分譲マンションにはマスターキーはないのです。「マスターキー」と呼称しているのは、共用部分のみどこでも開けられる鍵のことです。(当マンションでは、すべての鍵がみな違う種類なので、鍵もたくさんあります。月1度の定期点検の際も、何個もくっついた鍵の束を貸し出して作業してもらいます。)

 ですから、もし自分の部屋の鍵をなくしてしまった場合、鍵屋を呼んであけてもらうしか手はないのです。子供は親が帰ってくるまで待つしかないのです。管理人は「開けられません。悪いけど」と答えるしかないのです。よく、テレビの2時間サスペンスなどで、刑事が「部屋の中で何かあったに違いない。管理人に言って、開けてもらおう」というセリフがありますが、分譲マンションではこれはありえません。脚本家の方、もっと勉強してください。


(排水管清掃のときとか、消防設備点検の時とか、あまりにも留守宅が多いと、”マスターキーがあったらいいのになあ”と思うことはよくあります。)
 


怪しい奴


<後日談> 読者からの情報によると、最近のマンションでは、「全室の鍵のコピーを管理室に保管しているところもある」そうです。ただし、「この鍵は、金庫に入っており、金庫を開ける鍵は警備会社しか持っていない」とのことです。管理人が勝手に触ることは出来ないようになっています。「何か重大なことが起きたときに、警備会社の職員がやってきて、管理人や理事会役員立会いのもとに、その部屋をあける」といった状況を想定しているようです。


2003/5