管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

 ガス給湯器 寿命 (追記補正版)
 号数アップは要注意
 



2011/3 昨夜、「給湯器が壊れてお湯が出ない。お風呂に入れなくて困っている。なんとかして」というSOSが、管理会社の夜間緊急センターにあったそうです。そこで、久々に、給湯器の話題を書き直してみます。

一般的に、ガス給湯器の寿命は8年〜15年といわれているそうです。当マンションでも、すでにほとんどの部屋が取り替え、わずかに、2部屋だけ「奇跡的に」建設当初の最初の給湯器が稼動しています。中には、「2台目が壊れてしまった」と、3台目になっている部屋もあります。

 みなさん、給湯器が故障すると、まず「直す」ということを考えますが、「修理部品の保有期限は、生産終了後8年」ということで、メーカーのサービスセンターに「修理をお願いします」と電話をしても、古い給湯器の場合、症状をろくに聞くこともなく、一方的に「もう修理できません。新しいものに交換してください」と押し切られます。

 昨夜のSOSも、当社の宿直員は「給湯器は専有部分内のことなので、管理会社は対応できません。ご自分でお願いします。とりあえず、メーカーのサービスセンターに電話してはいかがですか?」と対応したそうです。
「そんなこと言われても、どこの会社の給湯器かもわからないし、サービスセンターの電話番号なんかどうやって調べればいいんですか? うちには電話帳もパソコンもないし」
たまたま、その夜の宿直員はわりと優秀な人だったので、いろいろと親切に調べて教えてあげたそうです。
 
 その夜は、もうどうしようもないので、お風呂はあきらめ、翌日、サービスセンターに電話をしたら、上記のように「交換しろ」と言われたそうです。

 そこで、管理人宛に、「どこに注文すれば安いのか教えて」と問い合わせが来るわけでして。みなさん、「急の出費」なので、「できればなるべく安くしたい」と考えています。

 公益企業○○ガスの系列店は、「有名」「一流企業」「安心感がある」「地元に店がある」という利点はあるものの、ガス器具メーカーで作ったものを、自社ブランドをつけて売っているため(転売みたいなもの)、かなり価格が高くなります。今の給湯器(追い焚き機能なしのシンプルタイプ)は16号というサイズが一般的ですが、工事費込みで16万円くらいします。(昔は13号という機種でしたが、これだと、一度に2ケ所でお湯を使うことができず不便なため、より大型の16号が、今は普及しています。最近はさらに大きな20号を入れる人も増えてます。 ※※※後述) 追い焚き機能のついたものだと、26万円くらいします。

 当マンションでは、時々、パロマという有名メーカーが直販の営業に来て、安くて好評のため、管理組合で推薦したこともありました。そのときは108,000円でした。最近はリンナイの系列店ががんばっており、98000円の価格で営業しています。ガス給湯器というのはサイズが同じなら、メーカーごとの差異はさほどないため、「安いほどいい」ということで、現在は、このリンナイを推薦・紹介しています。○○ガスの系列店と比較すると、同じ性能なのに、かなり価格が違います。

 新しい給湯器が設置されると「昔のタイプと比較して、ずいぶん小さくなったなあ」と、いつも思います。火力は大きくなっているのに、体積は半分くらいに小さくなっているのです。横幅も小さくなったため、昔の配管の幅にはあわず、変更措置が必要で、取り付け工事も苦労しています。

 ところで、これに限らない話ですが、工事をする業者の「技術力の低下」を痛感します。「こいつ、素人じゃねえの? 大丈夫か?」と感じます。

 先日来た工事屋さんは、こんなトラブルを起こしました。ある住民から、「管理人さん! ○○○号室(ここの部屋は給湯器取替え済み)のベランダに入って、給湯器を分解している人がいます。あの部屋は留守のはずなのにおかしいです。あやしいです。管理人さん見てきて」と言われ、行ってみました。「何をやってるんだ」と、その男に尋ねると、「あ〜すいません。実は×××号室の給湯器の交換に来たのですが、取り付け方がよくわからないので、交換済みの他の部屋の給湯器を見てみたいと思いまして」とのこと。なんか、情けない業者さんです。「それにしても、他人の部屋の給湯器を無断で分解するのは困ります」と、叱っておきました。

 また、この前やってきた業者は、「私は30年この仕事をしているベテラン。そのへんの職人と同じに見てもらっては困る」とか、自慢話を延々とする人で、「へえ、すごいんだね。本物の職人だね」とか、適当に話を合わせて、その人の作業風景を見ていたんですが、「はい、終わりました。じゃあ、お湯を出してみましょう」という段階になったら、「あれ! お湯が出ないね。なんでだろう?」。いろいろ調べたら、「あ、すいません。お湯と水の管を反対につけてしまいました」という、ヒザカックンになりそうな落ちでした。その後2時間かけて、工事をやり直していましたが、「口先番長前原もびっくりの、口先男だなあ。やっぱり、自分で自慢する奴にろくなものはいない」と痛感しました。それにしても、全体的に職人の技能低下がひどいです。

 なお、ガス給湯器くらいの小さな工事だと、「管理組合への届出」は不要ですが、工事車両の駐車場所の問題もあり、あらかじめ管理人に連絡していただけるとありがたいです。もちろん、他人のベランダに入るのは言語道断です。

 さて、話を戻しますが、上記のとおり、「8年を越えてくる」とぼちぼち壊れる給湯器が出てきます。管理組合としては、「個人の問題だから個別に勝手にやって」ではなく、組合として動いて、「10年目」とか「15年目」くらいに、希望者を募って、まとめて「給湯器の交換」をするといいと思います。こういうのは、「5軒集まると、2万円引き」とかになり、1軒1軒が個別に手配するよりも安価です。

 「うちのはまだまだ持つから大丈夫だ」という人がいますが、そういう人に限って、「あちゃ、急に壊れてしまった。え? 交換工事は1週間後じゃないとできない? それまでどうやって生活すればいいんだ? このへんには銭湯なんかないぞ。真冬なのに困った。お手上げだ」と慌てるものです。

 給湯器というのは、テレビなどと違って、「見なければいい」というものではない、生活必需品です。1日たりとて、「お湯なし」では暮らせません。「壊れてから、交換する」ではなく、「壊れる前に交換する」ことを強くお勧めします。

 ちなみに、最近の給湯器は「エコジョーズ」という省エネタイプがありますが、業者さんいわく、「そんなに劇的に省エネになるわけでじゃなくて、違いはわずか。値段も高いし、構造が複雑な分、壊れやすいし、俺は薦めない」と言ってました。また、追い炊き機能付きのタイプの中には、「フルオートタイプ」といって、湯船のお湯が少なくなると、自動的に足し湯する機能」がついたものがありますが、これも。「そこまで自動化しなくてもいいんじゃねえの? 値段も高いし。」と批判的でした。ご参考まで。

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2016/10 追記修正 (重要)
※※※ 「号数」の件

給湯器の「号数」というのは、「水を温める能力」を数値化したものです。
リンナイさんのHP参考にしてください

具体的に言うと、13号の給湯器では「お風呂の給湯1箇所でしか使えない」のですが「20号」だと、「お風呂にお湯を張りながら、台所でお湯で食器洗いができる」という感じです。(外気温に依存するものですから季節的要因が大きいのですが)


さて、私は上の文で「昔は13号だったが、今は、16号や20号に取り替える人が多い」ということを書きました。
これは
「大きくなっても価格がそんなに変わらない (大きいものを買う人が増えたため、むしろ、大きいほうが安かったりします)」
「機械の進歩により、外側の機械躯体がそのままの大きさでも、中身の性能を大きくすることができるようになった」
「号数が大きいほうが住民にとって有益」
という理由で、業者も、大きいものを薦めるようになったからです。

私も、「そういう理由なら大きい号数のほうがいいじゃん」って思ってたのですが、実は「いいことばかりじゃない」ってことが最近わかりまして。
おそらくネット検索では出てこない話ですが、「号数が大きくなると、一度に2箇所で使用できるようになるため、当然、同時刻に使用するお湯の量が増え、それは給湯器に接続する配水管(水とお湯)から排出される給湯管の流量が増えるということであり、それにより、管にかかる圧力などの負担が増え、
「漏水事故の可能性が高くなる」ということが言われているのです。

給湯器関係の配水管というのは、「熱湯が通過することもある」ため、痛みやすく、もともと、「漏水事故の可能性が高い」(当マンションでも漏水事故が発生するのは8割が給湯管です)のですが、ここに、「今までよりも流量が増える」という要因が加わると、ますます、漏水事故が発生しやすくなるのです。

つまり、「機械の号数をアップさせるのであれば、それに応じた配水管の強度を持たせないとだめ」ってことです。

実際の例として、管理会社主導で、管理組合が動いて、給湯器の「まとめて交換して安くしましょう」というキャンペーンをやった際に、業者に言われて、従来のものよりも大きな号数に変えたケースがあります。新しい給湯器は、「お風呂でシャワーを浴びながら、台所でもお湯が使えるようになった。わ〜い、うれしい」と好評でしたが、その後、新しい給湯器に変えた部屋を中心に、給湯器配水管の漏水事故が多発しました。
このため、そこの管理組合は、「管理会社が大きな号数がいいからと薦めるから大きな号数にしたのに、おかげで、漏水事故が増えて・・・ 管理会社の責任だ! 賠償しろ!」と怒られているそうです。

ですから、私の考えでは、「給湯器を交換する際は、それまでの機械と同じ号数にしましょう」と進言します。ご参考まで。
(小島よしおみたいに「そんなの関係ねえよ」と反論する人もいるかと思いますが、とにかく、そういう実例があるので、無視はできないと思います)

さて、実際に「大きな号数に変えてしまったよ。今からそんな話を聞かされても困るよ〜」という人は、こうしてください。
せっかく大きな号数にしたのに申し訳ないですが。
「一度に2箇所でお湯を使うのはやめましょう」
「お湯じゃなくて、水を使う際にも、お湯のほうの給湯管から水を出す人がいますが、それはやめましょう」(給湯管の負担を減らすため。レバー方式で温度を変える水道栓の場合、知らないうちに、お湯のほうからも水が出ていることがあるのです)


漏水事故を防ぐため、皆さん、上記のことを参考にしてください。



2003/3初版  2011/3 追記して書き直し
 2016/10 再度追記