管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

 高齢者にとっての電球交換は危険作業です
いい脚立が必要です
 



2013/11記

 以前、高齢者夫妻の部屋で、「旦那さんがシーリングライトの蛍光灯を交換しようと椅子の上に乗って作業をしていたところ、バランスを崩して転倒し、大腿骨骨折の重傷を負い、そのまま入院。高齢ということもあり、そのまま寝たきり、そして、2年後、そのまま死んでしまった」という事例がありました。

 この件を聞いて、それまでは、「自室内の電球や蛍光灯の交換は、管理人の仕事ではない」と断っていたのですが、断ったことで、それが「死」につながっては困るので、会社にはナイショですが、頼まれると、小さな声で「しょうがないな。やってあげますよ」と請け負うようになりました。
 管理室には、立派な脚立がありますから、住民が不安定な椅子に乗って作業するよりも安全です。

 また、ネット上では、こんなブログ記事もありました。けっこう、切実な問題なんです。

 昔の室内照明というと、「ペンダント型」という、天井からぶら下がっているものが多く、

これだと、ちょっと背伸びすれば蛍光灯に手が届いたのですが、今は、オシャレな「シーリングライト」が主流です。

これは、かなり高い場所にありますから、椅子や脚立がないと交換作業ができません。それに、このシーリングライトは、蓋部分を外すのが意外と難しいのです。「ボタンひとつ、ワンプッシュで外れるもの」「ボタンふたつで外れるもの」「ネジ式になっていて、反時計まわりに回転すれば外れるもの」「ちょっと回転してから、ボタンを押して外すもの」・・・・、種類がいっぱいあります。(バリアフリーのことを考えれば、方式は統一して欲しかったなあ。電機メーカーの配慮が足りません)
 この種類が、外見からはわかりにくく、購入時の「取り扱い説明書」をなくしてしまうと、ああだこうだ、といろんな方法を試しながら外さないといけないわけで、時間も手間もかかります。

 ところで、とりあえず皆さんが使おうとする、「椅子」というのはいろいろあって、一番危険なのが、事務机に使う椅子。

 これは、回転するので、本当に危ないです。足先にキャスターがついているものはさらに危険です。絶対に上に乗ってはいけません。もしくは、別の人が下で押さえないといけません。

 それから、ソファーのような座面がフカフカのもの。これも、上に乗った際に、足元が固定されないため危険です。

 そういうわけで、業務用とはいいませんが、家庭用の、いい脚立が売られているので、それを買っておくべきだと思います。

 

こんなやつですね。写真の製品は、手をつかまる「取っ手」のようなものもあり、安全に配慮した良い製品だと思います。

高齢の親と離れ離れになっている子供さんは、ぜひ、里帰りした際に、親に、こういうものを買ってあげてください。できれば、いっしょにホームセンターにでも行って実際に、上に乗ってみて、「しっかりして安定している。これならOKだ」という品物を買ってください。

 ところで、自治体によっては、こういう「高齢者のちょっとした困りごと」に対して、「福祉サービスの一環」として対応している場合もありますから、ぜひ、調べておくことをお勧めします。NPOとか、地域のボランティアグループとか、シルバー人材センターとか、そういう組織と自治体が連携して、サービスを提供している場合があります。
 当地域でも、「1回1000円」で、電球交換をやってくれる制度があるらしいです。でも、高齢者にとっては、1000円も貴重なお金です。(3000円のカツカレーを平気で食べられる高級政治家の皆さんには理解できないでしょうが)
 1000円をケチって、「無料で済む、管理人」を頼ってくるのです。まあ、私も慣れて来て、そういう要請が来たら、すぐに、脚立の足先に軍手をはかせて(管理室の脚立はふだんは屋外で使用しているので足先が汚れている。汚れないようにと、床を傷つけないための多少のクッション効果を期待して、軍手を足に履かせるといいのです)、マスクと、花粉用メガネをして現場に行きます。(交換の際に、ものすごいホコリが落ちてくることがあるため) 電球が切れた場合は当然暗いので懐中電灯も必携です。
 そして、これを請け負う際は、安易には請け負いません。「こういう作業をするのは管理会社として当然だ」と誤解されては困るからです。さんざん、「専有部分の中のことは管理委託契約の範囲外だ」ということを説明してから行きます。

 というわけで、若い人には、なんのこともない「電球交換」が、高齢者にとっては、「一大作業」「大冒険」であるということをご理解下さい。すでに、高齢者にお足を踏み込んでいる私にとっても、「大変だなあ」と思ってますから。(へんに腕の筋を伸ばして、その後一週間ずっと痛かった、なんてこともあります)

※照明器具ごと、LEDのものに交換してしまえば、交換頻度も激減して、不幸な事故も起きなくなると思います。家庭内の照明のLED化に、助成金とか行政が出して欲しいなあ。高齢者家庭こそ、LED。