管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 広報誌の配布のお仕事 



大失敗しました。

 市や県からなどの広報誌。いろいろなものがありますが、普通は地元の町内会を通じて各マンションに配布されます。このマンションでも、毎月1日に、戸数分の広報誌が町内会役員さんからドスンとまとめて配達されます。それを、当マンション管理組合の「町内会担当役員」2名が、各部屋の郵便ポストに投函していました。

 私がここに赴任し、研修を終え、一人立ちした翌日、「市の広報」が町内会から配達されました。早速、「町内会担当役員」に連絡して、その役員さんが各戸に配布を始めたのですが、本当は2名なのに、1名しか来ず、かつ、その1名の役員さんが少し体が不自由な方なので、なんか大変そうで、その様子を見ていて、気の毒に思ってしまいました。

 その時私はちょうど暇だったこともあり、「○○さん、私がかわりに配っておきましょうか? 私は今手があいてますから」と言ってしまいました。着任早々ということもあり、「心象をよくしておこう」、というエエカッコシイでした。市の広報はコンパクトなA4サイズで、郵便ポストに入れるのも楽で、簡単に配布は終わりました。しばらくすると、○山さんが管理人室に現れ、「管理人さん、すまないわね。ほんと助かったわ」と丁寧にお礼の言葉をいただきました。ここまではいいのですが・・・

 あとからわかったのですが、実は、この地域の広報というのは今回配布した「市の広報」だけではなく、それ以外にも、「議会関係」とか「福祉関係」とか、多種多様なものがあって、それを全部配布するのは、かなりの重労働なのです。サイズも非常に大きいものがあって、このマンションの郵便ポスト(今時のマンションに設置されている広口ではなく、投入口がとても小さい)に入れるには、きちんと四つ折にしなければならなかったりするのです。すごい時は、千部くらいやらないといけない時もあり、何種類も四つ折にするのは、すごい大変で指先が切れそうです。特に冬場は。

 一度やってしまうと、「これからはずっと管理人がやってくれるんだ」と○○さんは思ってしまったようです。次からは、「管理人さん、お願いね」の一言で、すべての広報誌の配布が、管理人の仕事になってしまいました。もちろん、管理委託契約の中には入っていません。(こんな細かいことを記載する契約もありませんが) 

 ひどい時になると、全種類を折って配布するのに3時間以上かかることもあります。今までは役員2名でやっていたのを私一人でやるのですから、楽ではありません。それに、数が間違って配達されていることが非常に多く、そのたびに町内会の役員さんに電話して、不足分を町内会館に取りにいったりします。大変な仕事を引き受けてしまいました。
 こんな苦労をして配布しても、配布しているそばから、その広報を捨ててしまう住民も大勢います。まったく1行も読まずに捨てるのです。市の広報の中身は、「ゴミの出し方が変わりました」など、生活上重要な案件も多いのですが、まったく読みません。(道理でゴミだしのマナーが最低なわけだ) 配布した翌日、郵便ポスト前に置いてある「不要チラシ専用ゴミ箱」には、私が配った広報が山のように捨てられています。悲しい。

 それに、1年目は「あんなに大変だった広報誌配布を管理人さんが代わってくれた。本当にありがとう」という声があったのに、2年目以降の役員さんは、「広報誌は管理人が配布する」と引継ぎを受けているためか、それが当然だと思っていて、なんらねぎらいの言葉もありません。ずいぶん楽になったはずなんだけどなあ。

 エエカッコシイの一言が命取りになる顕著な例でした。反省しきりです。「管理委託契約にないことをやってはいけない」という、教訓になる出来事でした。
 





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