管理人は超つらいよ   
マンション管理最前線

けっこうあるよ 漏水事故 対応は大変です

2003記


 築15年以上たつと、どうしても漏水事故が発生します。このマンションも20年選手ですから当然です。水道管の内部洗浄は5年前に行われたそうですが、水道管自体を交換しているわけではありません。かなり老朽化しているはずです。私が赴任して以来にも、9件ほどの漏水事故が起きています。漏水は、被害が大きいと大問題ですし、修理費のこともあり、できれば避けたいです。(管理人をやるなら、、新しいマンションのほうがいいですよ。古くなるほど苦労します。)


1.「風呂場からの漏水」

  風呂場には水とお湯の2つの蛇口があります。その蛇口と水管と湯管をつなぐ部分から、よく漏水します。当マンションでは、このケースが一番多いようです。このケース、どうやって漏水に気づくかがいろいろです。普通、漏水というと、直下の階の天井にシミが発生するものですが、こういう場合以外にも、意外な見つけ方もあります。

 A:毎月ガスメータを検診するガス会社の方から、「1○○号室のメーターボックスが濡れていておかしいんですが」との連絡あり。見てみると確かにビショビショに濡れています。梅雨時なんで湿りがちですが、ちょっとおかしい。水道メーターもあり、水道管も通っている場所ですが、どうやらそこではない様子。懐中電灯で中をくまなく調べてみると、どうやら、メーターボックスの天井からポタポタ。ボックス内には、最上階から1階まで縦に通っている排水管があります。どうやらそこから漏れているようです。そこで、ひとつ上の階のボックスも調べてみました。そうすると、そこの階も濡れています。こうやって上へ上へいくと、結局5階までたどりつきました。5階のボックスでは、床面のどこかから水が流れ出ています。
 そこで、5階の部屋に入り、風呂場に行って、ユニットバスの点検口を開いて調べてみると、ビンゴ! 床下がビチョビチョです。念のために階下(4F)の部屋の天井を調べてみると、そこは大丈夫。まあ、よかった。メーターボックス内だけの漏水でした。それにしても、5Fの漏水が1Fまで落ちるとは驚きでした。

 B:集会室の天井にシミを発見しました。水道業者さんに来て見てもらうと、集会室の天井には2〜10Fの排水の縦管が通っていて、シミが発生しているのは、そ排水管が直角に曲がるエルボー部分のようです。水道管のエルボーというのはよく漏水が起きます。後日、この排水管を利用している部屋全室に連絡し、水道の使用を中止し、天井を壊して、この部分を分解してみましたが、なんら異常はなし。原因はここではありませんでした。どうやら、この排水管の周囲から漏れてきている様子。ただし、この排水管が通っている部分は、前述のメーターボックスと異なり、部屋の中心にあり、壁を壊さないと点検できません。何階から漏れているかもわかりません。頭を抱えて悩んでいる時、この排水管が通っている4階の部屋の奥さんから、「実は、うちの部屋の廊下にカビが目立つんだけど」という話。「そこだ!」 早速調べてみると、この部屋の風呂場からの漏水でした。継ぎ手部分を簡単に修理しておしまいです。

 このケース、床下の管が漏水したわけではなく、風呂場の内部(つまり専有部分)からの漏水のため、工事代金は個人負担となります。ご本人にとっては、災難でした。ただし、他人に与えた損害に関しては、組合で加入している「個人損害賠償責任」を利用できます。



2.「トイレからの漏水」

 原因は建築当時の欠陥工事のせいです。修理をした水道屋さんから聞いたところ、「このマンション、水道管(上水道)とトイレのタンクをつなぐ部分に、普通なら使わないプラスチックを使っている。本当は金属製でなくてはいけないのに。プラスティックだと何かの拍子で簡単に裂け目ができて、漏水する」というお話。つまり、見えない部分に、施工の楽なプラスチックを使っていたわけです。このケースはトイレの壁の下部分にカビが生えたり、水が染み出してきて、比較的簡単に発見されます。修理も壁の一部を壊すことになりますが、プラティック部品を本来の金属部品に変えれば完了です。
 これは、共用部分であるパイプスペースからの漏水であるため、管理組合の負担となります。本来なら建設業者の責任なのですが、瑕疵担保責任期間中に発生することはほとんどありませんから、手抜きのヤリ得です。やはり、保証は20年以上は必要です。


3.「湯沸かし器からの漏水」

 わりと新しい湯沸かし器は、非常にコンパクトに出来ており、普通は玄関側のメーターボックスの上部分に配置されています。しかし、このマンションのように古いところでは、まだ、湯沸かし器本体がかなり大きかったために、玄関側に置けずに、ベランダに設置してあることが多いのです。といっても、水道管というのは玄関に近いところに配管されていますから、、そこから水道管が床を通ってベランダに行き、熱いお湯がそこから戻ってきて台所や風呂場・洗面所に行くことになります。つまり床下には往復2本の水道管が通っているのです。そして、数多くの直角に曲がる部分(エルボー)があります。そういうところから漏水します。そして、たいていは階下の天井が濡れて発覚します。

 この場合、どこのエルボから漏れているかは簡単に推測できません。水と言うのはすぐ真下に染み落ちるわけではないのです。長年の勘に頼ることになります。修理工事は床をはがさないとできません。畳をはがしたり、フローリングをはがしたり、もちろん家具も移動してもらいます。すぐに見つかればいいですが、なかなか発見できないこともあります。そうなると工事は何日もかかり、床ははがされ続け、生活にも支障が出ます。特にフローリングの場合、一部を壊してしまうと、あとでその床全部のフローリングを取り替えることにもなります。まったく同じ種類のフローリング材が手に入らず、一部分だけ替えるとそこが目立ってしまうからです。(まったく同じものがあっても、経年変化の色落ち具合まで、同じに再現できるわけではありません。)
 かなり大掛かりな工事になって、終了まで7日間かかったこともあります。当然、階下の天井の壁紙も替えなければなりません。

 費用は、共用部分である床下からの漏水であるため、管理組合の負担となります。(このマンションでは、居室の床下でも”共用”ということにしています。)

 例外的なのですが、ひとつ紹介しておきたい事例があります。床をほとんどはがしてすべてのエルボーを点検しても発見できないことがありました。最終的には、お湯の管の直線部分からの漏水でした。普通はありえないことです。そして、穴があいた原因とは?
 リビングに敷いてあるカーペットの下には周辺に薄い角材が釘で打ち付けられているのですが、普通2cm程度の釘を使うのに、1ケ所だけ、10cmくらいある長い釘が使われていました。その釘がなんと床下の水道管にまで達していて、串刺しにしていたのです。今までは、釘で蓋をしてあったため漏れませんでしたが、長年たって錆が生じて、釘の周囲に空間が生じて漏れたのでした。まったく意味のない長い釘を打ち込み、こともあろうに水道管を刺してしまう。お粗末な建設工事、極まりないです。(これも管理組合負担で修理しました)


<水道屋さんから一言>

 「マンション工事業者ってのはよ。ほんと頭くるぜ。見えないところだと、ものすごい手抜きしやがる。この間、水道工事のために床引っぺがしたら、セメントの袋があったぜ。タバコの吸殻がいっぱい入った空き缶まであったぜ。ふざけんなよ。図面もいい加減で、図面どおりに水道管が敷設されてることなんかほとんどないぜ。結局あちこち掘り起こさないと工事できねえんだ。水道屋をバカにすんじゃんえよ。撃ち殺してやりたいよ」