管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 複雑な建物構造 


こちらでございます


 このマンションは、東棟と西棟に分かれていますが、外からパッと正面だけを見ると、1つの建物に見えるため、初めて来訪する人がとまどうことがあります。(管理棟が間に入っています)
 エレベーターもそれぞれ「東棟用」と「西棟用」が独立しているため、つながっているのは1〜2階だけで、それより上の階は、東棟から西棟に行き来することはできません。このため、「あれ? ○○○号室がない?」と慌てる来訪者がいます。加えて、部屋の大きさがまちまちなことと、上の階になると細くなる構造のため、「部屋番号の末尾が1〜10だと東。11〜20が西」のように番号で単純に「東か西か?」区別することができません。

 玄関ホール内に、建物内部の立派な見取り図もあるのですが、非常に目立たない場所に設置してあるため、皆さん、その図の存在すら気がつきません。建物を設計した人間は、こういうことまで考えずに、いい加減に作るんだなあ、とつくづく感じます。

 このため、私が赴任した時に、デジカメとパソコンで、詳細な手製の見取り図を作成し、管理室の横に貼ってあります。また、各エレベーターにも「ここは東棟専用です。西棟の部屋には行けません」といった説明を貼ってあります。これを見れば、間違うことはありません。しかし、「見れば」であって、見なければたいてい迷います。

 礼儀正しい来訪者は、初訪問の時は、「○○○号室のBさんのところに訪問するイナホ銀行の者です。失礼します」などと挨拶をしてくれます。そうしてもらえば、「Bさんの部屋は西棟ですから、その正面のエレベーターでなく、反対側にあるエレベーターを使用して下さい。エレベーターを降りたら右側のすぐの部屋ですよ」と詳しく教えてあげます。でも、そういう挨拶をする人はほとんどいません。たいていは、管理人を無視して素通りです。そして3割以上の確率で、迷い、それから、「あの〜管理人さん、○○○号室ってどうやっていけばいいの?」と聞いてきます。「この図を見てね」と教えてあげます。
 このマンションはオートロックではないため、自由に出入りできます。このため、「無断立ち入り禁止。来訪者は管理室に断ってから・・・」と注意書きをしてありますが、たいてい無視して、何も言わずに入ってきます。集合ポストの前でうろうろしていれば、こちらも声をかけられますが、すばやく通り過ぎられると、声もかけられません。そうやって、また一人迷子が発生します。

 まあ、時間に余裕のある人ならいいのですが、困るのは救急車とか警察などのように一刻を争うものです。こういう人たちでも管理人を無視する人が多いのです。私の目の前を、救急隊員が3人走りすぎていきます。「ちょっと待って、どこ行くの」と声をかけても、管理人を無視して、すでに一番近いエレベーターに入っていきます。そして、案の定、2〜3分してから、「すいません、管理人さん。△△△号室はどこにあるの?」と慌てて聞いてきます。なんと、無駄なことか。最初から聞けばいいのに。管理人を無視するからこういうことになるんです。あなたがたが迷うのは勝手だけど、急病人が困るんだよ。管理室の前を通り過ぎるんだから、管理人がいれば、声をかけなきゃ。簡単なことなのに。部屋に応じて、「どこに救急車を置いたら、一番近いか」なども指示してあげるのに。(公務員ほど、管理人をバカにするんだよなあ)


 バブル期に設計されたマンションの中には、設計者が凝った設計をしたために、内部構造が複雑で住み難いものが多いそうです。見せ掛けのかっこよさしか考えないからでしょう。(著名な建築家、丹下健三の建造物はほとんど100%の確率で雨漏りがするそうです。この業界では有名な話) マンションは豆腐のような単純な形が一番です。大規模修繕時も楽だし。
 
 


2003/11

外見は1棟だけど、実は2棟+1