管理人はつらいよ
マンション管理最前線
お葬式 |
マンションは生活の場ですから、「子供が生まれた」「○○さんがお嫁さんをもらった」というおめでたいこともあれば、「お亡くなりになりました」という悲しい出来事もあります。
実は、マンションの中の一部のエレベーターには、奥の壁の下半分にドアがあるのをご存知でしょうか? これは、物置ではありませんし、緊急用脱出口ではありません。実は、これは、搬送用のベッドや棺をエレベーターに積み込む際に、横のままのせられるよう、奥行きが広がるようにするために設けられているのです。実際に使用するのは、救急車出動時や、どなたかがなくなって、そのご遺体を運ぶ際などです。
当マンションは比較的大きなマンションなので集会室もけっこう広いです。というわけで、使用細則では「葬儀会場」としても使用できることになっています。しかし、現実には建設後一度もそういう用途では使われていません。今は、都会では葬儀屋に任せて、○○セレモニーホールなどで葬儀をするのが普通で、マンションの集会室など使う人はいないのでしょう。
と思っていたら、別のマンションで、先日、集会室を使用した葬儀が行なわれたそうです。なんでも、遺族が大変貧乏でお金がまったくないので、なんとか安くしたいということで、利用料1日1000円の集会室を使うことになったそうです。小泉バカ首相のおかげで、貧乏人はますます貧乏になっていますから、これからこういうケースが増えるかもしれません。年金も半減ですから。
「身内だけでひっそりやるから、たいして広くなくてもいい。質素でいい」ということです。といっても、タイミングが悪すぎました。1週間後に管理組合の定期総会が集会室で行なわれるために、あらかじめ会場のセッティングを済ませていたからです。そのため、管理人が仕方なく、総会用のセッティングを全部撤収しました。一人でやるのは大変な作業だったそうです。加えて、葬儀用に「湯飲みは十分あるか?」「湯沸かし器はきちんと動作するか?」などといった準備もしました。
「身内だけですから」という話だったので、たいしたことはしていなかったのですが、葬儀業者が間に入ってきたら、「会社の部長さんをしていた人が、身内だけの葬儀だなんてだめですよ・・・・」とかいい含められたらしく、当初の予定とは風向きが変わり、大掛かりなものに仕掛けられてしまったそうです。(むこうも商売ですから) 管理人もその葬儀業者に呼ばれ、「車がたくさん来るが駐車場所はあるか?」「送迎用バスはどこにつければいいか?」「掲示物はどこに貼ればいいか」「告別式が始まる前にはゴミ収集は終わるか?」・・・・などと質問攻めに合い、そして、いろいろな準備・運営作業を手伝わされてしまったらしいです。○○ホールでの葬儀なら、葬儀業者も慣れていてテキパキできるでしょうが、何かと使い勝手の悪い、集会室での葬儀だとやりにくそうで、そのツケが管理人にも来てしまったわけです。
結局、通夜前日、通夜当日、告別式当日、計3日間、この葬儀のためにテンテコマイだったそうで、その管理人さんは「お礼に3万円くらいもらいたかったくらいだ」と嘆いていました。葬式まんじゅうと1合のお酒1本じゃ、たしかにかわいそうです。
こんな話を聞いたもんですから、「うちのマンションでは誰も死なないでくれ」「集会室で葬儀を行ないたいなどと絶対に言わないでくれ」と私も思った次第です。
余談ですが、マンション居住者がなくなった場合に、「香典をいくら出すのか」「理事長が葬儀に出席するのかどうか」など、組合としてあらかじめ決めておいたほうがいいです。基準(&きちんとした記録)がないと、その時の理事会の気まぐれによって、「1万円出した」「2万円出した」「出さなかった」などというバラバラな状態になり、あとで、「なんであそこの家の時のほうが香典が高いんだ!」などと揉めることになります。当マンションでも、初期にそういったトラブルがあったそうで、現在は、一律いくらというのを便宜上定めています。(ただし、口頭での伝承だけで、書面にはしていない) 親切な管理会社なら、建設後1年目の段階で、「決めておきましょう」と提案してくれますが、そういうところは珍しいようです。葬式は急ですから、前もって決めておかないと混乱します。
ところで、 世帯主が死亡した場合は、「組合員の名前が変わる(いろいろな名簿も全部作り変え)」「管理費の引き落とし口座が変わる」など、管理会社サイドとしても手間のかかる作業が発生します。
管理側からも「みなさん元気で長生きしてください」と思います。