管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

管理人に聞くべし



  春先は住民の出入りの多い季節です。出入りの前には当然、売買でも賃貸でも、マンションの部屋を見学に来る人がいます。たいていは不動産屋に案内されてきますが、不動産屋のほとんどは礼儀知らずですから、管理人に断りも無く勝手に入って、勝手に見て帰ります。玄関には「関係者以外立入禁止。必ず管理人室に立ち寄って断ってから入って下さい。不動産見学も同様」と注意書きがありますが、無視する奴ばかりです。(夜間と休日は管理人が不在だから仕方ないですが)

 今の不動産屋は一部を除き、「ただ、売ればいい、貸せばいい、早く処理したい」という連中ですから、前もって、このマンションの管理体制がどうなっているとか、詳しい立地条件とか、最近の犯罪の状況とか、生活環境の実態とか、そういうことを調べるスタッフはいません。そういうことに時間と手間をかけないのです。不況の影響です。

 ですから、ろくな説明を受けずに入居してきた人は、さまざまなトラブルの元になります。売買では重要事項説明が行なわれているはずですが、説明していないのか、説明をきちんと聞いていないのか、いずれにしても理解していない新住民がいます。「ペットって、自由に飼えるんじゃないの? うちは3匹いるんだけど、2匹までなんて知らなかった」「自転車置き場は1台分しかないの?」「来客用の駐車場ないの?」「ゴミの分別、そんなに厳しいの?」・・・・・いろいろです。

 事前に不動産業者が管理人室に寄って、「○○号室を扱います、△不動産です。お世話になります。よろしく御願いします」と挨拶してくれれば、そのときに、最新の「新居住者の方へ」という特製パンフレット(管理人作成)を渡して詳しく説明します。あとでトラブルになるより、前もって時間をかけて説明して認識してもらったほうがいいからです。このパンフはそのまま新入居者に渡りますから、これを読んでくれれば、トラブル発生率は下がります。しかし、不動産屋からしか説明をうけていない(当然いい加減な説明)場合は、何の予備知識もないままに引っ越してきますから、引越し当日から問題が発生します。(引越しの予告挨拶も無しに来るから、トラックのとめる場所だけでも揉めます)

 私が不思議に思うのは、賃貸はさほどでもないにしろ、売買の場合は、なんで、当事者が、最も情報を所有する管理人に、そのマンションのことを聞きに来ないのか? ということです。過去に、「詳しい話を教えてください」と管理員室に尋ねてきた人は2人しかいません。その方はいずれも入居しましたが、今でもマナーの優良な住民です。不動産屋の営業マンなんか、現場のことを良く知っているはずはないのです。一番良く知っていて、聞けば教えてくれる人は管理人です。もちろん、管理人の中には口下手な人や、話が嫌いな人、説明が下手な人、いろいろいるとは思いますが、少なくとも不動産屋よりはそのマンションのことを知っているでしょう。
 管理人は住民のプライバシーに関することは話せませんから、「隣の部屋の人はどういう人ですか?」みたいな質問は困るんですが、その他のことは答えられます。「暴走族の騒音とかどうですか?」「消防訓練はきちんと毎年やってますか?」「犯罪の発生率はどうですか?」「古いマンションですが、漏水事故とかないですか?」「管理組合や自治会の活動は盛んですか?」「自転車の他原付が1台あるんですか、なんとかおけないでしょうか?」など、詳しいことを回答できます。もちろん無料で。

 こんな便利な存在があるのに、なぜ利用しないのか? 不思議でしょうがないです。ただ、不動産屋サイドとしたら、「このマンション周辺は実は犯罪発生率が非常に高い」「隣の部屋で自殺があった」みたいな悪条件の情報を伝えられては困る、と思って、わざと管理人に接触させないようにしている気配は感じます。

 これから、マンションを買おうと思う人、借りようと思う人へ。”詳しい話は管理人に聞け”、です。
 管理人サイドとしても、新しく入る人の顔を知っているほうがいいですから、こういったことは歓迎します。

(でも、実際は何の挨拶もなく、いきなり引っ越してくる人がいるんだよね。困った世の中だ)
 

<追記>
 新しい転入住民が来ました。会うのは初めてです。いきなり質問を受けました。「このあたりって、女性を狙った犯罪とか多いですか?」 こんなこといきなり聞いてどうするんでしょうか? このマンションを買うか買わないか迷っている時期の質問ならちゃんと正直に答えます。なにしろ、犯罪多発地帯ですから、ある程度承知の上で引っ越してきてもらわないと困りますんで。それに、部屋が売れようが売れまいが、私たち管理人には関係ないので、損得無しに正確な情報をお伝えします。

 でも、すでに買っちゃって、契約して、引っ越してきたわけでしょう。「危険です」と聞いてどうするんでしょうか? 「やめた」と言うんでしょうか? 以前、別のケース(賃貸部屋)で、正直に答えたら、その人、賃貸契約を急に破棄して、そのあと、扱いの不動産屋から、「なんでそんなこというんだ! 営業妨害だ!」とこっぴどく怒られたことがあります。

 今回も、「こんなご時世ですから、どこにいってもその種の犯罪は多いですよ」と前置きしてから、正直に実情をお話しました。・・・・・・ 最後は、「管理人さん。防犯ブザーってどこに売ってます」と聞かれました。


情報が大事


2004/4 2004/11追記