管理人はつらいよ
マンション管理最前線
経験が大切 |
マンション管理において最も大事なこと。それは「経験」だと思われます。「経験をきちんと記録に残しておくこと」「記録に残った経験を次回に生かすこと」、これがポイントです。
この点において、「組合役員の任期が1年で、1年ごとに総入れ替えしてしまう。自分の任期が終わったら、あとは知らん振り。”早く1年が過ぎればいいなあ”と思っているだけなので、自分たちのやったことの記録もろくろく残していない。」、そんな組合はだめです。そういう組合は、当然のごとく「監事の仕事の内容とは・・・」といったマニュアル類もないはずです。
また、「担当フロントをちょくちょく変える。変えるときに引継ぎをきちんとしていない。フロントが記録をきちんと残していない。会社としても、各部署で培われた貴重な経験を、全部署で活用できるような体制をとっていない」、そんな管理会社もダメです。マンション住民からすると、「大手というのは、豊富な経験を生かした素晴らしい管理をしてくれるだろう」と希望的観測を持ちがちですが、この業界は、実はそんなあまいものじゃありません。「ISO9001シリーズ取得!」「管理実績○○○棟!」などと、えらそうな広告を出しているところでも、意外と「会社として、経験を生かす体制ができていない」もので、「これじゃ、零細管理会社となんら変わらないじゃないか?」と落胆するケースもよくあります。逆に零細管理会社のほうが、担当者が替わりにくいので、良い場合もあります。
以上の点は管理人にも同様です。やはり、長年勤務し豊富な経験を持った管理人のほうがいいです。しかし、管理員の報酬の中には「経験給」という概念がありません。昇給もゼロです。これでは、経験を生かす体制にはなっていません。
例えば、定期的(年に1回)に実施される「雑排水管清掃」。これは全世帯で実施しないといけない作業です。排水管は縦方向にみんなつながっていますから、どこかひとつの部屋で詰まりがあると、それが他の部屋にも影響します。ですから、全室で実施できるように準備しておく必要があります。過去の記録をきちんとつけておいて、「この部屋は要注意」という住民には、普通の「作業実施予告」配布物だけではなく、直接電話をしたり、会いに行ったりして、「絶対に在室して下さいね」と念を押しておきます。実施業者の作業車を置く場所も確保しなければなりません。過去の作業状況の写真を見て、場所を確認し、それを確保する準備をしておきます。
植栽剪定なども、大きな高所作業車なども入ってきて危険なため、事前の周到な準備が必要です。こういったことは、管理の仕事の中で枚挙に暇がありません。過去の記録をきちんと残し、その経験を今後に生かすことが大事なのです。特に危険を伴うことは、住民のケガや事故につながりますから、経験がものをいいます。