管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 転入 転出 


 

 春というと、転勤等が多く、引越しの季節でもあります。今年の春は、賃貸部屋を中心に、ずいぶんたくさんの引越しがありました。そして、困ったことにそれらすべてが「事前連絡無しに勝手に出て行った」「いきなり引っ越してきた」ものでした。

 連絡無しに出て行くというのは本当に困ります。管理人に伝えないということは、隣室にも伝えません。隣の人は「最近あの人顔を見ないなあ」とか「なんか静かだなあ」と思うだけです。こういう非常識な人というのは、たいていもともと玄関やポストの表札に名前を書きませんから、転出時に表札を外すこともありません。

 一番困るのは、新聞・水道・電気・NHK・・・・・といった公共料金の類の手続きをしないで出て行ってしまうパターンです。新聞が新聞入れに差込みきれず、窓枠にまであふれていたりします。(新聞屋も気がつかないのがおかしい) 電気ガス水道などは、検針員が「おかしいな、メーターがほとんどまわっていない」と気づいて、「ねえ、管理人さん、○○号室どうかしたの?」と言ってきて、初めて気がつくこともあります。「この人今どこにいるのかなあ。困るんだよね手続きしてもらわないと。連絡先知ってます?」と聞かれても、当然行き先など知りません。連絡無しに出て行ったわけですから。
 逆のパターンで、巡回等で見回っているときに、「なんかこの部屋は変だなあ」と思った時に、まず電気メーターを見て、「まったく動いていないなあ」(住んでいれば、冷蔵庫が動いているし、待機電力を消費する家電製品も多いため、まったく動かないということはありえない)と思い、そんな時はメーターボックス(ここは共用部分なんで不法侵入ではありません、念のため)をあけて調べます。そこに、停止の紙がぶらさがっているのを発見して、「転居したんだ」と気づくこともあります。

 ここのところ、賃貸部屋の家賃の値下がり傾向が続いており、以前のままの家賃設定だと新しい人がなかなか入らないことが多いです。当マンションでも、3ケ月以上空いたままの賃貸部屋が3室あります。今までは、夜逃げ同然でいなくなっても、すぐに次の人が入ってきたため、「あれ、あの人いつの間にかいなくなってたんだ」とすぐにわかったんですが、新しい人がなかなか来ないと、出て行った人のことに気がつくのも遅れがちです。

 「出て行く時は、郵便ポストの鍵を外して出て行くんじゃないの? そうすれば管理人さんもすぐにわかるんじゃないの?」と思われる読者の方もいるでしょう。たしかにそれは正しい意見ですが、当マンションではルーズというかおおらかというか、郵便ポストに鍵をつけている人は6割程度で、残り4割は鍵なしです。犯罪多発地帯なのに、無神経だと思います。それに、本人は鍵を外していっても、不動産業者が鍵をすぐにつけていくことがあります。これは、部屋の鍵を郵便ポスト内に入れておいて、部屋の下見に来た別の不動産業者が簡単に部屋を開けられるようにするためです。この場合、ポストの鍵は数字鍵が使われます。そんなわけで、ポスト鍵だけではわからないのです。

 それにしても、賃貸にしろ売買にしろ、必ず不動産屋がからんでいるのに、なぜ不動産屋はきちんと当方に連絡してくれないんでしょうか? ほんと頭にきます。売買の場合は「所有権の移転」申請書などの書類のため、必ず1回は接触せざるをえないのですが、賃貸だと、まったく連絡しない会社もあります。「誰が住んでいるのかわからないなんて、管理がいい加減だ」と叱られるのはこちらです。不動産屋には常識ある業務をしてもらいたいです。「誰が住もうが、おまえには関係ないだろ!」と言い切る不動産屋が実在するのは驚きです。(賃貸だって、第三者使用届というのが必要なんだけど)

 「本人が勝手に出て行く」「不動産屋は何の連絡もしない」となると、突然リフォーム業者がやってきて、「おいおいあんたいったい何やってるんだ? 工事の話なんか聞いてないよ。それにここは車とめられないぞ。おいおい、通路にこんな資材を置いたらだめだよ・・・」といったトラブルになって、初めて転出に気がつくこともあります。業者といっても下請けさんなんで、詳しい話はわからず、「元請業者の連絡先を聞く」「その業者から発注先の不動産屋の連絡先を聞く」「その不動産屋に連絡して、部屋がどうなったか聞く」といった、非常に面倒な作業をして、部屋の現況を調べることもあります。

 売買の場合は、届出書類だけでなく、管理費の口座振替手続きなどもあり、絶対に管理会社に届けてもらわなければ困ります。それなのに、何の連絡をしないで売買する住民&不動産屋がいて本当に困っています。この不動産屋、地元ではかなり有名な大手なのにこのざまです。まったく信用できません。また、売り手と買い手の業者が違うケース、買い手の業者がまた別の違う業者に紹介するケースもあり、複雑でややこしくなります。
 とにかく、部屋を見に来る不動産業や客、リフォーム工事の業者も、事前連絡がなければ、私にとっては「ただの不審者」ですので、警戒しなければなりません。ここはオートロックではないため、自由に出入りできますから、監視は難しいです。そのため、玄関ホールに、「不動産業者、下見客の方も必ず管理室に立ち寄って下さい」と大きく掲示してありますが、90%が無視です。客としても、「不審者が簡単に入れるマンション」「何の挨拶もしないでズケズケ入っていく不動産業者」に対して、何の不信感を持たないのでしょうか? 不思議です。

 先日あった最悪のケース・・・・事前連絡まったくなし。突然不動産業者がやってきて、「○○号室の売買の契約がたったいま成立しました。届出用紙を下さい。新しい人がいつ引っ越してくるかは私は知りません」とのたまいました。元の持ち主は知らぬ間に出て行っていました。おまけに、新入居者が、この日当日、これまた何の連絡もなしに3トン車2台を引きつれ引っ越してきました。引越屋もいい加減で、廊下に荷物を広げたり、エレベーターの内壁に養生しないで傷をつけたり、とさんざんでした。そして、こういういい加減な新入居者というのは、その後の書類の手続き、管理費引き落とし、公共料金の申し込み、などすべてにおいてトラブルを起こしました(申込まないのに電気など勝手に使っていた)。ひどい人です。責任ある不動産屋というのは、こういった手続きに関しても買主にアドバイスを与えて、きちんと処理してくれるものですが、だめな会社です。

 勝手に出て行かれると当然転居先もわからず、郵便はたいてい転居届が出ているので転送されますが、今はやりのメール便や宅配便は、どこに転送していいかわからなくて困ります。いい加減な新入居者は電話番号も教えてくれず、のちのち何かトラブルがあった時(たとえば、その部屋から漏水があって下の部屋の人が迷惑しているなど)にも連絡がとれずに困ることがあります。


 とにかく、転出・転入・部屋の売買くらい、ちゃんと連絡して欲しい!



2004/6


挨拶・連絡は必要です