管理人はつらいよ
マンション管理最前線
廊下の端の部分 |
普通、共用廊下は共用部分であり、私物を置くことはできません。しかし、実際にはさまざまな物が置かれています。ちなみに、ベランダや専用庭、ルーフバルコニーは、「専用使用が認められた共用部分」です。私物を置くのは構いませんが、「緊急時の避難行動に支障がないよう」「物が階下に落ちて迷惑をかけないよう」「強風等で飛ばされないよう」「虫が湧いて、他人に迷惑をかけないよう」・・・などなどいろいろなルール、マナー、一般常識があり、やはり、好き勝手に物を置くことはできません。 特にベランダは構造的に弱い部分のため、あまり重いものを置くと崩壊の危険性があります。小錦もベランダに立ってはいけません。
廊下のどんづまりに位置する部屋の場合、「その部屋の住民しか通らない」と考えがちです。そのため、「自分の部屋の前の廊下は自分の物」と思っている人が、かなりいます。そういった人は、私物を廊下上へバンバン置きます。
いろいろ調べてみると、こういった部屋を分譲する時(中古物件の仲介も含む)、不動産業者は、「この部屋は端っこですから、この廊下部分には物が置けますよ」と言うそうです。宅建資格持ってるなら、区分所有法や標準管理規約を知っているはずですが、無責任に違法行為を勧めるのは許せません。そして、それを鵜呑みにする無知な買主もペケです。「管理人さん、あなたはそういうけど、買うときには不動産屋はOKだって言ってたわよ」と反論されることが何回もあります。いい加減な不動産屋というのは本当に罪作りです。「管理人の敵」といっても過言ではありません。
そんなわけで、管理組合が”五月蝿くない””甘い”場合、いい気になって、なんでも置きまくります。特に雨が吹き込みにくい箇所ではひどくなります。自転車や三輪車や一輪車、植木、古新聞、傘(雨のあとは開いて乾かしています。風に飛ばされることがあり、危険です)というのが一般的ですが、すごい部屋だと、「信楽焼の狸の置物(身長1m30)」「自動車のタイヤ」「傘立て(傘単体でなくて、傘立て自体を置いてしまう)」「ベッド」「階段状のプランター」「脚立や鉄パイプ(この部屋の住民は工務店をやっているみたい)」「金魚の入った水槽」などを置いているケースもあります。もっとひどくなると、イナバの物置(10人乗ってもまだ大丈夫)を設置してしまう強者がいます。
何にも置かないマナー遵守住民の中でも、「翌朝出す予定のゴミ袋を、前夜のうちに廊下に出しておく」という人がいます。私個人としては、「それくらいいいんじゃないの?」と思いますが、「ゴミを出しておくなんて、美観上許せない」と怒る他住民もいるそうです。「ここは高級マンションなのよ。安アパートといっしょにしないで」とも言ってます。たしかに美観は大事です。非常に厳しい管理組合では、「生協の箱を置いてもダメ」「宅配牛乳の受け取り箱もダメ」というところもあるそうです。うらやましいですね。
さて、「自分しか通らないから構わない」というのが、この部屋に住む住民の決まり文句の弁解ですが、はたしてそうでしょうか?
我々管理人は、毎日マンションの隅々まで巡回看視します。じゃまなものがあると全部見ることができません。宅配便の配達のお兄さんも、大きな荷物をかついだ状態では、玄関ドアまでたどりつけません。ガスメーターの検針員、メーターボックスが物で塞がれていると困ります。清掃、これもまったくできません。植木などは、風で倒れたり、土が飛ばされたり、水遣りによって汚れた水が流れることもあり、他の部分も汚す困り者です。(ある中国人住民に「この植木どかしてもらえませんか?」と注意したら、「風水の指示で、ここに置かなければ私は不幸になるの」と反論されました。中国人の風水信仰はすごいです。法律よりも風水です) 廊下の消火器を隠すように荷物を置く人もいます。消火器が使えません。また、廊下の私物は、放火犯の絶好のターゲットです。火事など起これば、被害は「自分だけ」ということはありません。もちろん、美観上も問題です。ですから、「自分しか・・・・」というのは理由になっていないのです。
ところで、最近のマンションでは、「専有部分となっている廊下」というのがあります。登記上もその人の持ち物になっている廊下です。実際は、共用部との境に門扉や柵が設けられています。その柵から内側がその部屋の持分なのです。「マンションなのに、一戸建ての感覚」ということで人気があります。分譲会社としても、専有部分の面積表示を大きくできるメリットがあります。端っこの部屋に限らず、玄関ドアが廊下から引っ込んでいる「アルコープ」というものがあるマンションも増加傾向です。このアルコープ部分も専有部分になっています。玄関ドアが引っ込んでいると、「廊下を走っていて、急にドアが開き、それに衝突してケガをする」(私もたまにあります。ですから、急いでいる時は外側を通ります)ということがありません。プライバシーも守られます。反面、「怪しいセ−ルスマンが訪問してきても、周囲から見えにくい」「玄関が暗くなる」という防犯上の意味も含んだ欠点もあります。
他の管理人さんからの話では、この「専有部分」がけっこうややこしいそうです。専有部分なんで、管理上の範囲外であり、もちろん清掃する義務もありません。しかし、定期清掃の際、「ここも廊下の一部なんだから、ついでにここも掃除してよ」と言う人がいるそうです。「専有部分ということで何を置いても構わない」、というのが建前ですが、やはり、「あの荷物は汚いから、美観上よろしくない。どかさせて」と他の居住者から苦情が来たり、「古新聞やゴミをずっと置かれるのは、放火されやすく問題」と指摘されることもあります。専有部分とはいえ、他人の目が届く場所なので、やはりある程度のマナーが必要です。また、宅配便業者を始め、その部屋を訪問する人にとっては、玄関ドアの前にもうひとつ扉があるというのは面倒で、不評です。
私個人の意見としては、マンションを設計する時に、廊下とか、外部とかに「トランクルーム」を設置するのが一番いいと思います。密閉したトランクルームなら何を置いてもいいし、管理する側は無関係です。
とにかく、マンションというのは、収納スペースが少ないですから、「隙あらば荷物をどこかに置こう」とする住民がいます。当マンションでも、非常階段の下を、「マイバルコニー」にしている人がいます。今度、理事会さんと協力して強制撤去する予定ですが、ひと悶着ありそうです。(「不動産屋が使っていいといったんだ!」、と主張しています)
忠告:「不動産屋の言うことは信用しないこと」
不動産屋は「売ったら終わり、オラ知らねえ」という考えですから、いい加減です。中古マンションを買うときは、不動産屋より、そこの管理人に話を聞いてください。
ちなみに、他で実際にあったスゴイ話を紹介しましょう。
「最上階の住民が、屋上に自分の物置をおいていた」そうです。そこの屋上は出入口に鍵がかかっており、普通の人は上がれません。管理人や理事長さん以外は入れないはずなんですが、その人はよく出入りしていたそうです。実はその住民、ヤクザで、管理人が脅されて、合鍵を渡して、屋上を自由に使わせていたようです。そして、そのことを誰にもいわなかったそうです。同じ立場として気の毒とは思いますが、まずいんじゃないかな? 管理人が入れ替わった時に発見されて大問題になったそうです。(定期設備点検で係員が屋上見てないのも不思議)