管理人はつらいよ   



緑の館



 NHKの番組で「ご近所の底力」というのがあって、身近な生活問題を掘り起こす姿勢にひかれて、ちょくちょく見ています。マンション管理に関する話題もたまに扱われます。

 昨夜は、「夏の暑さ対策」というのをやってましたが、「おいおい、それはだめだよ」というのがありました。
 ”マンションの部屋の暑さをなんとかする”という課題に対して、「ベランダに、ツル性の植物を植えて、甲子園球場のツタのようにベランダ全体を覆い、直射日光を遮るという解決方法でした。効果は絶大です。この策、出席者25名中22名が賛成していました。私も、「無駄な電気代を使わずに、植物の自然の力で温度を下げる」ことには共感します。一戸建てならいいでしょう。しかし、水を差すようで悪いんですが、この方法、マンションじゃちょっと無理じゃないでしょうか?

1.洗濯物はどうするの?
 テレビで紹介された部屋のベランダは葉っぱのカーテンで完全に覆われていました。洗濯物を干しても、光が十分に当たりません。もちろん、室内に干すよりは乾くでしょうが、紫外線消毒したい人にはよくないんじゃないでしょうか? 布団も干せません。
2.ベランダは共用部分であり、避難通路
 植物でぎっしり埋め尽くされたベランダは、避難通路の役目をしません。通れません。それに、共用部分を勝手に改造することは美観の面からも許されません。管理組合として十分な話し合いをしたうえで許可されなければいけません。
3.周囲に迷惑
 植物に水をやる際、よほど注意しないと、階下の部屋のベランダに水が飛びます。また、ツル性の植物はどんどんひろがっていきます。他人のベランダにも侵入するかもしれません。また、植物には虫がつきものです。夏、ベランダ側の窓を開けている部屋は多いです。虫が入ってくるでしょう。 そして、植物があるということは当然土があります。雨風で土が飛ぶことがあります。ベランダ外に広がれば、他住民も迷惑ですし、それを清掃する管理員・清掃員は大変です。
4.全員が緑が好きとはいえません。
 花をたくさん植える人もいますが、こういう人たちは「人間はすべて植物が好き」と思っているようです。(ペット問題でも、こういう勘違いをしている人がいます) 嫌いな人もいます。漆にかぶれるように、植物に触れることでアレルギーを起こすこともあります。
5.防犯上問題あり
 外から見るとベランダが完全に隠れてしまいます。ドロボウが侵入してもわかりません。

 放送されたマンションでは、マンションぐるみでの緑のカーテン作りを進めていましたが、はたして、きちんと話し合いはされたのでしょうか? こういうことは、住民全員の賛成が必要です。会社のビルとかならいいですが、居住用マンションでの導入は、はなはだ疑問です。 共用廊下まで葉っぱだらけでしたが、これじゃ、犯罪やり放題です。
 だいたい、夏はいいかもしれませんが、それ以外の季節はどうするんでしょうか? 陽のあたらない暗い廊下が好きなんですか?

 マンションというのは、一定の規則があります。また、いろいろな考えを持つ住民の集合体です。ポツンと一軒だけ建っている一戸建てとは事情が違います。風鈴だって、「いいねえ。風情があって」という人もいれば、「うるさいだけ」という人もいます。そういうことを十分に調べないで、「これはいい方法です」と紹介するNHKのディレクター、バカです。(今、NHKの腐敗構造、お大尽体質が問題になってますが、一端が現れているようです)

 
 この番組内でやっていた、「雨水をドラム缶などにためて、それを使って家の周囲に打ち水をして、温度を下げる」ということには大賛成です。これは一戸建てだけでなく、どこのマンションでも、やってもらいたいです。中水道のようなものを作って、屋上とか、駐車場とかに打ち水をすれば、かなり涼しくなります。これなら組合としても賛成できるでしょう。でも、マンション全体を緑の館にするのは、ちょっと疑問です。

(NHKって、マンション問題やる時に、きちんと管理人さんとかにリサーチしてるんでしょうか? 当サイトは、フジテレビ、テレビ東京の取材を受けたことがありますが、NHKからはありません。ちなみに、高名な小説家の方から、「ネタに使わせて欲しい」という依頼を受けたこともあります。管理人の大変さが、うまくその小説の中に書かれるといいのですが。期待してます)

 

 



2004/8