管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 マンションには多種多様な人が住む 



 「マンションというのはどういうところなんでしょうか?」と、もし聞かれたらこう答えます。
「いろいろな人がいっしょに住むところです」
と。

 ある程度、マンションの本質をわかっている人は、管理人や理事長さんに対して、「大変でしょう。
いろいろな人がいるからね」と言ってくれます。このマンションでも、良心的な住民が多少いますので、こういう言葉をかけてくれます。短い言葉ですが、これがすべてを表していると思います。「十人十色」という言葉もよく出てきます。私はこれをもじって、「住民十色」と言います。

 ほんと、いろいろな人がいます。様々な価値観があります。その人毎に「常識」というものが違います。前に流通業にいたときも、様々なお客さんに接しましたが、それは「買い物」という、生活の中の一部分に過ぎません。しかし、マンションというのは生活の場ですから、「表の顔」も「裏の顔」も見ることがあります。
 管理人と話すときは「お上品な奥様」でも、「ゴミの出し方はメチャクチャ」、「”きっと部屋の中はきちんと整理されていてきれいなだろうなあ”と思っていたのに、ある日、突然の水漏れ事故であわてて部屋の中に入ってみると、ゴミ溜め状態」なんていうケースもあります。そして、家ですから、当然家族で住んでいます。会社や学校なら、その人としか接しませんが、我々は家族全員と接します。「奥さんは物分りがいい人だが、ご主人は理論がめちゃくちゃな癇癪持ち」だったりすることもあります。1軒1軒ではなく、一人一人、相手に対する対応方法を変えなければなりません。よく、部屋数でマンションの大きさを表現しますが、それよりも実際の住民の数で比べるべきではないかなあ、とも思います。

 とにかく、マンションの中というのは、ある意味「なんでもあり」なのかもしれません。うちの場合はまだまともなほうかもしれません。これで、「外国人が多い」「ワンルームが多い」「店舗が入っている混在型マンション」・・・・など、複雑な要素が加わると、「住民百色」ということになるでしょう。

 これだけ、いろいろな人がいるのですから、管理人も画一的な対応ではうまくいきません。それに自分の常識は通用しません。(管理会社が研修で教える”常識”もすべての人に通用するわけはありません) ほんと、この仕事を始めてから、「自分の人生経験の浅さ、未熟さ」、「何がいいことで何が悪いことなのか、自分の物差しでは決めることは出来ない」を痛感しました。

 ほんと、この仕事は「人生の酸いも甘いも知り尽くした達人にしか出来ないのでは」と思います。そういう面では、今のような管理人人材の登用の仕方は変です。報酬も最低でも年500万円は払うべきでしょう。仙人のような人じゃないとできない特殊な仕事ですから。 


2004/10