管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 ベタベタ貼るな 掲示物  回覧板も不評 


  素晴らしい住民ばかりのマンションでは、このようなことはないと思いますが、普通のマンションでは、少なからず「〜しないで下さい」「〜して下さい」といった、いわゆる「注意喚起」の掲示物があるはずです。居住マナーの厳しいマンションでは、こういった掲示物が、マンション内の壁のいたるところに貼りめぐらされているような、すごいものもあり、初めて訪問すると圧迫感を感じてしまいます。(なんか校則の厳しい学校みたい)

 ”注意”系の掲示物というのは、みなそれなりの必要性があるものです。ただ、マンションの住民の中には掲示物が一切きらいな美観を持った人がいます。どのマンションでも、販売時は「高級マンション」として売られます。「庶民的マンション」などと謳って売るケースはありません。パンフレットでは、豪華な内装のエントランスホールのCG画像が掲載され、実際にはあるはずの掲示板ですが、CGには存在しません。(”マンション”という言葉自体、”部屋が何十もある、大金持ちが住む高級な邸宅”という意味ですから、”高級マンション”というのは、ものすごい邸宅になってしまうはずです。本当は王様しか住めないんじゃないかなあ?) そういった、”高級幻想”を持った人や、「とにかく何もないのがいいの。ベタベタ紙が貼ってるのはみっともない。耐えられない」という感覚を持った人にとっては、掲示物は不快なもののようです。

 当マンションでも、住民のレベルが低いために、いろいろな注意系掲示物が貼り出されます。もちろん、本当はこんなものなど作りたくないし、貼りたくないです。はらなくても済むマンションにしたいのです。しかし、貼らないわけにはいきません。もし、貼らないと、「管理組合、管理会社は何もしていない」と叱責されたり、防犯に関することなどは「なぜ、住民に知らせなかったのか」と怒られることがあります。また、当マンションの組合さんの方針として、「完全な証拠があって相手が特定できない限り、その人個人宛に注意することはせず、掲示物で不特定の相手に対する注意をして対応する」ということになっています。ですから、「ほぼ間違いなく、○○○号室の人が犯人です」とわかっていても、100%でない場合は、本人に注意することはなく、掲示物として貼りだして、「〜しないで下さい」と注意します。そのため、どうしても注意系掲示物が常に多数貼られている状態になります。

 掲示物以外の手段としては、回覧板がありますが、これは不評です。「まわすのが面倒」「行き渡るのに時間がかかる。留守宅があると滞る」「強風などで飛ぶ。雨に濡れる」「ドアノブに回覧板がかかっていると”この部屋は留守”ということを外部に教えていることになり、空き巣狙いの情報となってしまう」  そんなわけで、「全員の認印が必要」みたいなものを除き、回覧板はあまり利用されません。ですから掲示物が多いです。

 ただし、貼ったら貼ったで文句が出ます。「安アパートじゃないんだ。みっともない。そんなにベタベタ貼るな」と言う人がいます。たしかに「〜しないで下さい」というのがたくさんあると美観上もよくないし、外部の人に対して、「このマンションはマナー違反住民が多い不良マンションです」と宣伝しているようなものです。文句が出るのもわかります。ただ、こういった文句を言う人の中には、こういう理由にかこつけて、実際は心の中で「そうだよ、ここに書かれていることはうちがやったことだよ。俺が犯人だよ。いちいち文句言うんじゃねえ」と言っている、ある意味「自白」みたいな人も多数います。こういう人たちの「美観」は詭弁です。

 「悪いことをする人というのは、悪いとわかっていてやるんだ。そういう人相手に”〜するな”と注意しても意味がない。ヤクザに”暴力はいけないこと”と諭しているようなものだ。どうせ、本人は見ないんだから」「注意するなら本人に直接しろ」と言う人もいます。これも理解できます、たしかに、いくら注意しても聞かない人は聞きません。ただし、前述の理由から、”本人に直接”というのは、よほどのことがないとできません。防犯カメラでもあれば、証拠画像を持って注意しに行くこともできますが。もっとも、確たる証拠があっても、理事長の中には「おなじ住民だからな。注意なんかすると逆恨みされて、何されるかわからない。やだなあ」と思う弱腰の人もいて、「俺、嫌だから管理人さんが行ってよ」とお鉢が回ることもあります。頼まれると仕方なく私が行きますが、「管理人の分際でなんなんだ!」と、門算払いをくらうこともありますので、やはり、「マンションの管理者」である理事長さんが行ってもらいたいです。一人だとやりにくいでしょうから、役員数名でまとまっていけばいいと思います。

 こういう控えめな態度というのは、掲示物にも現れます。「〜するな」「再度したら、〜する(罰を与える)」ような強気な文言は使いません。あくまでも、「〜しないで下さい」という弱気なお願いです。でも、こんな姿勢では、なめられます。結局、悪い人はずっとのさばって改心することなどないです。

 「逆恨みなんかこわくない」「俺は負けない」「違反は許さない」という毅然とした態度の役員が固まった組合さんがあるとしたら、うらやましいです。そういうところなら、注意書きの掲示物も少なくてすむかもしれません。

 (でも、名古屋では「駐車場利用のことで怒られたから、刺した」なんていう理事長刺殺事件なども起こってますので、恐ろしい世の中です。理事長も管理人も命がけかもしれません。そのわりに報酬はどちらもひどいですね)


 公園なんかでも、マナーの悪い利用者がいるために、「○○するな」の警告表示のオンパレードで、「だったら、何するの? ぼーっと立ってるだけかい?」のようなところもあります。何にも書かなくて済む社会にしたいものです。
 




2004/10