管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 境界線 



 
 イラク、チェチェン、コンゴ・・・・、国際紛争が絶えません。そこで問題となるのが国境です。といっても、境界線を気にするのは人間だけ。鳥や動物には関係ないです。

 このマンションでも、カラスや野良猫がやってきて悪さします。彼らは実に自由に行動します。マンション内で悪さする時は、「しっしっ」と追い払ったり、水鉄砲で撃退したりしますが、他人の土地へ逃げればそれはできません。猫なんか、隣の家の屋根にのぼって避難し、こちらをバカにしたように見ています。

 さて、当マンションの裏手にあるオンボロアパートが取り壊されることになりました。建て替えかと思いましたが、とりあえず駐車場にするそうです。その際、当マンションと隣のアパートの境界がどうなっているか、調査が入りました。ここで問題となるのは、境界にある鉄柵の所有者がどちらなのか?という問題。柵というのは仕切りとして両者に関係する施設ですが、柵の表面がAさん所有、裏面がBさん所有などということはないので、どちらかの所有ということになります。設計事務所らしきところの係員が、「この柵はどちらのものですか?」と私に聞くので、「え? そんなこといままで聞いたことないよ。どうなんだろう? 組合さんに聞いてみるよ」と、副理事長に聞いたものの、「わからない」という返事。その後詳しく調べた結果、当マンションのものと判明しました。となると、この柵のメンテナンスは当マンションの仕事ということになります。「もう、ボロボロだなあ。じゃあ、こんどの鉄部塗装の際に塗りなおししなければ」などという話が出ました。それにしても、厳密な境界線というのは、ふだんは気にすることがなく、いざ聞かれるとわからないものです。何かきっかけがないとはっきりしないものだと思いました。

 その後、そのアパートが取り壊され、更地になり、駐車場になりました。そうしたら・・・。 不審者がその駐車場から侵入するようになってしまいました。「下着ドロボウを見つけたけど、追いかけたら、駐車場の柵を越えて逃げた」ということもありました。今まで建物があったときはそんなことを気にする必要がなかったのに、更地になってしまったため、こういった困った問題が生じてしまったのです。「柵を高くして、侵入者防止用の壁に改築しよう」という意見が出されました。「駐車場建設のために、こういう被害が出たのだから、むこうさんにも費用を負担してもらおう」という話になり、管理会社経由で向こうの所有者と交渉しましたが、「あの柵は御宅の所有物です。それを改築するのに、当方に負担を求めるのは筋違い」と拒否されてしまいました。柵がこちらの所有ということで、費用は当マンションで全額負担しなければならなくなりました。「安くない工事だし、どうしようか?」「駐車場としての利用が終わって、何か建物が建てば、問題は解決するだろうし・・・」、今、みんなで悩んでいます。
 


2004/10