管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 言葉遣い 


 
 私は前職が客商売だったため、仕事上では非常に丁寧な言葉遣いをしていました。「かしこまりました」「うけたまわりました」「少々お待ちいただけますか」「恐れ入ります」・・・・・・などなど。

 この仕事に替わった時、本社での何の座学研修もなく、いきなり現場に行かされたため、「管理人って、どの程度の丁寧さの言葉遣いをすればいいんだろう?」とちょっと悩んでしまいました。「あんまりバカ丁寧だとおかしく思われるかも知れない。ぶっきらぼうなのもおかしい。管理人も一種の客商売に変わりない。どうしたもんか?」 と考えていました。

 参考にすべきは、前任者ですが、この人が実にフランクというかフレンドリーというか、ほとんど”タメぐち”なんです。仲の良い、気心の知れた住民ばかりなのでしょうが、「よ!」とか「元気!」とか言うんです。「少々お待ち下さい」ではなく、「あ、それ? ちょっと待っててねえ」という調子なんです。なんか私にすると驚きなんですが、ご本人はそれが当たり前という感じでしゃべってるし、住民のほうも別に嫌な顔はしていないし。小さな会社だから、これでいいのかもしれませんが、大手の管理会社なんかでは、どの程度の言葉遣いをするのか、とか基準があるんでしょうかねえ?

 なんか、「管理人だから、このレベルの言葉遣いをする」というよりも、その人の個性そのまま、という感じがします。私の場合は、「やはり、以前みたいな最丁寧な言葉はおかしいな。普通の丁寧な言葉にしよう」と思ってやってます。かなり親しい住民相手には友達的な話しかけ方をしますが、それでも最低限「です」「ます」は欠かせません。

 ただ、電話に関しては、相手が誰だか? どんな人なのか? どんな表情なのか? わかりませんから、最初の出だしはかなり丁寧に応対します。他の管理人の中には、電話に出ても「はい。何の用?」としか言わないようなぶっきらぼうな人もいますが、あれは良くないと思います。最低限、「はい、○○マンション管理室です」くらいの返事はしなければいけません。
 先方も、”相手が管理人だと思って無礼な言葉遣いをする人”が時々いますから、そういう人がそういう言葉づかいをさせないように、恐縮してもらうよう、「ここの管理人はよそとは違うぞ。常識も教養もあるぞ」と思ってもらえるよう、かなり丁寧に話しはじめます。もちろん、相手が顔なじみなら、二言目からはくだけた言葉になりますが。

 一人部署というのは隔絶された世界なので、「何が基準なのか」わからない、欠点があります。みなさんのところの管理人さんはどんな言葉遣いなのか? 教えていただきたいです。



 参考:

 ずっと昔、運送会社でアルバイトしていた頃の話です。そこの社員さん、面白い人でした。電話をするとき、「相手の言葉遣いに合わせて、自分の言葉遣いを変える」という人なんです。その人が電話をしている横で私は事務仕事をしていたのですが、その社員の話す言葉で、電話相手がどのような言葉遣いをしているのか、すぐにわかってしまうのです。相手が普通に話している分には、その社員は普通の社会人としての言葉遣いなんですが、相手が、「それじゃあさ、あんた、何時に届けてくれるのよ〜?」みたいな話し方をすると、その社員はとたんにしゃべり方をかえ、「うん、じゃあね、お宅に3時には行くよ。よろしく」などと向こうの話し方に合わせてしまうのです。「こんなんで、この会社いいのかなあ」と疑問を持ちつつも、バイトという気軽な立場から、「この人の電話の応対は面白い」と聞き耳立てて、楽しみに横から聞いてました。

  


2004/10