管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 組合活動 広報誌の重要性 




  「”管理組合活動に対する組合員の無関心”、これこそ、マンション管理上の最大の課題ではないか?」 、この業界ではよく言われる言葉です。では、この無関心をなくすにはどのようにすればいいのか? これが問題です。

 先日読んだ雑誌では、「徹底した広報こそが、無関心をなくす最適な手段」と断言している評論家がいました。これは、真実かもしれません。

 当マンションも無関心に悩むマンションです。ごくごく一部の役員が熱心に取り組んでおられるため、なんとか最低限の健全な組合運営ができていますが、大多数を占める他の住民は無関心層で、総会の出席率も1割ちょっと、アンケートを実施しても、2割回収できればいいほう、というお寒い状態です。

 ”広報の体制はどうか?”というと、ほとんど広報らしきものはありません。毎月理事会を開催していますが、「理事会の予告 ○○問題に関して検討します」と予告はするものの、理事会後に「どのように決まったのか? 何が話し合われたのか」といった報告がありません。もちろん、「鉄部塗装工事を行ないます」のような大きな出来事に関しては、広報がありますが、定期的に出すようなものはなく、活発とはいえません。(ただし、こまごまとしたことは、私のほうで随時報告して、なるべく住民に理解してもらえるよう努力しています) 住民からの意見や質問を受け取る体制も特にありません。住民の判断で「管理人に言う」「組合のポストに手紙を入れる」「理事長宅を訪問して意見をいう」など、まちまちです。まあ、それでも住民の気質なのか、「何も言わずに黙っている」という人は少なく、けっこう、「何でもかんでも文句を言う」人が多いので、「住民の意見がまったく反映されない」ということはありません。

 さて、当マンションのような例は悪い見本なので、良い見本を紹介します。当サイト愛読者の近畿地方の某マンションの組合理事長さんから来たメールを紹介します。


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私のところは、昔はひどいマンションでした。
 理事会も年に2〜3回、何か大きな問題が起きた時だけ、管理会社が呼びかけて開催される程度です。開催予告も、開催後の報告もありません。総会も、出席するのは役員だけ。それも全員ではありません。あとは全部委任状。管理会社ががんばって、なんとか定数分の委任状を集めて成立させます。議決権行使書ではなく、「議長へ一任」の委任状ですから、議案の審議もへったくれもありません。総会は、ものの10分程度で終わりです。質疑応答もありません。実際のところ、委任状を集めた時点で終わりなのです。新築から数年の間は建物も壊れるところはなく、管理会社のいうがままにしていればなんとかなっていましたが(ただし、法外な管理委託費をボッタクラレテます)、年数が経過してあちこち悪くなると、そうもいきません。また、マンションのとなりに市がゴミ収集車両の駐車場を作ろうとした際、市は説明会や公聴会を開いて、地元の意見を聞こうとしていたのに、組合はそのことを住民に知らせず、そして何の対応もしなかったために、「承認」とみなされて、住民が知らぬ間に駐車場ができてしまい、毎日臭いニオイを撒き散らす収集車が出入りするようになって、環境が悪化しました。
 
 そんなこともあり、「このままではいけない」と有志数人が立ち上がり、組合改革を決行しました。重点項目は、「広報」でした。「無関心をなくす」「すべての情報を開示し、ひろく意見を求める」ために、広報を充実させることにしました。マンション管理の講習会などにも参加して、広報の方法を勉強しました。そして、現在このように広報活動を行なっています。そちらでも参考にしてください。


◆理事会は定期的に毎月開催する。開催1週間前には予告の掲示を出し、検討事項をすべて記載し、全住民を対象として意見を求める。なお、役員以外の組合員(占有者も含む)の出席も歓迎する。

◆理事会開催後は、そこで話し合われたことを、”プライバシーの観点から適切でないと考えたもの”は除外して、すみやかにすべて公表する。「理事会議事録をコピーして配布すればいい」という意見があったが、”滞納者の個人名など、公表してはまずいものが含まれる””文章が難しくわかりにくい””文字だけではわかりにくい、写真入りのものを作るべき””管理会社が議事録を作るまでに3週間もかかり、遅すぎる。理事会後すぐに発表しないと意味がない”といった指摘があり、議事録を配布することは適切でないと判断した。

◆議事録ではなく、「○○マンション新聞」というものを作成し、毎月発行することとした。組合専用にパソコン、スキャナー、プリンター、デジカメを購入した。管理人さんに頼んで、デジカメで写真を撮影してもらうことにし、記事には写真も添えることにした。理事会で話し合われたことを中心に、とにかくなんでもかんでも、マンションに関することを盛り込むことにした。地域行政や地元自治会の話題も加えた。最初は、「掲示板に貼ればそれでいい」と考えたが、「内容が豊富すぎて、その場でしっかり見てくれるか疑問」「掲示板を見ない人も多い」「一軒一軒できちんと過去の記録を保管していて欲しい」ということから、全世帯に配布することとした。パソコンで印刷するため、コストがかかるが、オールカラーで写真満載の新聞を発行できる。部屋を賃貸にしている外部居住組合員には毎回郵送することとした。もちろん賃貸入居者にも配布する。

◆住民からの意見を受け入れる体制を作った。組合専用のメールアドレス(無料)を取得し、「組合への意見質問はお気軽にお寄せ下さい。電子メールでもけっこうです」とした。意見受付担当役員が毎日パソコンをチェックすることとした。重要な意見質問は、印刷して、全役員へ随時配布する。メールだと過去の記録がきちんと残る。保管にも便利。

◆管理組合用の郵便ポストが今までなかったので、新たに設置。「組合への意見投函箱」として使用することにした。また、管理員の意識改革も行い、管理の最前線として、住民からの意見受付を重視するように再教育した。同様に、管理会社も再教育し、得た情報はすべて組合へも教えるようにしてもらった。

◆集会室の中に新たに大型の書庫を設置し、過去の資料をすべて集めた。また、今後はすべての資料をきちんと整理して永久に保管することにした。(以前のものは紛失したものがたくさんあった。理事会の議事録でさえ、なくなっていた。また、管理員は管理日誌をつけていなかったので管理人サイドの情報何も残っていなかった)

◆いろいろと経費増になったが、管理委託費の見直しで200万円の削減が実現したため、十分賄うことができた。


 それでも、問題はあります。

●せっかく全室配布しても、まったく読まずに他のチラシといっしょにゴミ箱直行になるものが少なからずある。そのため、新聞全部に隅っこに小さな字で部屋番号を書いておいて、捨てられたらゴミ箱から出して、また投函する。

●「うざったい。そんなこと知らなくても生きていける。組合なんか関係ねえ!」と文句を言う不良住民がわずかだがいる。マナー違反やトラブルに関する記事の場合、個人名を隠していても、「なんで、俺のことをみんなに知らせるんだ。ふざけるな。」と理事長宅に時間関係無しにどなりこんでくる輩がいる。理事長の家族がノイローゼになる。怒鳴り込まなくても、隠れて陰湿な嫌がらせをする奴がいる。

●意見質問を自由に受け付ける体制を作っても、正式に言ってくる人が少ない。裏でこそこそ話すのは得意でも、文書にしたり、記録に残るようにするのが嫌な人がいる。そういう人は、理事会で決定した後に文句を言ってくる。”とにかくなんでもかんでも反対”みたいな天邪鬼がいる。

●手抜き運営をしていた時代の理事長が、「俺のやり方が間違っていたと言うのか!」と難癖をつけてくる。まるで自分が否定されたように感じるらしい。その後も、意地になって、現組合の運営になんでも文句を言う。

●外部居住組合員に配布するための郵送料・手間がバカにならない。「経費節減のため、電子メールやFAXで送る手段もあるので、それが可能なら言って欲しい」とお願いしても、返答はない。「ふだんから組合活動にまった協力せず、役員にもならない人に、お金を余計にかけるのは不公平ではないか」、という疑問がある。

●全世帯にカラー印刷するのは、時間が莫大にかかる。ホッチキスでまとめて、そして投函すると8時間はかかってしまう。役員と管理員が協力してやっているが、負担が大きすぎる。また、インク代もバカにならない。 電子メール配信もできる体制を作ったが、希望者がいない。

●充実した内容の新聞を作成するには、10時間以上はかかる。執筆にあたる理事長は、かなり生活を犠牲にする。無報酬では今後誰もやらないのではないか? 本当は書記にやってもらいたい。

●資料の整理保管作業は膨大な手間がかかる。着手して半年以上たつが、まだ終わらない。今後増える資料もたくさんあり、その整理も大変である。


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 これだけやるのは、役員さん(理事長さん)大変なご苦労だと思います。頭が下がります。組合活動というのはほんと大変ですね。日本の社会では、「変える」ことはたとえ良い事でも反対する人がいますから、なおさら改革というのは困難を伴います。でも、充実した広報を続ければ、必ず良い方向に向かうでしょう。頑張って下さい。応援します。


2004/10