管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 影の清掃員 


ありがたい存在です


 世の中には、祝日であろうと休ませてもらえない管理人さんがいます。「ゴミ収集日は祝日であっても出勤」という慣例になっているマンションがあるからです。しかし、ゴミ収集の細分化が進んだ今、毎日のようにいろいろなゴミの収集があるため、結局「祝日の休みはなし」と同じことです。たとえ、「午前中3時間だけ、ゴミのために出勤」であっても、休めないのはつらいです。

 さて、幸いなことにこの職場では祝日はきちんと休めます。世の中では当たり前のことでも、この業界では”ありがたい”ことです。では、「祝日のゴミ置き場の清掃はどうするのか?」という疑問が湧いてきます。もちろん、住民のゴミ出しマナーがしっかりしていて、カラス除け、ネコ除けの設備が整っていれば、清掃など必要ないのですが、当マンションではそうではないので、やはり清掃が必要です。

 ここで、影の清掃員が活躍するのです。誰かというと、住民の一人が、「祝日は管理人さんや清掃員さんがいないから、ゴミ収集後に汚れている時はささっと掃除してあげよう」とボランティアしてくれているのです。もちろん、こちらから頼んでいるわけではありません。その方は昔から、そうやってくれているのです。実にありがたい人です。感謝感激です。日頃、このHPでは、住民の悪口ばかり言ってますが、こういう素晴らしい住民もいるのです。
 そして、この人は、「掃除しておいたよ」といったことを一切口にしません。「沈黙は美徳」「美徳は黙って行なう」という哲学があるようです。といっても、その姿が誰かに見られている以上、私たちの耳に入ってきて、「○○さんがいつもやってくれている」ということは判明します。私のようにすぐに愚痴を口に出すような人間ではなく、不言実行なんです。えらいです。
 そんなわけで、祝日であっても、目に付くような大きなゴミは片付けられて、なんとか清潔に維持されるわけです。これはある意味凄いことなんですが、その人にいわせると、「お互い様。当然のこと」だそうです。そういうことをさらっと言える人間に私もなりたいです。(無理だけど)

 ただ、この方の「何にも言わない」は、美徳であると同時に、「おかしな誤解の元」でもあります。実はこの方、近くの児童福祉施設でもボランティアをなさってるんですが、そこの子供たちのために、マンションの古紙回収のときに出たゴミの中から、程度の良いコミック本を抜き出しているのです。もちろん、抜き取った後には紐を結びなおして、迷惑がかからないようにしているのですが、いかんせん、何も知らない他人から見ると、「泥棒」」「怪しい人」に見えてしまいます。「子供たちがマンガ本喜ぶから」ということなんですが、せっかくの善行が悪事に思われても困るので、わたしの方で目撃者の方には事情を説明しています。

 沈黙はかっこいいんですが、何も言わないのもちょっと困ります。

 また、この人とは別に、「強風が吹いて倒れてしまった自転車を起こしてくれる人」がいます。非常にありがたいことなんでしょうが。
まだ、強風が続いている状態の中で戻しても、またすぐに倒れます。その時のショックで壊れることもあります。ですから、私の場合、風がまだ吹いているときは倒れたまま放置しています。そういう事情をわからずに、親切心で起こしてくれる人がいるのです。すいません、ありがたいんですが、ほっといて下さい。風がやんだら私が直しますから。
 


2004/11