管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 防犯カメラA  どの程度まで見せるのか? 




  あちこちのマンションを見学したのですが、「防犯カメラの存在を、どの程度知らしめるか?」といった姿勢がかなり違うことに驚きました。

 防犯カメラというのは、本来は「こんなもの、ないほうがいい。なくても犯罪が起きないのが一番いい」というものです。
 カメラの存在はお金もかかりますし、マンションの美観を損ねるものです。また、「カメラ監視中」といった文字のステッカーも、「みっともない」「カメラがあることで、”犯罪が多い”マンションだと思われるのも困る」と、ただベタベタ貼ればいいものではありません。バランスが難しいです。

<目立たせない例>
 マンションの正面入口ガラス扉の上のほうに15×20cm程度の小さな「○○警備保障 防犯カメラシステム」とだけ書かれたシンプルなシールが貼ってるだけ。これ以外の箇所には貼っていない。
 カメラはごく小さなタイプで、なるべく目立たないよう、見つけられないように、控えめに設置されている。カメラ本体が露出していないドームタイプ(左写真)が多い。エレベーターの中は、ボタンを押す部分にカメラが隠れて設置してあり、パッと見にはその存在はわからない。モニターは管理人室内にあるが、外からはわからない位置に設置されている。画像は警備会社に送られて、そこで録画されているため、デッキ類はマンション内にはない。


<目立たせる例>
 マンション内いたるところに、「防犯カメラ設置」「カメラ録画中」「不審者はすぐに通報します」・・・の大きなステッカーが貼られている。カメラはけっこう大きく、露出して設置されている。それも天井から吊り下げるというより、すぐに目線に入るような比較的低い位置にある。カメラにはLEDランプがついており、常時点滅していて、いかにも「録画中だぞ」という感じを与える。
 モニター画面を管理人室内ではなく、外に出して誰でもが見えるようにしている。オートロックドアのすぐ横に設置して、中に入る前から防犯カメラの存在を印象付けている。(スーパーマーケットなど、小売店舗も、万引き防止のために防犯カメラの存在を目立たせようと、入口の自動ドアの真上にモニターを設置して、「安全のためにカメラで監視しています」なんていう注意書きを貼り出しているところをよく見るようになってきた) そこまでいかなくても、管理人室の前とか、エレベーターホールの中にモニターを設置しているマンションは多い。「こういうふうに写ってるんですよ」とアピールしている。


 上記2例は極端な例ですが、このようにマンションによって、姿勢が違うことはよくあるようです。それぞれ長所短所があるからです。設置の際の住民の意思、カメラ会社の意向が反映しているのでしょう。
 
 「防犯カメラ」というのは、文字通り、「防犯=犯罪を起こさないように未然に防ぐ」のためのものです。「犯罪予防カメラ」といってもいいかもしれません。カメラがあっても、覆面をするとか、帽子で顔を隠すとか、カメラが写さない死角を狙うとか、本気で犯罪を起こそうとする悪い奴には効き目はイマイチです。やはり、犯罪を起こさせないような気持ちにすることが主眼かと思います。となると、「カメラがあるぞ」ということを周知させないと意味がありません。でも、目立たせるとみっともないですし、住民も窮屈な思いをします。特に高級感を大事にするマンションでは、控えめにデザインします。「犯罪者は下調べの段階で、カメラの有無を調べるから、控えめでも、問題ないんだ」という意見もあります。しかし、「犯罪といっても空き巣とか強盗とか、本格的な犯罪もあれば、”掲示板にいたずら書きする”とか、”エレベーターの壁をひっかく”、”駐車場の車をいたずらする””自転車置き場から自転車を出来心で盗む”などの、「いたずら」「軽犯罪」というものもある。こういった小悪党に対しては、はっきり目立つようにカメラの存在をしらしめなくてはだめだ」という反論もあります。ほんと、難しいです。

 モニターを誰でもが見える場所に置くことは、一番目立つことですが、これも賛否両論です。
<欠点>
・「どこにカメラがあって、どのような角度で写っているか、どのように歩けば顔が写らない・・」などの情報がわかり、犯罪者側に”ここなら写らないだろう”などの、研究材料を与えてしまう。
・カメラはあるけど、実際は録画していない、いわゆる”ダミーカメラ”が設置されている場合、”あのカメラはダミーではないか”とバレてしまう可能性がある。
・住民や来訪者が、”自分は犯罪者ではないのに、いつも写されている。この画像が変な用途に使われるかもしれない”などと不安に思う。(直接的な犯罪ではないものの、”不倫”とか”浮気”とか、”塾にいったはずなのにさぼっている”とか、都合の悪いことがばれる可能性もある)
・犯人が複数で、一人がモニターの前に立って携帯電話で連絡しながら実行部隊に指示を送ることが出来る。(「管理人がエレベーターに乗って下に降りてくるから、そこの周囲には誰もいない。今なら大丈夫」とか)
・”パジャマ姿で、汚いゴミをたくさん持って、ゴミ集積場へ向かう姿など写して欲しくない。他人にみられたくない。”といったプライバシー保護上の問題がある。
・初めて、このマンションを訪れた人が驚く。
などなど

<いい点>
・「どこにカメラがあって、どのように写されているか」全住民が把握できるため、安心。(総会にも出ず、配布資料もろくに読まない住民の場合、どの場所にカメラが設置されたかも知らない場合がある)
・小学校の集団登校の集合時、”○○ちゃんが今エレベーターに乗ったから、もうすぐ全員集るよ”といったことに使える
・ゴミ出しのマナーが向上する。(見られているという意識が作用する)

 とにかくいろいろです。このため、設置する際に住民から様々な意見を聞いて、最大公約数の合意の上で、どうするのか、慎重に決めたほうが良いと思われます。

 ただ、録画デッキの存在は見せないほうがいいと思います。「どこにどんなデッキがあるのか?」わかると、犯罪者が堂々と犯罪を犯した後に、管理人室に侵入して、デッキをまるごと盗んで、証拠隠滅を図るケースがあるからです。「本当はデッキで録画しているだけで、警備会社とは接続していない」場合でも、ウソをついて、「○○警備保障監視室で24時間画像を監視して、何かあればすぐに警備員がやってきます」とはったりをかましておくほうがいいです。「住民内部で犯罪を犯す可能性もあるから」」という理由で、理事会役員しか真実を知らないで、他の住民には本当のシステムを教えない、といったマンションもありました。「敵を欺くにはまず味方から」だそうです。

 こうやって考えると、今後わがマンションでカメラを設置する場合にも、「いろいろ検討しなければならないことがいっぱいある」ことが、よくわかりました。



2004/11