管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 意思決定にかかる時間


はやくしてね


 ある管理人さんから聞いたボヤキ。

 管理組合(特に理事長)というのは、いろいろなことを決めなくてはいけません。


その決定は、「総会で決定する。(その中でも、普通決議と特別決議の2種類があります)」「理事会で決定する」「理事長個人で決定する」など、レベルの違いがあります。「管理規約の変更は特別決議」とか、法律や標準管理規約で規定されているようなことはいいのですが、「これはどのレベルの決定事項なんだろう?」というあいまいなものもあります。

 「事なかれ主義」「無責任」「避責任(責任がかかることをなるべく避けようとする性格)」「無関心」「やる気なし」の理事長さんの場合、なかなか決められないことがあります。

 例えば、”自転車置き場の改修”という事例の場合。何十万円~百万単位もかかる大きな工事なら、当然、総会決議になるでしょう。でも、「あそこの置き場の屋根が腐って雨漏りするようになった。補修費は5万円」というくらいなら、理事会決議でOKだと思います。「誰かが自転車をぶつけて、柱の1本の塗装がはげた。500円のタッチペイントを買ってきて直そう」というなら、理事長の個人決定でOKだと思います。
 でも、事なかれ主義の理事長だと、「たとえ、500円でも、自分の判断で決めてはだめなんじゃないかな? みんなから貴重なお金を預かっているわけだから。やはり、理事会の席で決めることにしよう」となることがあります。それでも、毎月定期的に理事会をやっていればいいですが、やる気のないマンションほど、理事会の開催回数も少ないですから、500円の買い物を決めるのに、3ヶ月かかることがあります。(そういえば、サラ金の○富士も、社員が1000円以上のものを買うのに社長決済が必要だったようです)

 役員全員がみんな事なかれ主義だと、理事会でもなかなか決められずに、総会にまでずれこんでしまいます。500円の案件なら理事会で可決するでしょうが、5万円の修理だと理事会決済できずに総会案件になってしまうことがあります。これが50万円だと、「私たちの期で決めるのはなんですから、次期に繰り越しということにしましょうか?」なんてのもあります。傍から見るとバカバカしいくらいですが、なかなか決まりません。

 案件が、「待てる」内容ならいいのですが、例えば、「台風で玄関ホールのガラスが壊れてしまった。十数万円かかるが、すぐに直さないとまずい」ようなケースで、だらだらやられたら住民も困ります。「宅配ロッカーが壊れた。ICチップを交換しないと、直らないどころか、今、中に入っている荷物も出せない」といったケースなんか、もっと困ります。また、「消防点検で火災報知器の故障が見つかった。現状では消防法違反の状態だ。火事が起きたらどうする。すぐに直さないと」といった場合に、「総会まで待って」とは言ってられません。
 でも、「そうは言っても、みんなで議論しないとねえ」、そういうケース、けっこうあるそうです。
 別の管理人さんのケースでは、意思決定のタイムラグを考慮して、夏のうちに「この管理人室は暖房がないんで、冬になると寒いため、3000円の電気ストーブ買ってもらえませんか?」と頼んで・・・・・、「買うことにしましょう」と決定したのが翌年の春だった、なんていう笑えない話もあります。

 理事長の独断専行でなんでもやっていいわけではありませんが、「緊急性の高い案件は、理事会開催まで待たずに理事長が判断する」みたいなことがあってもいいのではないでしょうか?
 当マンションでは、副理事長がしっかりしているため、そういった意思決定が迅速で、緊急工事などはその場で決めてしまいます。簡易な案件は管理人判断に任されていることもたくさんあり、私の一存で決めて、事後報告するケースもあります。予備費が潤沢にあるというのも理由です。

 ただし、「理事長に任せる」とすると、その理事長の好みに左右されることがあります。「管理人室の書類整理用に2000円のレターラック買ってくれませんか?」とお願いしても、「そんな安物買わないで、もっと立派な書庫を買えば? 理事会で相談するから・・・」⇒”理事会で提案するのを忘れたり、毎回後回しで時間切れで審議できなかったり、結局買ってもらえない”というケースもあります。

 「近くのマンションで鉄部塗装工事をやっているため、その工事会社関係の車両が、うちのマンションの前によく違法駐車する。何とかして欲しい」という住民からの苦情に対し、「理事会開催を待って対策を審議してたら、工事が終わった」なんてこと、実際あるんです。意味ねえ〜。
 


2004/11