管理人はつらいよ
マンション管理最前線
全自動洗濯機の怖さ |
全自動洗濯機。皆さん使っていることと思います。便利ですね。でも、便利さの影に恐ろしいことが隠れています。水道工事業者さんからの話です。
マンションも、15年以上経つと、漏水事故がいろいろ発生します。管理人としてもその対応は大変です。でも、新築のマンションでも、漏水事故はあるそうです。実は漏水事故の中で一番多いのは全自動洗濯機なんだそうです。
全自動洗濯機は、水道の蛇口を開けたまま使用します。放水、停止は洗濯機側で行ないます。ですから、蛇口にガッチリとはまるように、ネジを使ってホースをしっかりとめているわけですが、これが緩んだり、外れたりすることがあるそうです。
人がいればいいんですが、留守の間にそういうことが起きると大変です。「なにかがぶつからなければそんなことは起きないでしょう?」と思われるでしょうが、水道というのは他の部屋ともつながっているため、別の部屋で水を使ったり止めたりすると、その時のショックが伝わることがあります。そういう音がよく響くマンションもあります。また、水道経路の設計の不備で、「ウォーターハンマー現象」というものが発生することがあります。先日の原発の冷却水の管が割れたのも、たしか似たような原因だったと思いますが、とにかく水道管の中でトンカチで叩いたような強いショックが発生することがあるのです。そういうショックが洗濯機のホースにも伝わることは考えられます。
なにしろ、蛇口は全開ですから、これが外れたら、すごい量の水が噴出します。防水パンの中に落ちれば幸いですが、パンの外の場合、悲惨です。部屋中水浸しです。そして、もっと悲惨なのは直下の部屋。なにしろ大量の水ですから、天井のいたるところから水が落ちてきます。放出が長時間に及ぶと、そのまた下の階、そのまた下の階まで漏水が広がります。当事者の部屋の玄関ドアの下の隙間からも滝のように水があふれてきます。
「当事者が留守で、水をとめることが出来ない場合、どうすればいいのか?」、冷静に考えれば至極簡単です。派手に水が出ているのですから、どの部屋が原因かはすぐにわかります。その部屋のメーターボックスを開けて、元栓を閉めればいいのです。誰でもできます。簡単です。
しかし、人間というのはパニックになると、論理的な思考ができなくなります。特に女性はそうです。共用廊下にも水があふれるような事態だと、大勢の人が騒ぎ始めます。そのうちの誰かは気づきそうですが、みんなパニックになると、頭が働きません。何をしていいのかわからず、「水のことだから水道局かな?」「クラシ○○かな?」「いや、まず管理人さんだ。でも、夜だから、もう帰っちゃったな」「火災報知器を押せば誰か来るかな」「警察呼ばなきゃ」「「いや、警備会社だ。管理人室の前に緊急連絡先って書いてあるよ」・・・・・・ なんてことになります。
結局、警備会社の人間が来て、水道の元栓を止めるまで、マンション住民は誰も元栓のことを気づかずに、水はジャアジャアと流れるまま。40分くらいは出しっぱなしでした。800リットルくらい出てしまったのではないでしょうか? 直下の階は近所からかき集めた何個ものバケツで水を受け止めていましたが、水浸しです。
バケツを集めることは考えるのに、なぜ元栓を閉めないのか? 冷静な人からするとばかばかしいことでも、パニックの当事者というのはそういうものなんです。
そんなわけで、その水道工事業者の人は、雑排水管清掃作業で全室まわる時に、各部屋で「全自動洗濯機は使用後は必ず蛇口を閉めて下さいね」と言っているそうです。ただし、ほとんどの人は「うちは大丈夫」と思って、開けっ放しだそうです。洗濯機の説明書にも大きく「警告」として書いてありますが、誰も気にしてません。
ちなみに、私も家に帰って妻に聞いたところ、「うちもいつも開けっ放しよ」と言われてしまいました。 すいません。
便利ね。全自動って。