管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

断 水 そのあと、トイレが止まる



 ずいぶん昔は、水道管の工事とか事故とか、よく断水があったものです。でも、今は水道局側の都合の断水というのはほとんどありませんね。
 さて、マンションでは、「受水槽清掃」とか「ポンプ修理」とかで断水になることが年に1回程度はあります。仕事をしている人は、昼間自分がいない時間に始まって終わってしまうため、気にしないことが多いかもしれません。

 ところで、ある別のマンションの話。このマンション、数年前に管理委託費減額のために、”激安”で有名なG社に管理会社を変更しました。「安くなってよかった」と思ったのも束の間、安いなりのシッペ返しがありました。
 ある日、理事会の席上で役員が、「あのさ、前の会社からG社への引継ってちゃんとやってるのかな? 例えば、各設備の点検整備の一覧表みたいなのってあるの?」「そうだよね、そういうのがないと、いつ点検したとか、オーバーホールしたとかの記録が残んなくて、これからいろいろ痛んでくる時期なのに困るよね。点検整備担当役員のAさん、どうなってるの?」「どうなってるの?って言われても。担当役員といっても、実際はG社さんにまかせっきりだし、僕は何も知りませんよ。そういう書類は見たことがないです」「G社さん、どうなってるの?」「えええ? ちょっと調べてみます」

 調査の結果、設備のメンテナンスに関しては何も引き継いでいないようです。「じゃあ、今からでもいいよ。作ってよ」「いえ、そういうことは組合さんのほうでお願いします。」「えええ、てことは点検整備担当の私がやんなきゃいけないんですか?」「そういうことだね。まあ、私も理事長として手伝うから、いっしょに作ろう」「作ろうって、実際どうやるんですか?」「過去の理事会議事録とか決算書類とか領収書を調べれば、わかるんじゃないの? あと、過去の役員に直接聞くとか。」
 とはいったものの、前の管理会社がいい加減だったために、ちゃんとした決算書類が残っていません。組合もいい加減だったため理事会もほとんど開かれておらず、かつまともな議事録が残っていません。領収書をまとめたものも、ところどころ紛失しているようです。いい加減(&ぼったくり料金)な管理会社&管理組合から、いい加減な(だけど安い)管理会社への引継というのはこんなものです。
 そんなわけで、調べられる範囲で調べたのですが、そこで大事なことに気づきました。「水道ポンプの整備を行なっていないために、寿命が早まり、今すぐにも交換しなければならない」ということです。
 あわてて、交換工事にとりかかりました。約8時間の断水が発生しました。告知を十分に行なったために、断水時に混乱はなかったのですが、問題は復旧後に起きました。

 「トイレの水が出ない!」という苦情が連続して数件出たのです。「台所は出るけどトイレだけ出ない。どうして?」というものです。

 これには理由があります。ポンプ周りの整備を怠っていたため、実は錆が大量に発生していました。この錆がポンプ交換したあとに、水と共に各部屋に流れます。ですから、「断水復旧後には赤水が出ます」と注意書きに書かれています。問題は、トイレのタンクへの水は、その前にストレーナーという網を通して、異物をストップさせる構造になっていることです。この網に赤錆が付着すると、水道管が目詰まりを起こすのです。そして、タンクへの給水ができなくなります。このために「トイレの水が出ない」ということになるのです。
 普通、断水中でもトイレは水がタンクに入っているため、一回は使用できます。しかし、いったん空になると、フロートが下に落ちてますから、断水が終わって、給水が復旧した時に、まっさきに自動的にトイレに水が入ってきます。ですから、断水中はトイレを使用しないか、給水のネジをしめて、水が通らないようにしておかないとだめなんです。管理会社の落ち度は、このことをもっと強調して事前に周知徹底しておくべきだった、ということ。ただ、「赤水が出ます」じゃだめなんです。

 激安管理会社にはいろいろな落とし穴があります。ご注意あれ。(激安会社の管理人も経験不足の素人ですから、こういうことは知りません)




2005/1  2005/7追記