管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 大雪 雪かきは管理人の仕事か??


2014/2

  2014年2月8日。全国的に大雪が降り、関東地方でも、「数十年に一度」という積雪量が観測され、あちこちで大雪の話題がにぎやかになっています。
 私のブログでも、2013年に書いた大雪の記事がものすごいアクセス数になっていて、「マンション 雪かき」でネット検索した人が大勢いたことがわかります。

 というわけで、このHPに、その記事を転載し、加筆したいと思います。

>>>>> 2013/1に書いたブログ記事

14日の大雪はすごかった。
その日は休日だったが、管理会社の緊急センターに「雪かきをして欲しい。じゃないと、歩けない」という、マンション住民からの電話があったらしく、緊急出動がかかった。まあ、会社の命令だし、たしかに、この雪じゃ大変だと思い、吹雪の中、出勤した。
とりあえず、「人が歩くところ」は、スコップで除雪した。といっても、「車椅子が通れればいい」という考えで、そのくらいの幅しか除雪しなかったが。なにしろ、このマンションは敷地面積が広大で、一人で、全部の除雪なんか到底無理。
暗くなってからも、まだ降雪は続いたが、さすがに、この寒さの中、作業を続けられないので、日没と共に作業はやめた。
この間、いろいろな住民が私の横を通ったが、「しかと」「ご苦労様、と声をかける」くらいで、誰一人、「いっしょにやります」という人はいなかった。一人 だけ、「自分の部屋からスコップを持って出てきた人」がいて、「この人、手伝ってくれるのか?」とあわい希望を抱いたが、この人は、自分の駐車場の部分を ちょっと雪かきして、それでおしまいだった。

実は、雪国以外の地域の場合、「管理委託契約」の中に、「除雪作業」は入っていないのが一般的である。要するに、「除雪作業は、管理会社の仕事ではない」ということ。「だったら、誰がやるの?」と思われるかもしれないが、その答えは、「住民自らがやるもの」である。

また、「管理委託契約」の「管理範囲」は、普通は、マンションの敷地内だけである。だから、「マンション前の道路」の除雪は、管理会社は関係ない。(とは いえ、日常の清掃や、道路で猫が車に引かれて死体が散乱している、なんて場合、管理人がやってるんだけど。これもいわば、ボランティア)

しかし、マンション住民で、このことを知っている人はほぼ皆無である。さっき、Yahoo知恵袋とかを見てみたが、「そんなの管理会社がやるものでしょ。管理費を払っているんだから」という意見が大勢を占めていた。
ひどい人になると、「住み込み管理人は24時間業務なんだから、夜中であっても除雪作業をするべきである」などと書いている人もいて、驚いた。おいおい、住み込み管理人だって、労働基準法は適用されるんだよ。1日に8時間以上働く契約にはなっていない。

とにかく、ネット情報を見ている限り、「マンション内のことは全部管理会社がやる。だから、一戸建てじゃなくて、マンションに住んでいるんだ。管理費を 払っているんだから、それくらいしろ」って考えている人の多いのには驚いた。「金を払っていれば、何をさせてもいい」のだろうか? 問題はその「金額」で あり、「1000円で、60分間のマッサージをさせているようなもの」だと思う。そんな激安のマッサージ屋さんなどない。

これは、管理会社側にも「非」があり、ちゃんと契約書に書いておくべきだと思う。「除雪作業をした場合は、特殊作業手当てで1万円いただきます」とか、最初からそういうふうにしておけばいいのである。

http://kurin1022.exblog.jp/17465480/
こんなブログを見つけた。新聞の投書欄に、マンション管理人さんが「雪かきは管理人の仕事なのか?」と疑問を呈す投書をしたらしい。この気持ち、よくわかる。雪かきはとにかく、重労働なのである。半日とか作業すると、その後3日間は、体がガタガタになる。
このブログを書いた人みたいに「常識がある」人は残念ながら少数であり、たいていのマンション住民は、「管理会社がやるもの」と思っている。
まあ、ボッタクリ金額の管理会社であれば、「それくらいサービスしてよ」と言ってもいいかもしれないが、うちのように、「合人社と比較しても、そんなに高くない」という格安管理委託費の会社の場合、とてもじゃないがサービスできない。
今、航空業界は、格安航空会社が増えているが、格安のところは、「座席が狭い」とか「ドリンクサービスがない」とか、格安の「わけ」がある。うちの管理会 社だって、この料金で、そんなになんでもかんでも仕事を押し付けられてはたまらないのである。(それじゃなくても、ゴミ分別の細分化徹底で、管理人の仕事 はものすごく増えている。)

さて、話は戻るが、14日は、電車も止まってしまったため、そのまま、駅前のビジネスホテルに宿泊した。
翌15日、いつもより、1時間早く出勤し、また、雪かきを再開する。前夜のうちに、また、けっこう積もってしまっていた。
自転車通勤の人も多いから、駐輪場の周辺の雪かきも行なった。15日は、清掃パートさんも加わったから、2人で協力して、かなり広範囲に除雪をした。でも、前日同様、住民は誰も手伝ってくれない。
ラッセル車でがばっと除雪するわけではなく、あくまでも、スコップによる人力作業である。たいしたことはできない。それに、一部は「凍結」し、雪ではなく、氷になってしまっており、そうなると、スコップがきかないのである。氷を割って、取り除くのは体力がいる。
会社からは、「14日に緊急出動した分、15日は、昼になったら帰っていいよ」と言われていたんだが、雪かきも終わらないし、そのうえ、「部屋の売買が決 まったので手続きして欲しい」という不動産屋が来るなど、本来の管理人業務も忙しく、結局、定時まで働いてしまった。正直、体がガタガタである。

そして、本日16日。体中が痛くて、動けない。そんな状態なのに、一部の悪質住民が、「ちょいと管理人。もっとちゃんと雪かきしろよ。あそこのマンション なんか、前の道路も含めて、すごくきれいに雪かきしてるじゃないの。あれくらいやりなさいよ」と言って来た。これで、カチンと来てしまった。
「管理委託契約の中に含まれていない仕事を無料でやってあげている」
「このマンションの住民は、誰一人、雪かきをしないが、あそこのマンションは管理人だけでなく、住民が数名出てきて、いっしょに除雪作業をしていた。だから、あんなふうにきれいになったんだ」
ということを懇切丁寧に説明してあげた。
私としては、「管理委託契約にないから、絶対にやらない」とは言わないのである。でもね、「大変ですね。お疲れ様です」とか、それくらいの言葉をかけてもいいでしょ。こっちはボランティアなんだから。

このマンションには、集会室にスッコップが数本常備してあるんだから、理事会の役員が出てきて、住民自らで、雪かきをすればいいんだよ。なんでもかんでも、管理会社に押し付けるなよ。こっちは、そんな給料もらってないんだから。

ということで、今、私はものすごく怒っているのであ〜る。

>>>>>

さて、今回の2014/2/8の記録的大雪で、ブログなどのネット上で大雪に関する書き込みがいろいろと発見できます。


http://ameblo.jp/satomurashi/entry-11769020765.html
管理組合理事長の経験もある「
株式会社マンション管理見直し本舗 代表」さんのブログ記事です。
記事を読むと、この人の「基本スタンス」は、「雪かきは、”日常清掃の延長上”にあり、管理人の仕事だと思っている」という感じです。
<これほどの「大雪」になると1人でやってもらうのも気の毒です。> この文を読むと、「基本的には管理人1名だけで除雪をしろ」というふうに解釈できます。あとに出てくる「雪かき道具が揃っていない」ということからも、このマンションでは「住民で雪かきをする」という意識がないことが見受けられます。
正直言って、この程度の認識の人が「マンション管理の専門家」を名乗っているのかと思うと情けなくなります。


続いては、ツイッター仲間でもある、現役長寿理事長「ミッキーさんのブログ」。
「雪への対処」
「雪かき」
この2日間のブログを読むと、「住民自らが自分たちでなんとかする」という意志を強く感じられます。素晴らしい組合さんだと思います。


続いては千葉県のマンション居住者さんのブログ
いなもんブログさん
住民が自分たちで除雪をする意識がまったく感じられない記述でした。でも、この人を非難する気にはなりません。だって、たいていのマンション住民が、こういう「誰かがやってくれる」と思って、マンションに住んでいるのが現実ですからねえ。しかたがないと思います。


次は千葉県の不動産会社さんのブログ
「誠実不動産」さん
ふだんは、仲介不動産会社の批判ばかりしている私なんですが、この記事はなかなか素晴らしいと感心しました。
>>>
こういう大雪や災害の際に試されるのが、マンションであればマンションの力。住んでいる人の人間力ではないでしょうか。
>>>
そう、この考えが大事です。管理会社などあてにせず、「自分たちのことは自分たちでなんとかする」という意識が大事なんです。災害時なんかはまさにそのとおりで、管理会社社員だって、「仕事先よりも自分の家族が大事」と思うのが普通です。私だって、先の大震災では、「家族が無事」だということを確認できたから、そのあと、ずっと残業して、勤務先マンションで働いたわけであり、もし、安否確認ができなかったら、勤務先マンションのことなんか、ほっぽりだして、まずは、自宅に帰ろうとしたはずです。


この他にも、いろいろなマンションの、「今回の大雪への対処方法」を見てみたんですが、「住民有志で雪かきを実施」したマンションは、やはり、「防災意識」も高くて、それ用の準備もちゃんとしているマンションですし、管理組合もきちんと機能しています。(意識がないと、除雪用スコップも用意してないわけだし)

 つまり、「大雪への対応方法」ひとつを見ただけで、そのマンションの「管理の質」(管理会社のことだけじゃなく、管理組合のことが大きいです)がわかってしまう、ということです。


なお、13年2月にブログに書いた記事ですが、それも転載しておきます。

>>>
普通は「雪かきに関する業務の契約はない」と書きました。
要するに、「管理人は雪かきはしない。やるのは住民の仕事。管理人がやっているとしたら、それは無償ボランティア」ということです。

さて、ご近所のマンション。地元の中堅管理会社が管理しているのですが、昨日、会社からマンションへFAXが流れてきたそうです。

「明日は積雪が予想されますが、管理委託契約には除雪作業は含まれておりません。除雪は住民の皆さんの手でお願いします」

と書かれていました。

まあ、先月の大雪で、体を壊した管理人も多かったようですから、管理会社も考えたんでしょうね。
でも、こういうふうに、会社として毅然とした態度で「契約していないことはしません」と宣言するって、えらいなあ。
尊敬に値します。会社がこういうふうにしてくれれば、管理人は助かります。
おそらく、そういう掲示物を出しても、結局、管理人が除雪するんですが、住民が「ボランティアでやってくれてるんだ」と思ってくれるだけでも全然違います。

他の管理会社も見習うべきです。
>>>
管理会社もこのように、正直に伝えるべきだと思います。「ええかっこしい」のフロント員だと、自分自身がやらないことだからと、「はい、管理人にやらせます」とか、無責任に答える奴もいます。そういうのはだめです。会津ではないですが、「ならぬことはならぬ」とはっきり言わないと、住民側が頭に乗ります。