管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 手作りはけっこうですが 


 
 先日、ある新聞を見ていたら、「居住者の手作りで、お金を節約するマンション」という記事がありました。

 このマンション、居住者の中に「電気工事」「建築」などの専門家がいるため、小さなことはみんな居住者でやってしまうことができて、工事費用を大幅に節約できているそうです。例えば、「防犯カメラ設置工事」や「自転車置き場増設工事」も自前でやってしまったそうです。記事中の他のマンションでは「鉄部塗装(足場を組まないと作業できない箇所などを除く、危険でない部分に限る)まで自分たちでやってしまった」ところもあるそうです。

 こんなのを見ると、「このマンションはえらいなあ。このやり方だと管理費も安くできるし、修繕積立金も多く残すことができる。素晴らしいなあ」と思う反面、「記事には出てこないけど、裏で管理人が苦労しているだろうなあ」とも思うわけです。
 普通、工事というのは業者に全部任せます。しかし、それを自前でやるとするといろいろな手間がかかります。きっと管理人はいろいろ手伝わされているはずです。”近隣への挨拶回り””資材の搬入保管””通行止めにする箇所があれば、コーンを置いたり、トラロープを張ったり、交通整理をしたり””さまざまな掲示物を作成したり””作業を補助したり””後片付けをしたり””ゴミを家庭ごみとしてごまかして出したり(本当は事業系ゴミとして処理しなければならないが、お金を節約するために家庭ごみとして出してしまう。管理人なら可能。)”などなど、いろいろやらされているのではないでしょうか?

 当マンションでも、昨年正月にゴミ回収方法が大幅に細分化され厳しくなったとき、ルール違反ゴミが大量に発生するため、それを一時的に保管するための物置が必要になった、ことがありました。こういうのは普通は管理会社に任せて、購入設置してもらうのですが、「安くあげよう」という話になり、結局、「自分たちでやろう」ということになったのですが、それは結果的には”何から何まで管理人がやる”と同じことになりました。「近くのホームセンターで売ってるんじゃないの? 管理人さんカタログもらってきてよ」「どのくらいのサイズがいいのかな? 管理人さん考えてよ」「あのホームセンターは時々バーゲンをするから、その時に安く買おうよ。いつバーゲンするか調べてよ」という具合です。買うのが決まっても、「組み立て料金8000円なんてもったいないよ。管理人さんにやってもらおう」ということになりました。結局、古い小さな物置を解体して、粗大ゴミとして処分する作業も、新しい物置を買って組み立てる作業も全部私がやらされました。下に敷くブロックも必要ですが、「ブロックも配送料がもったいない。管理人さんに台車で買ってきてもらおう」ということにもなりました。なんか、全部任されてしまったようです。たしかに、このやり方だと、従来の半額程度のお金で済んだ感じです。でも、こっちはクタクタです。

 「自分たちでやれば安く済む」というのは正論なんですが、その”自分たち”が”実は管理人を表す言葉”だったりすることがよくあるわけで、それは困ります。

 正直申し上げて、ゴミ分別の細分化がもたらした労働力増加は、はかりしれない甚大なものがあります。とにかく忙しくなりました。面倒になりました。このマンションの住民は、ゴミ出しマナーが最悪ですから、ルールを守った出し方にするには、結局は私たちが全部分別をやり直すことになります。これにかかる手間をいったら、もう大変。おまけに、毎日何かしらのゴミの日になってしまいましたから、体を休める日がありません。役所も、「こんな細かな分別、この地域の住民に理解させることなんて無理だよ。周知徹底の努力もろくにせずに。清掃局側は”警告”のシールを貼って、放置しておくだけだから楽だろうけど。後始末は全部こっちの仕事だぜ」といいたくなるようなことしか、やってくれません。それでも市長は「うまくいっている」「市民は、”難しいと思っていたけど実際にやったらすごく簡単でした”といってます。やればできるんです」と、実情を何にも知らずに、ウソついてます。

 昨年、大幅な賃金カットがあったため、生活は困窮し、バイトで疲弊し、管理人業のやる気も大幅にカットされました。それなのに、仕事は増える一方です。やってられないです。
 でも、「賃金カットのことは住民に言うな。それを知られると、”だったら、管理人人件費が下がったのだから、管理委託費も下げてくれ”と言われるに決まっている。それはまずいから」と会社にきつく口止めされているため、役員さんに対して、ぼやくこともできません。

 あ〜しんど。震度6強。

追加コラム <最近の”説明書”はわかりにくい>

 当時、この物置を組み立てるときにえらい苦労をしたのを思い出しました。というのは、説明書が難しいのです。私も年で、難しい文章を読むのは苦手なんですが(老眼もあるし)、それ以上にわかりにくいのは、この説明書が、今回購入した物の専用の説明書ではなく、このメーカーで販売している物置全部の説明書を兼ねているからです。このため、解説のイラストも購入した物置とは若干違うし、ところどころ、但し書きがあって、「ただし、ABC−5550 BCD−1234・・・・は除きます」とか、「BCG−737の場合はついていません」とか、「XFILE−2000では左右が反対です」とか、面倒でいちいちそんな但し書きなんか読んでられません。もともとわかりにくい解説文をさらに格段に難しくしています。
 一機種ずつ専用の説明書を作るよりははるかにコスト節約できるのでしょうが、ちょっと乱暴です。頭の悪い客のことを想定して欲しいです。
 これに限らず、デジカメなども、日本語・韓国語・中国語・英語・仏語・独語・スペイン語・ポルトガル語・タイ語・・・・など、多くの言語が1枚の解説書の中に盛り込まれているのがあります。私にとっては、日本語だけでいいのです。他はまったく不要なんです。ひとつ作って、それだけで全世界共用にしてるんでしょうが、ジャマです。わかりにくいったらありゃしない。外語大の教材じゃないんだから。


2005/1