管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 よそのマンションの掲示板 管理人の苦労をしのぶ 


 職業病なんでしょうかねえ。どこかに出かけた時、ついつい、そこら辺にあるマンションを覗いてしまいます。日曜日は普通は管理人さんは休みですから、オートロックでないマンションの場合、づかづか中に入っていろいろ見てしまいます。
 
 管理人室が外から丸見えというところ、けっこうあります。全面ガラス貼りでカーテンもないんです。勤務中はやりにくいでしょうね。下手にハナクソもほじくれません。整理下手な管理人だと、書類がめちゃくちゃになっている様子も全部かわります。みっともないんじゃないかなあ? パチンコ屋の景品交換所ほどにすることはないけど、窓部分だけ透明で、かつ、管理人不在時はカーテン閉めたほうがいいんじゃないかなあ。私はそう思うなあ。

 ところで、掲示板を見ると、そのマンションの様子を垣間見ることができます。今日見た掲示板、「ゴミは決められた場所に捨ててください。前の道路の中央分離帯に捨てる人がいて、近所から苦情が来ています。当然です」と、手書きで書いてありました。この
「当然です」という言葉に感銘しました。そうですよね、たしかにこのマンションの前には大きな道路が走っています。おまけにマンション前に横断歩道があり、渡ったところをちょっと進むと駅です。住民も毎日この横断歩道を渡っているのでしょう。面倒なゴミ分別が嫌な住民が、中央分離帯の草むらに捨ててしまうのでしょう。こういう、「信じられないひどいことをする」住民がいるんですよね。そして、私たち管理人は頭にきちゃうんです。「当然」という強い言葉を使わざるを得ない気持ちが、ひしひしわかります。

 別のマンションでは、「ゴミは分別してください」という掲示物が、狭い玄関ホールの中に6箇所貼ってありました。大変なんでしょうね、ここも。分別するなんて当然なんですけど、それをわざわざ書かなきゃなんないんです。「こういうふうに分別してください」と分別の方法を示すんじゃなくて、ただ「分別してください」というのは、つらいですね。まったくなんにもしないで放り投げる住民がいるんでしょう。

 こういった、「管理人の悲鳴」みたいな掲示があるマンションには、まず、「管理組合新聞」みたいなのはありません。管理会社の作った掲示物もありません。そう、「組合さんは何もしてくれない」「フロントも何もしてくれない」「自分でやるしかない」と追い込まれて書いてるんでしょう。

 何枚も同じ掲示物がある場合、普通は「コピー」だと思いますが、この「分別してください」は、1枚1枚微妙に字の大きさとか違います。つまり、全部手書きということです。「組合にコピー機がない」「コンビニコピーを使っても経費で落とせない」から書いたんでしょう。

 それから、よく見ると、管理人の書く文章にはけっこう誤字脱字があります。あとから、バッテンして修正してたりします。「学がない」、ということもあるし、「誰も校正してくれない」ということもあるでしょう。逆に、「こんな難しい言葉、ここの住民読めないよ」といった、難しい漢字を書く人もいます。手書きなのに、几帳面に、全然ブレのないまっすぐな文を書く人もいます。紙をよく見ると、文章を書く前に定規で罫線を引いてあったりします。(あとで消しゴムで消しているが、少し残っている) 細かい性格なんでしょうね。

 他人のマンションではありますが、玄関ホールに立って数分だけで、いろいろなことを想像してしまいます。日曜日の見学は、そこの管理人さんの顔を見ることはできませんが、なんとなくどんな人かわかってしまう気がします。

 
 


2005/1