管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 氷 雨 


つらい作業

 
 
 演歌の「氷雨」は好きですが、氷雨の中の屋外作業はつらいです。

 今は真冬。今日の雨は特に寒かった。かえって雪になったほうが濡れなくて楽かもしれません。今の新しいマンションは、ゴミ置き場が室内に設置されていることが多く、天候の問題、猫やカラスの被害の問題がありません。夏場の悪臭には困るそうですが、うちのように完全にオープンのゴミ置き場よりはずっといいと思います。野良猫・カラスにやられ放題、外部の人間もゴミ投げ放題、雨や風にさらされます。

 昨年から始まった非常に細かい分別のために、ゴミに関わる業務量が大幅に増えました。2〜3倍ではないでしょうか? 収集日も日曜以外毎日なにかしらのゴミ収集日になってますし、前なら1時間で済んでいたのが、2時間以上かかることもざらです。特に、「リサイクルの障害になるため、異物は絶対に入れるな」と言われている、紙資源ゴミでは、必ず異物を入れる(ビニールとか)人がいるので、結局、ほとんどの包みを開いて、中を確認し、異物を取り除く作業が必要になり、午前中まるまる、この作業に時間を取られます。おまけに「雨の日は中止。濡らしてはだめ」と言われているので、雨なのに出した人の分は、保管するために全部物置に運ばなければなりません。「午後から雨」という予報の日なんて最悪です。(とりあえず収集には来てくれるけど)

 他のマンションでは、「うちは、みんなルールどおりに分別してくれているから、管理人がやり直すことなんてほとんどないよ」というところも、奇跡的にあり、「住民のレベルって、同じ町内でも全然違うなあ」と驚きます。まあ、新ルール改正の前に集会室で行なった「説明会」の参加者が、”たった6人”(全世帯数は200強))だったことを考えると、うちの場合、「だらしない分別」は当然なのかもしれません。(事前告知、私としてはずいぶんがんばったんですけどね。) 市役所から、「新ルール説明ビデオ」(DVD)というのを借りてきて、「貸し出しします」としても、3ケ月の期間中借りたのは2人だけでした。(いっぺんにたくさんの人に貸せるように、自腹でVHSテープにコピーしたのに)

 私も清掃パートさんも、ゴミに関わる業務が他の業務を圧迫しています。清掃が十分にできなくなってきました。もちろん、仕事がこのように増えたのに、昨年4月からは、給料の大幅カットが行なわれていますから、もう、やる気はゼロです。玄関ドアのガラス清掃も、毎日できません。「くたびれた。今日やるはずの照明灯点検はやめよう」ということもあります。

 周辺の管理人さんも、住民レベルの低いところでは、皆一様に
「ゴミ分別ルールの改正は、ほとんどが管理人の肩に重責を負わせている。本来、個々の住民がすべきことを管理人に押し付けている。もう、クラクタだ。毎日、ゴミに振り回されている」と嘆いている人がたくさんいます。本当なら、仕事が増えるのですから、人員増や報酬増が必要なケースです。

 管理会社としても、「いいビジネスチャンス」として、「今まで清掃員がいなかったところに、清掃員を配置する」とか、「隔日勤務だった管理人を週6日勤務に変更する」とか、売り上げを増やす、絶好の機会だと思うのですが、どこの管理会社もそういう提案をしなかったようです。というより、管理会社のデスクに座っている連中は、ゴミ分別の大変さを何もわかっていないのです。だから、「現場のスタッフがちょっとがんばればいい」くらいにしか思っていなかったのです。でも、重労働に嫌気がさして、この1年にずいぶん周辺のマンション管理人も入れ替わっています。市単位で行なう改正なんだから、管理会社のほうで啓蒙用掲示物を作成して各現場に配布すれば楽なのに、大手管理会社(T急さんもD京さんもH工さんでさえも)でも、そういうことは一切せずに、すべて現場管理人に任せっきりだったようです。

 当マンションのように、PCを使って、スキャナーやデジカメも駆使して、実物の写真入分別表を作ることができるマンションなら、まだいいんですが、たいていのマンションはPCもワープロもありません。組合役員さんがそんな面倒な仕事をしてくれるわけもありません。結局、みんな、管理人が手書きでポスターを書いてました。絵とかイラスト入り、おまけにカラー(色鉛筆駆使)、なんていうのは、製作に何十時間もかかったはずです。ご苦労様です。「家で女房に協力してもらって作った」という人もいました。
 なんで、どこのマンションでも共通の制度なのに、会社でやらないで(高管協でやってもいいはずです)、各現場ごとにやらせるんですかね? ほんと不合理、無駄な労力です。

 ここまで読んだ人の中には、「役所のほうでちゃんとしたパンフを作るんじゃないの? それを配布したり、貼ったりすればいいんじゃないの?」と思う人もいるかもしれません。でも、役所で作ったパンフというのも、「現場のことをよく知らない、机上の空論だけ得意な事務職」が作ってますから、現実的じゃないんです。(小泉がよく口にする「非戦闘地域」みたいなものです)

 せめて、「家庭の主婦」を作成段階で参加させていれば、まだましなものができたと思うんですが、ろくに自分の家のゴミ分別もしない、男性職員が作ったものには、生活感がありません。だから、現実に即したパンフを我々が作りなおさなければならなかったのです。それから、役所としては「こういうふうにして欲しい」という理想を文字にしますが、そんな理想はあくまでも非現実的であって、「実際は、この程度の分類でいいですよ」というのもあります。実際に収集にあたる清掃局の職員も、「市で配布しているパンフは理想論ですから。納豆の入っていたパックを完全にきれいに洗うなんてこと全市民ができるはずないじゃないですか? あんなネバネバのもの、洗う手間や洗剤の量、水の量、その排水を処理する処理場の負担などを考えたら、そのまま燃やすほうが逆に環境にいいですよ」と言ってました。正論です。

 
マンション管理会社のフロントも現場を知らない。役人も現場を知らない。だから、だめなんです。ゴミの問題は、まずマンション管理人を集めて座談会でも開いて、検討すべきなんです。馬鹿な役人です。

 (案内用のビデオ、実は4本もコピーを作ってしまったので、他のマンションにも貸してあげました。こういう、管理会社の枠を超えた協力体制というのを作れたらいいんですけどね)

 それにしても、1年経過しても覚えないもの、これからどうやって住民全体に浸透させていけばいいのかな? 今年もずっとゴミまみれです。



2005/2