管理人はつらいよ
マンション管理最前線
イメージ戦略 |
「身近なものなのに、実態をほとんど知らない」
これがマンション管理です。当サイトを立ち上げた理由のひとつでもあります。「何をしているのかわからない」「良し悪しの基準もわからない」「安い高いもよくわからない」、そういう業態です。組合の役員を何年もつとめて、かつ、しっかり活動した人でないと、わからないでしょう。
こういう「なんだかわからないもの」を宣伝するときは、「イメージ」(虚像といってもいいかもしれません)が大事になります。
@先週読んだ業界紙
某中堅管理会社が「ISO取得した」と出てました。最近この手が多いです。ただ、いつもとちょっと違うのは、「すべての分野で取得!」という点です。実は”品質ISO”というのは、その会社の業務の中の1部分だけで取得することが可能なのです。たとえば、マンション管理会社が「清掃業務のみのISOを取った」ということも実際にあります。この場合、広告とか名刺などに必ず「○○部門 ISO取得」と明記しなければなりませんが、口頭では「うちの会社、ISOとったんですよ」といくらでも言えます。つまり、「あまり手間や経費はかけたくない。でも、うちの会社もなんらかのISO資格を取りたい。他の会社に遅れたくない」という見栄っ張りの会社では、限定した1部門だけISOを取って、いかにも全社的にとったように吹聴することがあります。
そういうことがわかっている人に対して、「うちは一部門だけでなく、全社的に全部門で取ったんです」ということを強調したい会社の記事だったのです。
ただし、そうはいっても、ISOの審査というのは、すべての部署や現場を見回って審査するのではありません。例えば、同じ警備業務でも、A現場・B現場・C現場・・・・・・といろいろな現場があります。しかし、その中でISOの審査が行なわれるのは、1箇所だけです。そして、そこの現場に審査に行くことは事前に予告されます。つまり、A現場だけ取り繕えば、その会社はISOを取得できるのです。
だいたい、ISOを取得するのに「たった4ケ月で取った」なんてことはおかしいのです。すべてのシステムを構築しなおす大事業、すべての従業員の思考回路を変える革命的なことを、そんな短時間に達成できるはずがありません。マンション管理のスタッフなんてろくなのがいないのに、そんな頭の固い連中を生まれ変わらせることなど無理です。まゆつばな資格です。
ただ、ド素人相手(公務員含む)には、水戸黄門の印籠のような効果があります。まさしくイメージ先行なのです。
A全国版一般紙に全面広告を載せるG社
激安で「業界の革命児」と呼ばれるG社。とにかく安い管理委託費を提示して、どんどん扱い棟数を伸ばしています。ただし、現在はその化けの皮が少しはがれてきたせいか(つまり、「安かろう悪かろう」ということ)、「安いだけの管理しかしない会社じゃ困る」と思う組合もいるようで、どちらかというと、”管理をすべて任せたい”、やる気の薄い組合の場合、多少お金をかけても、面倒見のいい管理会社のほうが選ばれる状況にあります。新規契約伸び率も鈍化してきたようです。ただ、G社の場合、100円ショップみたいなもので、「すごい安いんだから、こんなもんだ」と思えばいいわけで、その点では優良な会社です。コストパフォーマンスのいい会社だと思います。
この会社、広告の出し方が非常にうまいです。自分の宣伝だけ、バンと前面に出す方法は取りません。枠外に小さく「全面広告」と書いてあるものの、パッと見には「記事」に見える広告を作ります。実はその「記事」もG社の広告の一部なのですが。
「マンションを購入する時は駐車場の規格に注意しよう。立体駐車場の場合、いま人気のミニバンは置けないことが多い」といった”役に立つ情報”を掲載して、読者の目をひきます。そして「記事」の中には「G社がいいですよ」とは書きません。その記事の下の部分に”別枠”で自社だけの広告をはめこみます。保険業などでも使われる広告手法です。
この場合、「上の記事はいかにも、その新聞社の記者が書いた"公正”なもの」のように読者は錯覚します。その記事に「ですから、管理会社の良し悪しが大事なんです」とか、「管理委託費を安くする方法はあります」といった文章が書かれてたら、同じページ内に出ているG社の広告を目にすると、「G社がいいんじゃないだろうか?」と誰でも思ってしまいます。巧妙なイメージ戦略です。
また、このG社は「マンション管理に役立つ冊子」も無料で郵送してくれます。私も持ってますが、実際に役立ついい本です。この本の中にも「G社がいですよ。G社にしましょうね」といった宣伝は出てきません。「製作:G社」となっているだけです。でも、「こんないい本をタダで配ってくれるなんて、いい会社だなあ」と好感を持ってしまいます。
講演会もやってます。これも有益な内容です。この中にも会社名はあまり前面には出てきません。ただし、参考資料の中に宣伝物が混ぜられ、しっかり宣伝してます。
頭のいい組合理事長さんは、「G社に変える気はないけれど、無料冊子や無料講演会は上手に利用させてもらう」というチャッカリした人もいます。
G社さんは、こういったイメージ戦略は、莫大なお金をかけて素晴らしいのですが、その実態が伴わないのです。つまり、「金をかけた豪華な餌で釣るが、釣った魚に餌はやらない」ようなものです。会社が大きくなってきて、「コンピューターを使った経理作業」とかは、スケールメリットの恩恵で”使える”のですが、マンション管理の仕事の本質は人間によるものが大部分です。当サイトを読めばおわかりいただけるでしょう。この「人が行なう業務」に関しては、「人材に金をかけない」姿勢では無理があるんです。ですから、「表面上は立派でも中身の伴わない管理会社」という評判になるのです。包装紙や箱ばかり立派でも、いや、立派にすればするほど、中身が貧弱だとお客さんは落胆します。結婚式のご祝儀の時に、1万円しか入れないのに、1000円もする立派な水引の祝儀袋を使っている、みたいなものです。
B”ナンバー1です” と連呼するH社
大手管理会社H社。この会社の売り物は、「○○誌(某有名経済雑誌)、○年連続ナンバー1に選ばれました」というもの。うちは、この雑誌で毎年、「日本一の管理会社」のお墨付きをもらっているのです、と宣伝してます。なんか愚かですよね。どうせ、「うちを一番にしてくれ」って、多額のお布施をあげているに違いないのに。だって、この会社の実情よく知ってますけど、ひどいもんですよ。ISO資格取ってるくせに、「給水タンクの定期清掃」忘れるような会社なんですから。「日本一の研修施設で優秀な職員を育成・・・・」とも書いてますね。施設は確かに立派で、日本一か二番目です。でも、施設が立派ならそれでいいかというものでもないでしょう。研修中に寝ているものもいれば、起きてても何も覚えない人もいます。とにかく、「きちんとした待遇で、優秀な人材を採用する」という体制をとっていなければ、ちゃんとしたスタッフは入社しません。ちゃんとしてない者に、いくら研修したって、だめなもんはだめなんです。ザルに水を何トンもかけても、中には残らないのです。建物だけ立派ならそれでいい、という思想はいかにも建設会社系列という感じです。ソフトに目がいかないんですね。
しかし、本当にマンション管理会社というのはいろいろですね。お客さんである組合さんのほうで優劣の基準をきちんと持っていないと、何が良くて何が悪いのかわかりません。
例えば、ありふれた定期点検でも・・・・
A:いちおう定期点検は実施するが、「事前告知もしない」「報告書も組合には見せずに社へ直行」「点検業者から何か指摘事項があってもしらんぷり」なんて会社、実際にありますからね。築年数が浅くて、特に大きな経年劣化がないマンションだと、これでもボロが出ませんから。
B:「やったふりして、実はやっていない」完全な詐欺。
C:報告書を理事長に渡すが、ただ単に渡すだけ。何の備考報告・補佐もない。業者から指摘事項があっても、理事長が何も言わなければ管理会社としても何もしない。あとで、そのことが問題になっても、「理事長にはちゃんと見せました。気がつかないほうが悪い」とばっくれます。(確かに、メクラ認印を押すだけの理事長も悪いです)
D:報告書を理事長に渡し、特記事項について、「どうしますか?」と聞く。まあ、まともな会社ならこうでしょう。
E:業者から特記事項が上がってきた段階で、社内で善後策を検討し、その結果工事が必要の場合は、見積もりをとる。理事長には報告書とともに、「この場合、こうしたほうがいいですね。普通はこう対処します。ちなみに、費用はこれだけかかります・・・・」と、至れり尽くせり、「うちの会社に全部お任せ下さい」的な報告をする
F:Eにプラスして、工事業者の見積もりを取る際に2社以上からとり、「相見積もりをとりました」と報告する。工事の方法についても、1種類だけではなく、数種類提案する。
などなど。もちろん、こういった”管理会社の対応の違い”というのは、組合の姿勢の違いによるものが大きいです。「組合と管理会社は鏡のようなもの」「太鼓のようなもの。強く叩かないと強い音は出ない」・・・などと比喩される所以です。
まあ、とにかく「巧言令色少なし仁」は真実だと思います。皆さん、ご注意あれ。