管理人はつらいよ
マンション管理最前線
ペイオフ解禁 管理会社経営破たん |
これを書いているのは2005年3月です。
いよいよペイオフ解禁ということで、新聞雑誌では「マンションの管理組合のお金をどうするか?」という話題がよくとりあげられています。
当マンションは200超の戸数。修繕積立金の合計は数千万円になります。今はどうしているかというと、各預金が1000万円を超えないように、銀行を細かく分けて、口座を分散させて安全対策をとっています。この方法は最も一般的なものかもしれません。ただ、「すまいる債」とか「金融商品」のようなものはありません。いまから考えると、「金利の高い時に買っておけばよかったんじゃないの?」という気がします。規模の大きいマンションで、上手に金融商品を買ったマンションでは、年間の金利が数十万円になり、「このお金で、役員報酬制定の議案を可決し、支払っている」というところもあるようです。規模が大きければ大きいほど、財産もおおきくなるわけで、そういったマンション(特に団地型)は、金融に関する知識の有無で、ずいぶんお金を得したり、無駄にしたり、差が激しくなります。いずれにしろ無知は損です。管理会社も、最適の資金運用を提案できる頭が欲しいです。当社には、無理です。
ところで、口座がいくつもあるということは、実は非常に面倒です。事務的な手間はずごくかかり、管理会社としては労力をロスします。管理委託費削減の流れの中、事務作業の負担になっています。
「残高証明書発行手数料」・・・年に1回、総会資料に必ず添付する書類です。(ひどい管理会社はやらないところがあります) これ、1口座につき、数百円かかります。普通預金なら、これで年間金利が飛んでしまいます。もちろん、銀行に行く手間もバカになりません。いろいろな銀行にいかなければなりませんから。
「理事長変更時の手続き」・・・・”管理組合を法人化している””理事長はここ10年ずっと同じ人”というなら関係ないんですが、”毎年理事長が交代する”という組合では、毎年、口座の名義を変更しなければなりません。これが実はすごく大変なんです。管理会社泣かせです。今の銀行は、手続きが非常に厳しくなっており、「理事長印があればいい」というわけにはいきません。”写真付の身分証明書が必要””代理人が来店する場合は委任状が必要””代理人はだめ。必ず本人が行かないと”・・・・と、揃える書類の量がいっぱいで、それをすべての口座に関して行なうわけですから、面倒くさいの何の。銀行によって対応が違ったりするし。
いい加減な管理会社の場合、面倒な仕事をしたくないために、名義変更をしないで、ずっと、昔の理事長名を使用しているマンションもあります。 「新理事長に、1日会社を休んでもらうのも申し訳ないので、昨年のまま行きましょうよ」とかいって説明します。
そんなわけで今、急に注目を集めているのが、各行でペイオフ対策の切り札として用意された「決済性預金」というものです。
「銀行が破綻しても全額保護される」 ただし、「金利はゼロ」 という特殊な預金です。
今の銀行の金利など、残高証明書1通で消えてしまうような、超〜極小金利ですから、利息ゼロでも問題ないです。「通帳をひとつにできて、全額保護されるなら、こっちのほう全然いい」ということで、決済性預金へ移行する組合がずいぶんあるそうです。管理会社が「自分たちの仕事を減らすために」、積極的に進めている背景もあります。当マンションでも、次回理事会で検討されることになっています。
ところで、このようにいろいろな金融商品のことを考える組合・管理会社もあれば、まったく無関心なところもいまだにあります。
先日経営破たんした「和泉創建」という管理会社、高管協に加盟していたれっきとした会社ですが、ずいぶんひどいことをやっていました。組合さんのお金を2億円ほど横領していました。1組合で3000万円強、盗られた組合もあります。高管協加入会社には保険制度がありますが、これで補填されるのは管理費1ヶ月分だけ。高額な横領事件においてはわずかな金額です。でもね、詐欺とか頭を使った横領で盗まれるなら、「大変でしたね」「ひどい会社にだまされてかわいそうに」・・・と同情する気になるんですが、
「通帳と印鑑の両方を管理会社に預っぱなし」「通帳の記帳はいちども見たことがない。コピー提出を求めたこともない」
というのですから、同情どころかあきれ果ててしまいます。いまだに、こんなバカな組合が存在しているとは。「高齢者が多く、そういうことに無関心だった」とか弁解してますが、そんなの言い訳になりません。「家の玄関に現金3000万円を置いて、ドアをあけたまま、留守にしている」というレベルの愚かな話です。バカじゃないの? 横山ホットブラザーズがノコギリ持って来て、始めちゃいますよ。 「おまえはアホか〜?」
あわてて刑事告訴したそうですが、おそらく戻ってこないんじゃないでしょうかねえ? 自業自得ですね。もっとも、こういうのは理事長の責任というより、マンション住民全体の責任ですから、理事長や役員を責めてはいけません。
でも、こういう「おばかさん」の組合って、いまだにあるようです。ある管理人さんから聞いた話。
「うちのマンション、いまだに印鑑と通帳の両方を管理会社に預けっぱなしなんですよ。会社側に”まずいでしょ”と言ったら、”うちは横領なんかしないよ。だから大丈夫。支払いのたびに毎回理事長から印鑑もらってたら面倒でしょ。あなた(=管理人)の仕事も増えちゃうよ。楽なほうがいいでしょ”と否定されました。それで、理事長に相談したら、”お宅とは長い付き合いだから信用してますよ。それに、印鑑なんてそんな大事なものを僕が預かるのは怖いよ。責任持ちたくないし。お宅に任せるよ”ととりつくしまはなし。いまだに、こういう意識なんですよ。山内さん、どうしたらいいの?」
管理人から、こうやって諭すのは勇気が要ります。実際、出金伝票の事務処理が加わり、仕事が増えるのですから。こういう貴重な意見を言ってくれる管理人は大事にしなきゃ。それにしても、いまだに「管理会社を信用している」人がいるなんて、日本はいい国です。「もし、横領されたら、理事長、あなたが弁償しなければなりませんよ」と脅してあげてください。実際、横領事件はたくさんあるんですから。
しかし、こういうのって「横領」なのかな? まったく頭を使わず、工夫もすることなく、小学生でもできることでしょう? だって、手元に印鑑と通帳の両方あるんだから。映画「スティング」にの詐欺なんか、ずいぶん手間隙かけてしかけてるのに。
バカな組合相手にすると疲れます。
追記:破綻といえば、私が加入している住宅金融公庫で強制加入させられた火災保険、それを引き受けていた保険会社が破綻したために、当初の保険金額全額が出ないようになってしまいました。1割までいきませんが、何%か目減りする計算です。強制加入保険なのに、そんなのひどいぞ。