管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

 小口現金という制度 



 
 「通帳と印鑑」の両方を持っていた管理会社が、組合理事長から、「印鑑は私の方に預けてくれないか?」と要請された時に断る理由のひとつとして、”小さな買い物のこと”があります。

 つまり、組合内に小口現金という制度がない場合(管理会社に通帳と印鑑を両方預けるような、”すべてお任せ”の組合の場合、小口現金制度がないことが多い)、「理事長さん、印鑑をあなたに預けると、これからは支出1件ごとに出金伝票を起票して、理事長に署名捺印してもらわなければなりません。ゴミ箱ひとつ買うにしてもそうなります。セロテープひとつでもそうです。すごく面倒になりますけど、それでもいいですか?」と、半分脅迫して翻意させるのです。たしかに、そんなふうに言われたら、「おれだって忙しいし、そんな面倒なこと嫌だなあ」と誰でも思うでしょう。

 さて、そんな面倒なことをしなくてもいいように、普通の組合では「小口現金」といいう制度があります。これは、「あらかじめ、担当役員が数万円の現金を預かっておいて、小さな買い物はそこから支出する。出金伝票を起票するのは、まとまった現金をもらう時だけ、あとは、買い物のレシートを保管しておけばいい」という制度です。担当役員というのは、普通は「会計担当」ということで、本来の会計担当役員というのは組合全体の会計をすべきなんですが、管理会社に会計作業を任せているところでは、「会計担当役員の役割=小口現金の管理」となっているところも珍しくありません。


 小口現金制度は必須の制度です。特に私のところでは、会社でなにもしてくれないため、事務用品とかも管理人が買いにいきます。コピー用紙も買いにいきます。去年始まった新ゴミ制度ではいろいろなものが必要になったため、購入するたびにレシートを会計役員に渡してお金をもらっていました。中には1万円を超える買い物もあり、こういうときは貧乏管理人としては「数日間とはいえ、立替払いは嫌だなあ」と思います。

 今は小売店舗では領収書を書いてくれるところが少なくなり、「このレシートは領収書として有効です」といって、レシートしかくれないところが多いです。POSシステムになり、レシートにはすべての品物名が記載されているんですが、店によっては、「90リットル プラスティックゴミ箱」とか書いてなくて、「MCE 90 SAB」などと商品の記号で書かれていることがあります。これだと、第三者がなんだかわからないため、メモ用紙を添えて、そこに「品名」「購入の理由」「購入者氏名」などを記入してから渡しています。少し面倒です。

 小口現金は、総会などでの会計報告としては、基本的には最初の現金を役員へ渡せばそれで終わりで、「○月○日 小口現金 現金5万円支出」といった記載になり、当マンションのように、わりと鷹揚なところでは、その内容は細かく詮索されず、総会資料にも載せません。逆に厳しいところでは、「会計役員が何か悪いことをしないように」と、「理事会の席上で四半期ごとに中間報告をする」「総会資料にも、小口現金会計の現金出納帳のコピーを添付する」といった細かな処理をしているところがあります。
 私は会計のプロではないため、よくわからないのですが、「年度末に余った小口現金はどういう扱いになるのか?」迷う組合が多いらしく、「管理費会計としては、現金を担当役員に渡した段階で、”使われた”として処理するのであるが、実際には余ったお金が来期に繰り越されるわけで、これはどう処理するのかな?」などとフロント君が悩んでいたりします。(どなたか、教えてくださいませ)

 小口現金の使用法で悩むのは、「いくらまでの買い物が小口現金なんだ?」ということです。消しゴム1個なら、もちろん「小口現金」ですが、2万円程度のもの、例えば、FAX付電話機とか、そういったある程度高額な買い物をする時に、理事長が、「これは小口かな? どうかな?」と悩んでます。組合によっては明確に「○○円までの買い物」と規定しているところもあるようですが。



2005/3