管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

二重人格・・・


 
 私って、恥ずかしながら、まったくもって、人を見る目がない人間なんです。つまり、「騙されやすいバカ」なのです。いい年なのに、いつまでたっても騙されます。

1. ある日、共用廊下に「やられた」犬の糞を処理していました。嫌な仕事ですが、やらないわけにはいきません。放っておくと、それを誰かがふんづけて、汚れが広がる可能性もあります。
 その時、ご婦人がとおりかかり、「どうしたんですか? あれ! これって犬の糞? ひどいことするわね。しつけがなってないのよね。だめな飼い主ね。こういう人がいるから管理人さんが苦労するのよね。ホント、大変ですね。ご苦労様です。私も手伝ってあげたいけど、今買い物の帰りで食料品持ってるし・・」「どうも、お心遣いありがとうございます。大丈夫ですよ、私一人で処理しますから。でも、うちのマンションは水道がないために、廊下を水で洗うことができないんで、バケツで何回か水をくんできて、きれいにします。大変な仕事です。こうやって、お声をかけていただけるだけでもありがたいです。他の皆さんも、○○さんのように暖かい心の方ばかりだといいんですが・・・」
 と、「ひどい住民もいるけど、いい人もいるなあ」と感心しました。・・・・・・・   でも、その後しばらくしたら、実はこのご婦人こそが、犬に糞をさせた張本人だったことがわかりました。

 情けないです。

2. 昨年の年始のこと。ゴミ分別の新制度が始まった際、大きな混乱が生じました。そんな時、「管理人さん、いちおう説明書どおりに分別してみたんですが、これでいいでしょうか? 確認してもらえないですか?」とわざわざ私のところにきて、ゴミ袋の中を開いて見せてくれるご婦人Cさんがいました。きちんと正確に分別されていて100点満点でした。「OKですよ」「そう、よかった。おかしなゴミを出して、管理人さんや清掃員さんに迷惑かけたら申し訳ないですから。このマンションは住民のモラルが低いから、ひどいゴミが多いでしょう。大変ですね。いつもご苦労されて・・・」と、ねぎらいの言葉をかけていただき、私は泣きそうに感激しました。「こんなにいい人もいるというのに、一方ではまったく分別しない無分別な人もいる。マンション住民というのはさまざまだ」と思ったしだいです。
 その後のある日。10階の廊下を巡回中の私の目に、遠く離れたゴミ集積場で、「おいおい、今頃ゴミ出すなよ。もう整理を終わったのに。ゴミ出すのは朝の9時までだぞ」と思わせる人間の姿が入ってきました。ゴミ置き場に行って、そのゴミ袋を確認したら、全然分別していない、ひどいものでした。「いったい、誰のだ?」と中身を探してみると、なんと、 Cさんでした。



 人間を信じてはいけないのでしょうか?


2005/4