管理人はつらいよ
マンション管理最前線
はしご車が使えない |
近くで火災がありました。ヘリコプターも飛び回るような大きな火災でした。個々も含め、周囲は大騒ぎでした。そのマンションは駅前の密集地に立っています。そして、火災を起こした部屋のベランダの前にも別のマンションが建っています。つまり、ハシゴ車が使えないのです。火災部屋は5階で、ハシゴ車があれば簡単に救出できるのですが、それができないために、救出に手間取り、何人か煙にまかれて、重体だそうです。
近くでその様子を見ていたという当マンションの住民が興奮して言ってました。「ハシゴ車が来ても、入れないのよ。届かないのよ。あれじゃ大変だわ」。それを聞いて私は思いました。「他人事じゃない」と。
「奥さん、うちだって、同じですよ。奥さんの部屋って東棟の6階ですよね。うちのマンションの場合、西棟はなんとかハシゴ車が入ってこれますが、東棟は入れませんよ」「え? あれ? ・・・・ そういえば、あんな狭いところに消防車もハシゴ車も入れるわけないわよね。言われてみればそうだわ。今まで全然気にしてなかったから」
地震だなんだと日本中が災害を気にしているのに、当マンション住民のレベルはこの程度です。この奥さんのみならず、他の人も全然気にしてません。おそらく、実際に火事が起きて2〜3人死なないと、切実に考えることはないでしょう。
「ねえ、奥さん。ハシゴ車が入れない場合は、ベランダからなんとか逃げなければならないけど、自分の部屋からどういうルートで1階まで降りるのか、考えたことありますか?」
「いいえ、ないわ」
「じゃあ、奥さんの家族は全員焼死ですよ」
「そんなあ!」
「ただ、ルートがわかっていてもきっと死にますね。なぜなら、うちのマンションのベランダには荷物がいっぱいで、緊急時の避難通路としては使えないからです。私が何度も何度も違反部屋を注意してますが、誰も荷物をどかしてくれません。消防点検の時だけ、一時的にどかして、その後すぐにもとどおりに戻す人もいます。○○号室なんて、すごい大きな物置をベランダに置いています。避難路を完全に封鎖しているのです。管理会社からも組合さんに指摘してますが、何も改善されません。このマンションで火事が起きたら、みんな死にますよ。自業自得です」
「ふ〜ん、そんなにひどいの」
超高層マンションの防災体制の話題になると、「ハシゴ車が届かないから危険」と、よく指摘されますが、低いマンションでもハシゴ車が使えないところはいくらでもあるし、ベランダに避難ハッチがあっても事実上使用不可のマンションもたくさんあります。消防点検では、ハッチの機能検査しかしませんが、全戸のベランダを点検することも、項目に加えるべきだと思います。点検業者も、ただ点検するだけではなく、是正させることも業務としてやってくれないものでしょうか? 管理会社や管理人名でいくら指摘しても、「うるせいや、おまえには関係ないやろ」で終わりですから。
ちなみに当マンション、竣工以来一度も防災訓練やったことないそうです。(管理会社も怠慢)