管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

鉄部塗装工事 A




本番が始まりました。いろいろと苦労があります。(若干補足説明入れました)


  こんなに大変な仕事だとは? トホホのホ。


騙り業者出現>
 さて、工事開始が近づいてきました。そんな時、またまた悪質な業者が跋扈したようです。掲示板の工事内容を見て、狙いをつけたのでしょう。私のいない夜間に、「今度工事があるんですけど、ちょっとお部屋の中見せてくれませんか?・・・・」という営業トークで、部屋の中に入り、無理やり悪いところを見つけて、リフォームさせようとする業者です。

 以前から、こういった種類の業者には気をつけるように掲示物等で注意を促しているんですが、タイミングがばっちりなので、「組合で頼んだ業者なら安心だろう」とか誤解して、部屋の中に入れてしまう人がいます。私の方でも、「今度の鉄部塗装の業者は、○○です。この業者が各部屋を訪れる際は、”○○です”と必ず名乗ることになっていますから、名乗らないのは怪しい業者です」という掲示を貼っておきましたが、住民が、そんな固有名詞を覚えるはずもなく、「今度の工事の関係なのかな?」と、つい心を許してしまうのです。とはいえ、日頃の教育の賜物か、怪しいとは思うようで、翌日、「管理人さん、ゆうべ、こんな業者が来たんだけど大丈夫かなあ・・・」と質問をしてくれるので、被害を受けるような事態にまではなっていません。ただ、ここのように大きなマンションだと、翌朝にそういう質問が10〜20どっと来るんです。留守番電話に入っていることもあります。対面の場合は、一人一人と話をして事情を聞いて、「今度の工事とは無関係な業者です。相手にしないで下さい」と回答します。留守番電話を入れてくれた住民には手紙を書きます。
 質問という意味でなくて、おせっかいというか、「管理人さん、ゆうべ怪しい業者が来たのよ。今度の工事にかこつけて騙そうっという魂胆みたいよ。みんなに”注意するように”って掲示を作ってよ」と業務命令してくれるありがたい住民もいます。とにかく、そういう業者が1回来ると、翌朝は大変です。ただし、逆の場合もあって困りました。これは昼間なんですが、本物の鉄部塗装業者が住民から門前払いを食って、相手にしてもらえないのです。この社員、私がさんざん、「住民を訪ねるときは、会社名をちゃんと名乗れ」と指示したのに、それに従わず、「あの〜、工事のものですけど・・」とだけ言い、「何よ工事って? あんた怪しいわね。鉄部塗装の業者ならちゃんと業者名を名乗るはずよ。あんた詐欺師でしょ」「ガチャ!」(インターホンが切れる音)、と相手にしてもらえなくて、「管理人さん。○○号室の人、私の話を聞いてくれないんですけど、なんとかして下さい」と泣き付いてくるのです。そういうときは、私が同行して、「あの、管理人ですけど。この業者さんは本物ですから心配ないですよ。メーターボックスの塗装をする時に、中に入っている荷物がじゃまなんですって。メーターボックスの中、整理してくれませんか?」と説明してあげます。(当マンションのように、狭い部屋のマンションの場合、メーターボックスを荷物入れとして使っている人がけっこういます。この人も、スキーの靴が入っていました。)

マンション内への立入について、「入り口で受付をして、バッジを渡す・・・」といった方法をとっておられるマンションもあるようですが、当方では昼夜問わず無理です。当マンションは、「オートロックではない」「外から中に入る経路が、正面玄関の他に5箇所もある。マンションの裏も大きな道路に接しているため、そこにも裏口(とはいえないような大きな入り口)があって、多くの出入りがあります。このため、出入りのチェックは事実上不可。防犯カメラ設置も理事会の年度が替わったら、自然消滅。”他の出入り口を閉鎖しよう”という動きも過去にあったが、”不便になる”、と否決」というお寒い防犯体制です。また、こういった業者はたいてい、管理人のいない夜間時間に来ます。私は監視できません。「怪しい業者とは話さない」「もし、話した場合は、むこうの名刺やパンフレットなど、業者名を特定できる印刷物をもらっておいて」と住民にはお願いしてますが、けっこう長く話しているのに、もらってくれません。むこうもなかなか渡さないんですけど。だから、翌日、「○○という業者が来たんだけど、大丈夫?」という質問ではなく、「なんか怪しい人が来たんだけど」となります。それじゃ、対処できないですよ。


<駐車車両>
 車には本当に苦労させられます。事前の打ち合わせで、「職人さんが通勤用に乗ってくる車両は、うまく相乗りしてもらって、3台以内に抑える」と約束したのに、これが守られません。若い兄ちゃんが、フェアレディに乗ってやってきたりします。「なんとか敷地内に駐車させてくれませんか?」と聞くことも無く、駐車禁止区域に勝手に置いてあります。おまけに、打ち合わせの時に、「工事関係者の車両には、”塗装工事関係車両”と書いたプレートをフロントガラスの内側に必ず置く」と約束してあるのに、2〜3日たつともう忘れていて、約束が守られません。それでも、バンとかトラックなら、見れば「工事関係だな」と推測できますが、スポーツカーなんかだと、「誰だこんなの乗り入れて。”工事期間中は一切車両進入禁止”と大きな看板作ったのに」と憤慨します。私だけでなくて、居住者からも、「車が入っていてるぞ、取り締まれ」と怒られます。
 とにかく、工事の最中は足場をかけることもあり、契約駐車場の車両と、工事関係の車両、そしてゴミ収集車と緊急車両、これ以外は進入禁止としました。宅配業者もダメです。生協も食材配達業者もダメです。でも、無視して、入ってくる奴がいます。入ってきたはいいけど、その後に工事のトラックが入ってきて、出られなくなって、「すいません出して下さい!」「あんたが、看板無視して無理やり入ってきたのが悪い。少し待ってろ」と反省させることもあります。ただ、相手が住民だと、あまり強いことも言えず、「困りますネエ。次からはやめてくださいね」と丁寧に叱ります。
 それに、こういう時に限って不運なことが起きます。リフォームする部屋があったり、大きな電気製品を買って配達してもらう部屋があったり、引越しがあったり、と車が入らないと困るケースがあるのです。困惑してます。普通、引越しは日曜だから、工事とかぶらないんですが、平日にやったりするんです。それも予告なしに。相手するのは大変です。ついてないです。


<4トントラック>
 当マンションの鉄部塗装工事はおおがかりな工事のため、資材搬入のために4トントラックが入ってくることがあります。こんな大きな車がマンション内に入ると大変なので、事前に「ゴミの収集と重ならないように」とか、時間調整の準備をしてあります。そして、入構時間も決めてあります。それなのに、「道路が渋滞で遅れまして」と約束の時間より2時間遅れで到着し、「やばいなあ」と思いつつ、荷物を下ろしていると、案の定、ゴミ収集車がやってきて、トラックがじゃまして、集積場まで入っていけません。「なにやってるんだよ」と清掃局の職員に怒られ、「悪いんだけど、時間を改めて来てくれない?」と私が頭を下げて、いったん帰ってもらいました。私の責任じゃないんだけどね。
 それに、この4トントラックが入ってくる時に、外の道路とマンション内の道路の境目にあるコンクリの段差を壊してしまいました。「なんてことするんだ! おまえらが直せ」と訴えました。「うちらの責任だから、直しますけど、また、トラックが何度も出入りするので、工事が全部終わってからにしませんか?」と言われ、理事長も、「それもそうだなあ」とうなづき、工事期間中は壊れたままになりました。しかし、そういう事情を知らない住民は、「管理人さん、あそこのコンクリ壊されてるよ。業者に文句言わなくていいの?」と忠告してくれます。ありがとうございます。トホホ。


<責任者が来ない>
 見積もりの時とか、打ち合わせの時に話をした”自称総責任者”が、いざ工事が始まると、あまり現場に顔を見せません。「何かあったときは、○○さんへ連絡して下さい」と、この総責任者と相談することになっているのですが、なんかあったときにいないのです。それで、携帯に電話をかけて相談することが多いです。電話代はかかるし、対応は遅いし、何のための現場責任者なのか意味ないです。

 それに、今回の工事で、「なにそれ?」と思うことがあります。当マンションは、大きく分けると、東棟と西棟に分けられるのですが、実際に工事を担当する会社が「棟ごとに違う」ようなのです。東棟は、今回、組合から発注したJ社が自社のスタッフで施工しているのですが、西棟に関してはどうやら他社(D社)に丸投げしているようです。(下請けってことです)
 このため、お互いの連携がだめなんです。現場ではまったく別の工事が行なわれているかのごとく進行しているようです。たとえば、東棟の住民が、職人の一人を捕まえて、「ねえ、お兄ちゃん。うちのメーターボックスの塗装はいつやるの?」と聞いても、「あ、東棟ですか? それはJ社なんで、僕わかりません。向こうに聞いてください」とか答えるのです。その兄ちゃんとしたら、そう答えるしかないのでしょうけど、そんな答えをされると当然、その住民は頭にきて私のところに来て文句をいいます。「なんなのよ。現場の人間がなんでわからないのよ。管理会社は何してるのよ。しっかり監督しなさいよ」と、興奮してます。両社を統括する”総責任者”はあまり現場に出ないし、各社ごとのチーフは、自分のところの進捗状況しかわかっていない、他社のことは知らない、こんなんでは、管理人はとても困ります。管理会社の発注工事ではないのに、「飯加減さん、いいかげんね」と、結局私が怒られます。組合が独自に発注した工事で、管理会社には一銭の利益もないんですから、管理人が監督する義務は無いはずです。組合さんのほうで担当する役員とか決めて、応対して欲しいと思います。


<予定がコロコロ変わる 無許可で勝手なことをする>
 塗装工事というのは、雨に影響されます。ですから、雨の少ない時期を選び、かつ、屋外作業に適さない夏場を避けます。(シートの中で塗装工事したりしますから、夏場は猛暑でもうしょうがないです。)

 あらかじめ配布された工程表どおりにはいかないということは聞いていますし、納得できます。でも、晴れが続いているのに、予定がコロコロ変わるのは、住民に理解されません。
 この業者、「今日は予定よりも早く進んだから、明日の分をやってしまおう」ということをよくやります。個人に関係ない共用部分だけの話ならいいんですが、各部屋の玄関ドアの枠塗装とかを、予告の日ではなく前日にやられたりすると困るんです。居住者は当然のごとく、「え? なんで今日なの? 明日じゃないの?」と不審に思います。中には、「怪しい業者が来てる」と電話してくる人もいます。また、自転車置き場の屋根の塗装の場合、そこの自転車を移動させなければなりません。それも日程を駐輪場利用者に予告をしてあります。それなのに、予定外の日に、利用者に無断で勝手に自転車を移動させて、塗装作業なんか始めたら、みんな怒りますよ。
 そんな感じで、工程の中盤を過ぎてくると、最初に全戸配布した工程表と大きくずれてきてしまい、毎日のように、「なんで今日、あそこの塗装やってるの?」とかいう苦情が殺到です。「ねえ、うちのドアは昨日のはずなのに、来なかったわよ。いつやるのよ」なんて質問も来ます。苦情&質問はとりあえず管理人に来ます。(配布物には、「管理人ではなく、直接工事責任者へご連絡下さい」と書いてあるんですけどね) 私も、質問に答えなくてはならないので、業者に対して、「もうめちゃくちゃだから、毎朝、”今日はこことここをやります”という、1日分の予定をせめて教えてくれ」と要請したのですが、教えてくれたのは最初の3日間だけ。その後はなしのつぶてです。

 最悪なのは、「足場を組み立てる際、自転車置き場の屋根はそのままでも大丈夫です」と明言していたのに、いざ、本番になると、「やはり、屋根を外さないと足場を作れないので、外しました」とのこと。それも、組合に無断でやって、駐輪場利用者から、「管理人さん、工事業者が屋根外してるけど、どういうこと?」という苦情が来て判明した次第。こんな重要なことを発注者に無断でやるなんて信じられないです。当然、その後は、「なんで屋根をはがすんだ。そんなこと聞いてないぞ。自転車が濡れるじゃないか?」「俺の自転車はどこにいったんだ」(屋根の直下の自転車は業者が勝手に移動してしまったため)という苦情が殺到。仕方ないから、私が説明文を書いて、掲示して、弁解としました。


<鍵預かり&立会いが、超〜大変>
 大手の管理会社では絶対にやらないこと。「居住者の部屋の鍵を預かる」。これ、うちみたいな小さな管理会社だとやってしまいます。もちろん、最初は断ったそうですが、「頼むよ」と組合さんに頭を下げられてしかたなく受けてしまい、その後は、「管理人が鍵を預かる」ということは既成事実になっています。今のところ、何もトラブルがないからいいですけど、こんなリスキーなことは本当は私はしたくありません。(※管理会社変更を考えているマンションの場合、有名管理会社になると、しっかりしている分、はっきりと「そういうことはできません」と断られる業務がたくさんある、ことを覚悟したほうがいいですよ。ISOなんか取得している会社は、そういう「業務の標準化」は厳しいので、なあなあで仕事を頼んだりできませんから)

 鉄部塗装工事では、各部屋の玄関ドアの外枠を塗装します。このため、1回は、「お部屋に在室していて下さい」という日があります。ただし、土日限定というわけにはいかず、平日もこの作業があり、留守の人も当然いるわけです。となると、「管理人さん頼むよ」となります。
 ここで予想外の問題が発生しました。鍵の開け閉めだけならいいんですけど、作業中ずっと監視していなければならないのです。というのも、ドアの外枠の塗装をするときは、玄関ドアを当然開きます。塗装自体は2〜3分で済みますが、問題は乾燥。そう、塗装のあとは、約1時間、ドアを開けたままにするのです。塗装業者はすぐ別の部屋へ行きますが、立会いを頼まれた私は、乾燥が終わって、そのドアを閉めるまでずっと監視していなければなりません。そうしないと、なにしろドアが開けっ放しですから、「泥棒さんいらっしゃい」になってしまうのです。
 そんなわけで、何をするわけでもなく、ただ、ボーっとその部屋の前に立ちすくんでいなければならないのです。傍目に見ると、「この管理人、こんなところで何してるんだ。仕事さぼってんじゃないのか?」と思えるような光景です。つまり、1部屋の鍵を預かるごとに、私の大切な業務時間が1時間奪われるのです。昨年からのゴミ分別方法の改正により、仕事は増え、たまに管理人室に戻ると、事務仕事を必死にこなす状況です。これに加え、また1時間も管理人室を留守にして、その部屋の前で立っているのは、困るんです。1日に2件なんてあったら、通常の管理人業務が何もできません。おまけに、この作業、私の就業時間を越えてあるため、部屋によっては残業になります。管理会社としたら、自分の発注業務でもないのに、残業代を出さなければならないなんて、ふんだりけったりです。(組合は残業代を出しません。あくまでも通常管理委託費の中でやりくりしてます。会社としては損失です)
 最初の一部屋で懲りたため、今は、管理人室には「○○号室で塗装業務立会い中。用件のある方は携帯へ」(この携帯電話も自前です)と張り紙をして留守にします。そして、クビから、「塗装工事監視中」と大きく書いた紙をぶらさげて、「さぼってるのじゃないか?」と誤解を招かないようにしています。何にもしないのももったいないので、廊下でできる範囲の事務仕事の書類を持ってきて、仕事してます。(異様な光景です)

 
<約束したことをやらない>
 当マンションも築20年を越え、鉄部には、「腐食してボロボロになってしまった箇所」もあります。今回の契約では、そういったところの溶接補修工事も含まれています。しかし、実際に作業状況を見ていると、補修工事をしないで、そのまま、その上にペンキ塗っているんです。穴あいたまま。「ねえ、そこってさ、溶接補修するんじゃなかったの?」と聞くと、「そんな工事知りませんよ。溶接は、塗装屋の仕事じゃないから、別の専門業者呼ばなければなりません」と返答。なんかなあ、約束守らないんだよね、この業者。
 組合の理事も、帰宅した時にちょこちょこっと現場の状況を見る程度ですから、仕事を監視するのは私の仕事にさせられています。信頼して任せられる業者ならいいんですけど、こういうことがあると、しょっちゅう、巡回して監視しなければなりません。管理人の通常業務ができません。その他にも、各部屋のベランダの手すり部分とかは、その部屋の住民が良く見ているので、「ねえ、管理人さん、うちの部屋のベランダの鉄柵さ、錆落ししないで塗り始めているよ」といった苦情が来ます。どうやら、けっこう手抜きしているようです。ちゃんと錆落ししないと、あとから、その部分がふくらんでペロっと剥がれちゃうんですけど。しっかりやって欲しいなあ。

<住民が協力しない>
 ベランダの鉄柵や廊下の鉄柵の塗装の際に、障害になるものがあります。そう、植木鉢や物置などの私物です。これがどこの部屋でもかなりあるんです。いちおう、業者の方で、各部屋に「お願い」という紙を配布してあるんですが、このマンションの住民が、紙切れ1枚で従うわけがないです。
 あと、困るのは、柵に取り付けられた「パラボラアンテナ」や「物干しフレーム」です。物干しはかなりありました。これって、いったん外してもらわないと、塗装できないんです。ですから、塗装前日に、業者から、「管理人さん、○○の部屋のベランダの物干し、外すように住民に言ってくれないかなあ」と頼まれます。これは、業者の指示に従わないマンション住民のほうが悪いので、マンション側の責任です。といっても、組合役員がやってくれるわけでもなく、結局は私の仕事にさせられます。素直に、「じゃ、外します」と自分で外してくれる人もいれば、「取り付けたのは業者だから、私じゃ外せない」(ネジ回すだけなんですけど)、と拒絶する人もいます。「いいじゃねえか、そんなとこ」と怒る人もいます。「アンテナはよ。微妙な角度が大事なんだよ。あんたがうまく再取り付けしてくれるのかよ」とケツまくっちゃう人もいます。結局、3分の1も外せませんでした。でも、ちゃんと塗装しないと、そこから錆が広がって、最悪、腐食して壊れる可能性もあるんですけどね。
 そういえば、ベランダの塗装当日なのに洗濯物干している強者もいたなあ。これも大変だった。留守だったので勝手に取り込んじゃいました。

 共用部分に勝手に置いている規約違反放置自転車も100台くらいあります。これも、「工事の障害になりますから移動して下さい」と、全部に注意書きを貼ったのですが(これも私の仕事)、誰一人移動してくれません。まあ、移動する先がないからですけどね。もともと、置く場所がないから、規約に違反して共用部分に置いている自転車バイクですから、しょうがないです。

 そんなわけで、これも、「指示に従わない住民が悪い」ので、毎度の工事の当日の朝、私と業者とで、「今日はあそこが空いてるから、あそこに移動しよう」と、よっこらどっこい、と運びます。「指示に従っていただけない時は、業者が勝手に運びます」と但し書きはしてあるのですが、それでも、「俺のチャリンコはどこに行った!」「勝手に動かすな!」と苦情が私のところに来ます。悪いのはアンタだよ。

<クソガキにはかなわない>
@シンナー中毒・・・
 塗装工事なんで当然塗料を使用します。この塗料、種類によっては人体に有毒だったりするわけで、業者側も取り扱いには注意してます。あらかじめ、「塗料専用に、鍵のかかる倉庫を貸してくれませんか?」と頼まれていました。物置をひとつ、中身を全部出して、貸してあげました。この物置、「危険物注意」と張り紙をしてあるのですが、クソガキはそんなもの読めませんし、読んでも関係ないです。「短時間だからいいだろう」と職人がたまたま鍵をかけなかった、わずかな隙を狙ってか、このクソガキ連中がマンション内でかくれんぼを始めました。そして、その中の一人がなんと、この物置に隠れてしまったわけで・・・・・・・・。
 業者の兄ちゃんが早めに見つけたからいいものの、もう少し遅れたら危なかったです。発見時、親がいなかったため、私と組合役員の一人とで救急車に同乗し、病院に行きました。あちこち、私の携帯で電話かけ、なんとか母親を呼んでバトンタッチしました。この日はテンテコマイでした。まあ、後遺症もなく無事でした。よかったよかった。(全然よくないけどね。今月は電話代高いなあ)

A何するか予想もつかない・・・閉鎖中の外部階段の踊り場には塗装のハケやらなんやら、さまざまな道具が置かれてました。しかし、そんな場所にも、体の小さなクソガキは入っていきます。そして、何を血迷ったか、その道具を10階から下へ全部投げ落としたのです。ほとんどが途中の足場にひっかかって、下までは落ちませんでしたが、とにかく危険です。思いっきり、尻をひっぱたいてやりました。
 
B親子そろってクソガキ・・・裏庭の公園の遊具も塗装をしました。工事期間中は公園は「立ち入り禁止」にしてあります。かつ、「ペンキ塗りたて」と張り紙をしてあります。
 にもかかわらず、「管理人さ〜ん。汚れちゃった〜」と両手をペンキだらけにした親子(子供だけじゃないよ。母親もいっしょ)が管理人室に来ました。「あのさ、お母さん。立ち入り禁止って知ってるでしょ。回覧板も回したし、そこらじゅうに掲示物はあるし、現場にも書いてあるし、ロープは張ってあるし。それなのに、なんで入るのよ。自分の責任ですよ・・・・」と私も怒りました。あきれはてて。


<エレベーターのマット>
 塗装工事が始まる頃、「ここのところ雨が続いたし、汚れもたまってきたから、マットを交換して掃除しよう」と思ってたのですが、ある日、エレベーターの中を見たら、びっちりと養生してあるのです。そして、床にはベニア板が敷き詰められています。重い、硬い資材を運ぶこともあるんで、板を敷くそうなんですが、これも事前に教えてくれなかったので困りました。2週間くらい経過したら、「管理人さん、エレベーターの中が臭いんだけど。塗料の臭いじゃないのよね。なんかカビ臭いのよ」との苦情。「やばいなあ。濡れたマットの上にそのままベニア敷いたからかなあ」と、仕方ないので、業者に協力してもらい、いったんベニアを剥がしてみたら、案の定、カビだらけ。
 養生のことを予想していなかった私も悪いけど、業者サイドも何かやるときは、管理人に相談して欲しいです。


<掲示物作成が下手>
 私ほどではないにしろ、こういう塗装業者だって、マンションの仕事する時は、掲示物が大事だということはわかってると思うんだけど。
「字が小さい」・・・老人には読めません。目立ちません。
「表が見難い」・・・横罫線をひかずに表を作ったため、読み間違えちゃうんです。
「時間表記を間違える」・・・・”午前10時〜午後12時”と書いたものがあったのですが、これって正式には夜中の12時まで作業するということです。「そんな遅くまで、なんで作業するんだ?」と質問が来ました。正確には午前12時だし、正午のほうがわかりやすいです。時制表記は誤解されやすいので、気をつけないと。
「文字だけじゃ」・・・マンションの住民にはものぐさが多く、文字がたくさん書いてあるとそれだけで、「読むのめんどくさい」と、一切読まない人がいるのです。写真とかイラストとか、わかりやすい、目を引きやすい掲示物を作らないと、ちゃんと見てもらえません。それに、「MB」なんて略称使っても誰も理解できないですよ。メーターボックスって書かないと。




※「なんで、鉄部塗装が始まると管理人が忙しいの?」というご質問の回答は以上の通りです。しかし、こういう状況を話すと、「なんで、管理人がそんなことしなければならないの?」という質問が来ます。「でしゃばってるんじゃないの?」と批判する人もいます。甘いですね。質問主のマンションはしっかりしていて、業務の線引きもきっちりあるのかもしれませんが、ここは「なんでもかんでも管理人にやらせる」というマンションです。住民もそれが当たり前だと思っています。本当のでしゃばりなら、「マンションの管理組合というのは・・・・」「管理委託契約の条項には・・・・・」と説諭する掲示を作っちゃいますよ。でも、そんなことできないでしょ。せいぜい、フロントマンが理事会の時に説明するくらいですけど、うちのフロントマンはそういうことをしないで、なんでも受けちゃうし。組合も会社もどっちもダメです。

 一例ですけど、このマンションではペット飼育をOKにしたときに、飼育細則というのが作られて、「これを遵守することを条件に飼育を許可する」となりました。この細則の中には、「建物内及び周囲の美化に努める。このために、飼育者の会は会費を集める」とまで書かれています。しかし、実際は、「犬のフンが廊下にあった。なんとかしろ」という苦情が来て、飼育者の会に伝えると、「管理人さんやっておいてよ」と言われます。これじゃ話にならないので、組合さんに伝えると、「ペットのことはさ、全部、飼育者の会に任せてあるから、理事会は関係ないんだよ」と門前払いをくらい、「そんなこといわずに管理組合から会のほうに、しっかり細則を守るように言ってください」とお願いして、会に意見を言ってもらうと、渋々、飼育者の会も会合を開いて、対策を協議します。しかし、集まるのは3〜4人(会員数は40人以上いるはず)で、結論は、「会員の犬とは限らない。だから責任はない。管理人さんに処分してもらおう」ということに毎回なります。細則の「美化に努める」という文言は、「会員の犬猫が糞をしたときだけ」ではないと思います。「日頃から、奉仕活動的にマンション内外をきれいにする活動をして、他の住民のためになることをするから、飼育を許して下さい」という意味だと私は思うんですが。実際は、汚しっぱなし。防犯カメラがないから証拠もありません。会費も集めてませんから、当初の約束(これは口約束)の、「会費で清掃道具を購入する」ということも実行されていません。管理規約や飼育細則に忠実な管理会社なら、「ペットの糞は私どもの責任ではありません。そちらでやってください」とつっぱねてもいいんでしょうが、実際はそんなことできないでしょ。飼い主がやらない以上、私たちが掃除しなければなりません。

 今回の鉄部塗装に関しても、理事長は昼間いないのですぐに対応できないし、修繕担当理事(この人は年金生活者で昼間もいる)に話しても、「悪いけど、管理人さんの方でなんとかしてよ」といつも逃げられます。全部おはちがまわってきます。「そんなことしなくてもいいじゃないの?」と思う読者もいるでしょうが、こっちが対応しないと、いずれ苦情が管理人に殺到するんです。それに、おかしな工事をすれば、あとで絶対に不具合が出てきます。「工事のことは業者に直接聞いてください」という掲示も作りました。業者にも「そっちでちゃんと対応しろよ」と言ってあります。でも、実際にところ、職人よりも私の方が言いやすいのか、こっちに来ます。業者も、実質2社で、お互いのことを何もしらない現状ではまともな対応が出来ません。
 「じゃあ、管理人がいないと調整はどうなるの?」と思う人もいるかもしれませんが、私がいなければ、業者はなんでも勝手に進めていくだけです。予定を変更するのも勝手、「この部屋留守だったから塗装できませんでした」と未実施の箇所もたくさんでるでしょう。「アンテナ外してくれなかったから、そのまま上から塗っちゃいました」というでしょう。溶接工事は、「指摘されなければそれだけもうかる」と、やらないでしょう。
 本当は、工事監理の人間を別に雇うか、多少知識のある役員が担当者として日中ずっと監視しているようにしないとだめなんですよ、こういう大きな工事の場合は。そういった労力や経費をけちって、「管理人に任せている」のが現状です。管理会社としても、自社発注の工事ではないですから、何も動く義理はありません。知らん振りです。
 前回の塗装工事でも、錆落しの手抜きで、塗装後1年もたたずに、錆が浮いてきた箇所もあるそうです。そういうのを繰り返してほしくはありません。手すりがボロボロで、体重を思い切りかけると壊れるだろうなあ、という箇所もあり、危険です。こういうところの補修もちゃんとやってもらわないと、命に関わります。

 それでも、私が巡回の際に細かくデジカメで撮影しているのを見て、少しは熱心に仕事をしているようです。しかし、巡回ばかりやってられないですしね。ゴミの処理が楽なら、工事の監視もできるけど、ゴミ処理だけで毎日数時間かけている状況ではね。



追記2

 昨日起きたことなんですが。
 当マンションの中には一部、風通しがとても悪い部屋があります。この部屋の住民がやってきて、「塗料の臭いで気持ち悪くなってしまって。今日はこのまま部屋にいられないので、近所のホテルに泊まりたいんだけど、お金払ってくれますか?」と質問されました。現場にいって確認しましたが、たしかにモワ〜としていて気持ち悪いです。化学物質に敏感な人なら、気持ち悪くなるのは無理ないでしょう。
 「また、面倒な話になったな」と困ったのですが、体に関することですし、急いで対応しなければなりません。業者の責任者と修繕担当役員に話をして、仕事中の理事長にも電話して、「しょうがないから、組合で払おう。ホテルに泊まってもらってくれ」ということに落着しました。
 現代は、アレルギー体質の人がたくさんいます。こういうことも予想すべきだったことだと思います。でも、契約にはそういうことは取り決めされていません。今は、事前に考えておくべきかもしれません。

 私も、今回の一連の騒ぎを反省して、こういった大きな工事が行なわれる時は、あらかじめ契約書の内容を説明してもらうことにします。なんでもかんでも管理人に任せられても困りますから。

 それにしても、管理人職は「誰にでもできるというもんじゃないなあ」、とつくづく思います。どんな仕事もそうですが、経験が大事です。大事なんですけど、「経験豊富でも待遇には反映されない」職業なんですよねえ。残念。


2005/6

管理人は「超〜つらい」のを理解してもらえたでしょうか?

今月は特別ボーナス欲しいなあ。30万円くらい。


もうすぐ塗装工事は後半戦だけど、「その3」を書かないで済めばいいんだけどね。、