管理人はつらいよ   
マンション管理最前線

管理費と管理委託費

このサイトを訪れる常連さんにとっては、釈迦に説法ですが、お付き合い下さい。


 あるマンション管理士さんの掲示板に、その人が顧問をしたマンションの組合員から苦情の書き込みがありました。これを見ると、すぐに「誤解」「勘違い」だということはすぐにわかるんですが、「一般の組合員というのは、こういうふうに思っているのか? この程度の知識なのか?」とちょっと驚きました。

 内容の要旨は「管理士によって管理会社を変えてもらい、管理委託費が下がったはずなのに、銀行通帳をも見ても、管理費が下がっていない。おかしいのではないか?」というものです。

 推測するに、この苦情の主の勘違いのポイントは「管理費と管理委託費を同一視している」ということです。「管理費は管理会社に払うもの」と思っているのかもしれません。ですから、管理会社を変更したことによって、管理委託費が安くなり、それが「即管理費が安くなる」と思い込んでしまったのでしょう。
(この住民は、おそらく、「管理費」と「修繕積立金」の区別もわからないと思う)

 マンション管理士さんというのは、独立自営でやっていくにはなかなかしんどい商売のようです。そんなわけで、管理士さんががんばるには、「管理会社変更=委託費の大幅減額」といった、”目に見やすい””効果が如実に現れる”お金に関することで、「マンション管理士の有効性」を訴えることが多くなります。コンサルティング会社も同様です。「大幅」と書いたのは、小額の削減では、「マンション管理士の顧問費用」がかかることを考えると無意味になるからです。普通、管理士さんの顧問費用は月額5万円程度ですから、年間で60万円かかる計算になります。となると、”管理会社を変更したら200万円以上安くなる”ような減額でないと効果が実感できなくなります。組合さんが、なにごとにも無関心な組合員まで巻き込んで、管理会社変更へ踏み切るには、大きなニンジンをぶらさげないとうまくいかないようです。

 事柄を整理しますが、管理費というのは、管理組合へ払うものです。管理会社が便宜的に出納をやっている場合、「管理会社に払っているような気がする」のですが、あくまでも出納事務をやっているだけで、「管理組合名義の口座」に払っているのは間違いありません。そうやって集められた管理費の中から、定額を管理会社に支払っているのです。
 ここで問題となるのは、管理委託費の高額な管理会社の場合。分譲時に強制的にあてがわれた管理会社の場合、かなり高額な管理委託費を取っている場合が多く、管理費を全額管理会社が持って行っているケースがあります。また、管理費だけでは足らずに、その他の「各種使用料」(駐車場や駐輪費、ルーフバルコニー使用料、専用庭使用料など)も、管理委託費に全額持って行かれているマンションも多いようです。これでは、「管理費=管理委託費」、つまり、組合に払っているというよりも管理会社に払っているという誤解を与えるのも無理はありません。このような状況にあるマンションが多いのです。
 これは、マンションを建設し、管理費や使用料、修繕積立金を設定する際に、「修繕積立金には手をつけないが、他のお金は全部うちがもらう」という考えで料金設定しているからです。分譲会社系の管理会社の場合、分譲会社と一身同体ですから、自分勝手に設定できます。

 こうやって、ボッタクラレテイル管理費(&使用料)は、管理会社を変更することによって、委託費を安くすることが出来ます。委託費を安くすると、管理会社に払うお金が安くなって、浮くお金が出ます。この浮いたお金をどうするかが組合の課題です。ダイレクトに管理費を安くするところもありますが、これは少数です。管理会社がぼったくっているマンションの場合、修繕積立金が少ないケースがよくあり、「来たる大規模修繕の時には一時金が必要」とか「一時金を出さないでもよいようにするには、修繕積立金の値上げが必要」という状態です。

 この場合、浮いたお金は修繕積立金へ移動させて、少しでも貯金を増やすことが大事です。おそらく、苦情の主のマンションでも、会社変更によって浮いたお金は積立金へまわすことにしたのだと思います。ですから、管理費自体の金額は変えていないのでしょう。このため、「管理委託費が安くなるぞ」と聞いていたこの組合員からすると、「委託費が安くなったのに管理費が変わっていない」と憤慨し、会社変更の中心人物として活躍したであろう管理士さんに対して「騙したな」と怒っているのでしょう。

 こうやって考えると、「一般の組合員というのは、マンションの管理というのは住民ではなく管理会社が全部やるのだと誤解している」「税金などと同じで、天引きだと、お金の使い道に関することに無関心」「理事会内部だけ理解して、一般組合員に対する広報が不十分」なんだなあ、とつくづく思います。

 管理会社変更のような重要な案件は、それ専用の特別委員会を発足させ、会合のたびにその議事録・ニュースを全戸配布するような丁寧な広報活動が必要だと思います。そうすれば、苦情組合員さんも生まれなかったでしょう。

 こういう「何にも知らない人」って、けっこうどこにでもいますね。当マンションでも、わずかな管理委託費なのに、すごい高額なお金を払っているつもりで、「おまえら管理人の給料は俺たちが払ってるんだ。黙って言うことを聞いてればいいんだ」「住民に文句を言うなんて生意気だ」とほざきます。困ったもんです。100円ショップで、品質に文句言ってるようなもんですよ。

 この苦情組合員さんも、管理士さんのHPに書き込む前に、当HPで勉強して欲しいなあ。


2005/5