管理人は超つらいよ
マンション管理最前線
現況:居住中 |
”マンションを買う”場合、「新規分譲」で買う場合もあれば、「中古」で買う場合もあります。当マンションで取引がある場合は当然「中古」ということになります。
中古物件のチラシを見る際、大事なポイントが「現況」というもの。「現況=空室」「現況=居住中」の2種類あります。つまり、今、その部屋はカラッポなのか、まだ人が住んでいるのか? ということです。
買う側(および仲介する不動産屋)からすると、空室の方が、「いつでも気兼ねなしに見に行ける」「好きな時にオープンルームを開催できる」「部屋の全体がわかる。壁も全部見える」という点で、いいです。
ただし、売る側の立場で考えると、「空室にしてから売った方がいいかもしれないが、”もしかして売れなかった”時のことも考えると、部屋を引き払って引っ越すのはリスクがある。早すぎる。そんな経済的余裕もない。住んだままで売るしかない」という事情を抱える人も少なくないです。「新規分譲のマンションに移るために、今の部屋を売る」というケースでは、新しくできるマンションの入居可能日にあわせるために、居住中のままで売ることもあります。数ヶ月のために仮住まいを探すのは大変ですし、コストもかかります。(日本の借室は、アメリカと比較すると、敷金や礼金などの関係で短期の場合はコストが高すぎます。マンスリーマンションというのも増えてきましたが、数はまだまだ少ないです。) 「子供の学校の都合で3月まではここにいたい」というケースもあります。
「現況=空室」の場合、「見た目をよくするため」「なるべく高く売るため」に、あらかじめ”リフォーム”をしておくこともよくあります。こうすると、部屋の中だけは「新築みたい」にきれいになります。そして、「空室期間はなるべく短くしたい。管理費の負担も大変だ。ある程度値下げしてでも売りたい。(売るしかない)」と思っています。
「現況=居住中」の場合、見学は大変です。「家具を置いたらこうなる」という例を見れるのはいいかもしれませんが、実際に人が住んでいて、いろいろな家具を置いている状態では、真の姿はわかりません。パッと見にはきれいでも、家具をどかすと、真っ黒だったり、裏に傷があったりします。
ただ、住んでみないとわからない話が聞けます。なにせ、居住者本人がそこにいますから。「図面だと日があたらないように思えるけど、実際はけっこうあたるんだよ。」「駅に行く時は、裏道を通った方が早いよ」・・・といった、生の情報が聞けます。こういうのは、表面的なことしか知らない不動産業者の口からは聞けません。ただし、もちろん、「上の階の音が響くんだよ」といったマイナス面を話す人もいません。そういう”本当の真実の情報”は管理人に聞かないとダメです。
居住中の場合は、実際に住んでますので、時間的余裕が若干あり、すぐに売れなくても、「売れるまで気長に待つ」という面があり、買い手がつかなくても早急に値下げすることは少ないです。「管理費がもったいない」ということもありません。「高く売れたら、買い換える」と思って売る人もいて、「高く売れなかったから、買い替えはあきらめる。このまま住み続ける」という結果になることもあります。
「だらしない奴はとことんだらしない」
管理人をやっていて、つくづく思います。一事が万事なんです。
先日、予告なしに引越ししていった家族がありました。その前に、不動産屋から、「○月○日に売買契約になります」と聞いていたので、寝耳に水というわけではないのですが、いずれにしろ、ご本人からは最後まで何の連絡もありませんでした。引越し業者もいい加減で、管理人室に顔を出すこともなく、無断で敷地内に侵入し、作業を始めました。「ちょっと、そこに車を止められないよ。なんで無断で入ってくるの?」と注意しました。すると、その家の主人が出てきて、「引越しなんだからしょうがねえだろう」とおっしゃいました。「事情はわかりますが、引越しするなら事前に連絡してもらわないと困ります。このマンションは”全域駐車禁止”なんですから」「じゃあ、いままで、他の人はどうやって引越ししてたんだ」「ちゃんと事前にご本人から連絡を受け、その後、引越し業者が来て、ゴミの収集に影響ないようにとか、念入りに打ち合わせして、トラックを入れる場所や時間を決めていますよ」(本当はウソなんだけど、そう言っておきました) 「もう来ちゃったんだからしょうがねえだろ。なんとかしろよ」「でも、もうすぐ、ゴミの収集時間ですから、回収車がここを通ります。ここにトラックを置いて、通行止めにされるのはまずいです。移動して下さい」「そんなこといっても、もう積み込んでるし・・・・(ウジャウジャ) だったら、いつ引越しすればいいんだよ」「今は毎日なんらかのゴミ収集がありますから、日曜日しかないですよ。とにかく、始めちゃったものは仕方ないですから、早めに終わらせて下さい。そして、収集車が来たら、いったん、敷地外に出てください」「めんどくせえな。いいだろ別に。ごちゃごちゃ言うなよ、管理人のくせに・・・・・(管理人非難の常套句が続く)」
この人、以前から<困ったちゃん>でした。「ゴミの出し方を守らない」「排水管洗浄に協力しない(作業当日在室しているのに、「明日にしてくれ」なんて断るんです)」「規約に違反して、猫を2匹飼っている。おまけに時々外に放す」「自転車の駐輪費をなかなか払わない」・・・・・
今回の売買でも、管理費の支払い負担の期日区分をきちんとしてません。組合としては月単位の振り替えなんですが、「日割り計算してくれ」とかいいます。「そんなことできません。それに、今頃言ってきても、銀行の手続きに日数がかかるから、来月分はそちらの口座からの振り替えになりますよ。変更は間に合いませんから。・・・・」、ほんと面倒な家族です。
さて、その2日後、その部屋を買った人が姿を現しました。部屋を購入するくらいなら、以前に何度もこのマンションに来ているはずで、事前の挨拶の1回くらいあるはずなんですが、初対面でした。買うほうもだらしないです。そして、案の定、管理費のことでもめました。まあ、それくらいはいいんですが、この買主が初めて、荷物のない空室に入り込んだら。
「管理人さ〜ん。インターホンが壊れてるよ。」「管理人さ〜ん、台所の排水が悪いよ」「管理人さ〜ん、湯沸かし器の温度があまり上がんないんだけど」「管理人さ〜ん。壁に穴があいてるんだけど」「管理人さ〜ん、電気のブレーカーの横に、忘れ物があったんだけど」「管理人さ〜ん、ベランダのサッシが硬くて開かないんだけど」・・・・・出るわ出るわ、いろいろあります。そのたびに、「管理会社は関係ないです。仲介不動産業者を通して、前所有者に対処してもらって下さい」と対応を断りました。
とはいつつ、「いったいどんな部屋なんだ」と思い、現場に行くと、汚い汚い、臭い臭い、ほんとひどい部屋でした。壁は真っ黒、ところどころ剥がれている、カビもひどい。床は傷だらけ(猫のせいでしょう)、ふすまも悲惨な状況。部屋中、動物臭が充満してます。照明も外して持っていったようで、天井に穴があいてました。
思わず、「こんなひどい部屋、よく買いましたね」と余計なことを口にしてしまいました。「汚い分、安かったんだけど、これほどひどいとは思わなかったなあ」と言ってました。「やっぱ、リフォームしないとだめかなあ」「当たり前ですよ、最低でも壁紙替えないと、住めないでしょう。それに、この臭いはしみついてますから、消えるまでずいぶんかかりますよ」
それから、よく見ると気がついたんですが、この部屋、フックとかがあちこちにねじこんで付けられています。外すのも大変そうです。
3日後、困ったことが起きました。「表札が外れないよ」「郵便ポストには鍵が付けっぱなしだよ」とのこと。玄関の表札、接着剤でベッタリつけられているようで、剥がせないのです。それに、ポストにつけてあった鍵、これもそのままで出て行ってしまいました。
郵便局に転居届も出してないようで、表札もあるもんだから、郵便局員は前の人の郵便を入れちゃうし、参ったなあ。前の所有者に連絡を取ろうとしたのですが、「転居先の電話番号はあとで教えるから」と言われたきり、なしのつぶてなもんで、電話はわからず。しょうがないので、手紙で連絡をとると、4日後に電話が来て、「わざわざそっちに行くの大変なんで。勝手に剥がしていいですよ。鍵はこわしていいです」とのこと。「ちょっと待ってください。自分の表札を抜いていくのは常識でしょう。鍵だって外さなきゃ。こっちは鍵持ってないから開けられないし、とにかく来て下さいよ」「忙しくていけないんだよ。そっちでなんとかしてくれ。ガチャ」「(切れた電話に向かって)、隣の市に引っ越したくらいで”行けない”はないだろう。全部自分の責任じゃないか、バカ野郎!」 こんな調子です。
こういうだらしない人の部屋を「現況=居住中」で買ってはだめです。